赤ちゃんのすべすべとした肌に赤いブツブツやカサカサとした肌荒れが見つかると、「もしかしてアトピー性皮膚炎ではないか?」と不安な気持ちになってしまうものです。
毎日ケアをしているつもりでも、なかなか良くならない湿疹を見ると、自分のケアが間違っているのではないかと自分を責めてしまう親御さんも少なくありません。
しかし、赤ちゃんの肌トラブルの多くは一時的な乳児湿疹であり、肌の特性を理解して適切なケアを行うことで改善するケースも多いのです。
この記事では、乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の具体的な見分け方や、病院を受診すべきタイミング、そしてお家で実践できる正しいスキンケア方法について詳しく解説します。
大切な我が子の肌を健やかに保つために、正しい知識を身につけて、焦らず一つずつ対処していきましょう。
赤ちゃんの肌荒れの原因とアトピー性皮膚炎の可能性を正しく知る
赤ちゃんの肌は非常にデリケートで、大人とは異なる特徴を持っています。まずは、なぜ赤ちゃんの肌が荒れやすいのかという根本的な原因と、アトピー性皮膚炎という病気の本質について正しく理解しましょう。
なぜ赤ちゃんの肌は荒れやすいのか肌の構造から考える
生まれたばかりの赤ちゃんの肌は、一見すると瑞々しく水分をたっぷりと含んでいるように見えますが、実はとても未熟な状態です。
皮膚の厚さは大人の約半分しかなく、外部の刺激から肌を守る一番外側の「角質層」も非常に薄いため、少しの摩擦でも傷つきやすい特徴があります。
また、肌の内部に水分を保持する機能も十分に発達していません。そのため、外気やエアコンの風などの影響をダイレクトに受け、大人が感じる以上に肌はすぐに乾燥してしまいます。
生後2ヶ月頃までは母親からのホルモンの影響で一時的に皮脂が多く分泌されますが、それを過ぎると皮脂量は急激に減少し、カサカサとした乾燥肌になりやすいのです。
さらに、赤ちゃんの肌はバリア機能が未完成なため、よだれや食べこぼし、衣類のこすれ、そして自分の汗といった日常の些細な刺激物質が、簡単に皮膚の奥へと侵入してしまいます。
これらの刺激が炎症の引き金となり、赤みやブツブツとした湿疹を引き起こす原因となるのです。つまり、赤ちゃんが肌荒れを起こすのは、ある意味で自然なこととも言えます。
赤ちゃんの肌の特徴まとめ
- 皮膚の厚さが大人の約半分しかなく、外部刺激の影響をダイレクトに受けやすい。
- 角質層が薄く未熟であるため、水分を保持する機能が低く乾燥しやすい。
- 生後3ヶ月頃から皮脂の分泌量が急激に減少するため、バリア機能が低下する。
- よだれや汗、衣類の摩擦など、日常の些細な刺激が炎症の原因になりやすい。
アトピー性皮膚炎とはどのような病気なのか特徴を押さえる
アトピー性皮膚炎とは、単なる一時的な肌荒れとは異なり、「良くなったり悪くなったりを繰り返す、強い痒みを伴う湿疹」を主症状とする皮膚の病気です。
この「繰り返す」という点が非常に重要な特徴であり、一度薬を塗ってきれいに治ったとしても、しばらくするとまた同じ場所に、あるいは違う場所に湿疹が出てくるという経過をたどります。
多くの赤ちゃんに見られる症状は、まず顔や頭から始まり、徐々に首、胸、手足へと体の下の方へ広がっていく傾向があります。
特に、耳の付け根が切れてしまう「耳切れ」や、頬が赤くただれてジュクジュクする症状、関節の内側が荒れる症状は、アトピー性皮膚炎を疑う一つの重要なサインとなります。
遺伝だけではないアトピー発症の要因を確認する
「両親がアレルギー体質だと、子供も必ずアトピーになる」と不安に思っている方は多いですが、アトピー性皮膚炎の発症原因は遺伝だけではありません。
確かにアレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)は遺伝する可能性がありますが、それだけで必ず発症するわけではないことが分かってきています。
現在では、発症には「肌のバリア機能の低下」と「アレルギー炎症」に加え、環境要因やストレスなど、様々な要素が複雑に絡み合っていると考えられています。
つまり、たとえ遺伝的な要素があったとしても、日々のスキンケアで肌のバリア機能を正常に保ち、刺激の少ない環境を整えてあげることで、発症のリスクを下げることは十分に可能です。
「遺伝だから仕方がない」と諦めるのではなく、今できるケアに目を向け、赤ちゃんの肌を守るための具体的なアクションを起こしていくことが大切です。
乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の違いを見分けるポイントはあるのか
乳児湿疹とアトピー性皮膚炎は見た目がよく似ており、素人判断は難しいものです。しかし、症状が出る場所や痒みの程度、経過をよく観察することで、ある程度の見当をつけることができます。
発症する時期や症状が出る場所に違いはあるのか
症状が現れる「時期」と「場所」は、両者を見分ける上での大きな手掛かりになります。一般的な乳児湿疹(乳児脂漏性湿疹など)は、生後2週間から2ヶ月頃に多く見られます。
これらは皮脂腺の多い頭皮や眉毛、おでこなどに、黄色いかさぶたやフケのようなものがベッタリと付着するのが特徴で、成長とともに自然に治まっていくことが多いです。
一方、アトピー性皮膚炎は生後2〜3ヶ月頃から症状が目立ち始めることが多く、顔や頭だけでなく、首、脇の下、肘の内側、膝の裏側といった「関節の屈側(曲がる部分)」に症状が出やすい傾向があります。
また、症状が体の左右対称に現れることが多いのも特徴の一つです。特定の場所に、しつこく湿疹が残り続ける場合は注意深く観察する必要があります。
痒みの強さや赤ちゃんのご機嫌で判断できること
「痒み」の有無と強さは、見分けるための最も重要なポイントの一つです。一般的な乳児湿疹の場合、痒みはそれほど強くないことが多く、湿疹があっても赤ちゃんは比較的機嫌よく過ごしています。
対照的に、アトピー性皮膚炎の湿疹は「強い痒み」を伴います。赤ちゃんは言葉で「痒い」と伝えられませんが、行動でサインを出しています。
例えば、抱っこしている親の服に顔をこすりつける、手で顔や耳を頻繁にひっかく、布団や枕に顔を押し付けて左右に振る、といった動作が見られたら要注意です。
また、痒みのために不機嫌になりやすかったり、夜中に何度も目を覚まして泣いたりする様子が見られる場合も、アトピー性皮膚炎の可能性を考慮して受診を検討しましょう。
症状が繰り返す期間の長さをチェックする
アトピー性皮膚炎の定義には「慢性的に経過する」という要素が含まれています。乳児の場合、一般的には「2ヶ月以上」症状が続くか、あるいは良くなったり悪くなったりを繰り返す場合に診断されます。
乳児湿疹であれば、患部を清潔にして保湿ケアを丁寧に行うことで、数週間程度で改善に向かうことが多いものです。
しかし、適切なケアをしているにもかかわらず湿疹がなかなか治らない、あるいは一度治ったと思ってもすぐに再発してしまう場合は、アトピー性皮膚炎の疑いが強まります。
いつから症状が出始めたのか、どのようなケアをしてどう変化したのかを記録しておくと、医師が診断を下す際にも非常に役立つ情報となります。
乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の比較
| 比較項目 | 乳児湿疹(脂漏性湿疹など) | アトピー性皮膚炎 |
|---|---|---|
| 発症しやすい時期 | 生後2週間〜3ヶ月頃にピーク | 生後2〜3ヶ月頃から始まり長引く |
| 主な発症部位 | 頭皮、おでこ、眉毛、頬(皮脂が多い場所) | 顔、首、耳の付け根、肘・膝の裏側、手首・足首 |
| 痒みの程度 | 比較的軽いことが多い | 非常に強く、機嫌が悪くなることも |
湿疹の見た目や触った感触に違いはあるのか
湿疹の「質感」にも違いが見られることがあります。乳児脂漏性湿疹では、黄色っぽい脂ぎったかさぶたや、カサカサしたフケのようなものが特徴的です。
一方、アトピー性皮膚炎の湿疹は多様ですが、赤く腫れて熱を持っている、小さな水ぶくれができる、掻き壊してジュクジュクとした汁が出る、といった症状が混在することがあります。
また、アトピー性皮膚炎の肌は、湿疹が出ていない部分も含めて全体的に乾燥しており、触るとザラザラとした「鳥肌」のような感触(ドライスキン)があることが多いです。
病院へ行くべき診断時期の目安と受診のタイミング
自己判断でのケアを長く続けると症状を悪化させる恐れがあります。「2ヶ月以上治らない」「痒みが強くて眠れない」といったサインが見られたら、早めに専門医を受診することが必要です。
生後何ヶ月頃からアトピーの診断が可能になるのか
多くの親御さんが「いつ診断がつくのか」を気にされますが、生後間もない時期にアトピー性皮膚炎と確定診断することは非常に難しいのが現実です。
なぜなら、乳児湿疹と症状が酷似しており、一時的な肌荒れなのか慢性的な疾患なのかを見極めるには、ある程度の経過観察期間が必要だからです。
一般的に、医師がアトピー性皮膚炎と診断を下す目安の一つとするのが「生後3〜4ヶ月以降」です。この時期を過ぎても湿疹が治まらない場合に、可能性が高いと判断されます。
ただし、症状が重い場合や家族歴(両親や兄弟にアトピーや喘息がある)が明らかな場合は、もっと早い段階で診断や、それに準じた治療が開始されることもあります。
ホームケアで様子を見てよい期間と受診すべき症状
軽い乾燥や、ほんの少し赤みがある程度で、赤ちゃんが痒がっておらず機嫌が良い場合は、まずは数日から1週間程度、丁寧な洗浄と保湿によるホームケアで様子を見ても良いでしょう。
市販の低刺激なベビー用保湿剤を使い、朝晩しっかりとケアすることで、バリア機能が整い改善することも多いからです。
しかし、ホームケアで改善が見られない場合や、湿疹から黄色い汁が出ている、血がにじんでいるといった症状がある場合は、すぐに受診してください。
特に、皮膚のバリアが壊れてジュクジュクしている状態は、細菌感染を起こすリスクもあるため早急な治療が必要です。「まだ小さいから」と遠慮せず、プロの力を借りましょう。
受診を検討すべき具体的なサイン
- ホームケアを1週間続けても改善しない、または悪化している。
- 湿疹から黄色い汁が出ている、または血がにじんでいる。
- 痒みのために夜何度も起きる、不機嫌でミルクの飲みが悪い。
- 湿疹が顔だけでなく、体や手足など全身に広がっている。
小児科と皮膚科のどちらを受診すればよいのか迷うとき
赤ちゃんの肌トラブルで受診する場合、小児科と皮膚科のどちらに行くべきか悩む声はよく聞かれますが、基本的にはどちらでも診察は可能です。
小児科は、赤ちゃんの全身状態を総合的に診るプロフェッショナルです。肌荒れだけでなく、発育や発達、食物アレルギーの可能性なども含めて相談したい場合は小児科が適しています。
一方、皮膚科は皮膚疾患の専門家であり、湿疹の状態をより詳細に診断し、きめ細かな外用薬の調整などを行ってくれるのが強みです。
もし近くに「小児皮膚科」を標榜しているクリニックがあれば理想的ですが、まずは通いやすい方を受診し、必要に応じて紹介してもらうという方法でも問題ありません。
アトピー性皮膚炎と診断された場合の治療方針を把握する
もしアトピー性皮膚炎と診断されても、現代の医療では適切な治療を行えば症状をコントロールし、快適な生活を送ることが可能です。治療の3本柱である「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子の対策」について、その役割を正しく理解しましょう。
炎症を抑える外用薬の役割と正しい塗り方
アトピー性皮膚炎の治療において中心となるのが、炎症を鎮めるための「ステロイド外用薬」です。「ステロイドは怖い」というイメージを持つ方もいますが、正しく使えば非常に有効な薬です。
炎症を放置すると痒みが増し、掻くことでさらにバリア機能が壊れるという悪循環に陥るため、まずは薬で炎症の火を消すことが最優先となります。
薬の効果を最大限に発揮させるためには、「塗り方」が極めて重要です。薄く伸ばしすぎてしまうと十分な効果が得られず、治療が長引く原因になります。
塗る量の目安として「FTU(フィンガーチップユニット)」という単位が推奨されています。大人の人差し指の先から第一関節までの長さにチューブから出した量が、大人の手のひら2枚分の面積に塗る適量です。
ティッシュが皮膚にくっつく程度、あるいは皮膚がテカる程度にたっぷりと乗せるように塗るのがコツです。擦り込まず、優しく乗せるイメージを持ちましょう。
ステロイド外用薬の強さのランク
| ランク | 強さの程度 | 主な使用部位と対象 |
|---|---|---|
| Strongest | 最も強い | 原則として赤ちゃんには使用しません。 |
| VeryStrong | かなり強い | 厚くなった皮膚などに限定的に使用。 |
| Strong | 強い | 赤ちゃんの体や手足によく処方されます。 |
| Medium | 中程度 | 顔や首、デリケートな部分に使用されます。 |
肌のバリア機能を高める保湿ケアを徹底する
薬で炎症が治まったとしても、肌のバリア機能が弱いままだと、少しの刺激でまたすぐに再発してしまいます。そこで重要になるのが日々の「保湿ケア」です。
保湿剤は、不足している水分と油分を補い、外部刺激から肌を守る盾の役割を果たします。治療中も、そして肌がきれいになってからも、保湿は常にベースとして行います。
近年では、見た目がきれいになっても定期的に薬を塗って炎症の再燃を防ぐ「プロアクティブ療法」という考え方が主流になっています。
保湿剤を毎日欠かさず塗り続けることは、単なるケアではなく治療の一部であり、将来的な肌の強さを作るための重要な土台となります。
痒みをコントロールして掻き壊しを防ぐ工夫
痒みは赤ちゃんにとって大きなストレスであり、掻き壊すことで症状が悪化してしまいます。薬による治療と並行して、物理的に掻き壊しを防ぐ工夫も必要です。
赤ちゃんの爪は薄くて鋭いため、常に短く切り、角をやすりで滑らかにしておきましょう。寝ている間に無意識に掻いてしまうことも多いため、こまめなチェックが欠かせません。
また、体温が上がると痒みが増すため、室温を涼しく保つことも有効です。痒がっているときは、冷たいタオルや保冷剤(布で包んだもの)で患部を冷やしてあげると、神経の興奮が静まります。
お家でできる毎日のスキンケアで肌トラブルを予防する
病院での治療と同じくらい、あるいはそれ以上に大切なのが自宅での毎日のスキンケアです。「清潔にする」「保湿する」という基本を正しい方法で継続することが、赤ちゃんの肌を守る最強の手段となります。
肌への負担を減らす入浴方法と身体の洗い方
毎日の入浴は、肌についた汗や汚れ、アレルゲンを洗い流す大切な時間ですが、洗い方を間違えると逆に乾燥を招いてしまいます。
まず、お湯の温度は38〜39度くらいの「ぬるめ」に設定しましょう。熱いお湯は皮脂を奪いすぎ、痒みを誘発する原因になります。
体を洗うときは、石鹸を泡立てネットなどでしっかりと泡立て、弾力のあるモコモコの泡を作ります。ガーゼやスポンジでゴシゴシこするのは厳禁です。
「泡で包み込み、手で優しく撫でる」ように洗うのがポイントです。特に首のシワや脇の下、股のくびれなどは汚れが溜まりやすいので、指の腹を使って丁寧に洗いましょう。
石鹸成分が肌に残ると刺激になるため、すすぎはシャワーを使って念入りに行います。シャワーの水圧も弱めにして、肌への負担を減らす工夫をしましょう。
保湿剤を塗るタイミングと効果的な塗り方を確認する
保湿剤を塗るベストなタイミングは「入浴後すぐ」です。お風呂上がりは肌が水分を含んで柔らかくなっていますが、同時に急速に乾燥が進む時間帯でもあります。
タオルで優しく水気を拭き取ったら、5分以内、できれば直ちに保湿剤を塗りましょう。裸のまま手早く塗れるよう、脱衣所に保湿剤を準備しておくのがおすすめです。
塗り方のコツは、体に点々と保湿剤を置いてから、手のひら全体を使って大きく円を描くように優しく塗り広げることです。
この時、皮膚が動かないくらいの優しい力加減で行います。量は、塗った後にティッシュが張り付くくらい「ベタベタ」にするのが正解です。
朝の着替えの時や、食事の前後、お出かけ前など、1日に何度塗っても構いません。乾燥に気づいたらその都度塗る習慣をつけましょう。
保湿剤のタイプと特徴
| タイプ | 特徴 | おすすめの使用場面 |
|---|---|---|
| 軟膏(ワセリン等) | 油分が多く、保護力が最も高い。 | 乾燥がひどい部分、冬場、食前の保護。 |
| クリーム | 水分と油分のバランスが良い。 | 全身の保湿、通年使いやすい。 |
| ローション | 水分が多く、さらっとしている。 | 広範囲への塗布、夏場、頭皮。 |
衣類や寝具の選び方で肌への刺激を最小限にする
直接肌に触れる衣類や寝具も、肌荒れの原因になることがあります。化学繊維やウール素材は、繊維が硬くチクチクとした刺激になりやすいため、敏感肌の赤ちゃんには不向きです。
おすすめは、吸湿性が高く肌触りの柔らかい「綿100%」の素材です。縫い目が外側にあるものや、タグが肌に当たらないものを選ぶとさらに安心です。
また、洗濯洗剤のすすぎ残しも刺激になることがあるため、洗剤は規定量を守り、すすぎは十分に行う設定にしましょう。
食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の関係について考える
「アトピーの原因は食べ物ではないか?」と心配し、離乳食を始めるのをためらう親御さんも少なくありません。しかし、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の関係は複雑であり、正しい順序で理解することが大切です。
食物アレルギーが原因で肌荒れが起きることはあるのか
結論から言うと、乳児のアトピー性皮膚炎の原因が「食物アレルギーのみ」であるケースはそれほど多くありません。
以前は「食べたものが原因で湿疹が出る」と考えられていましたが、最近の研究では「肌荒れがあるからアレルギーになる」という逆のメカニズムが注目されています。
肌のバリア機能が壊れている箇所から食べ物の成分が侵入することで、体がそれを異物と認識し、アレルギーが発症する(経皮感作)という流れです。
したがって、湿疹を治すために安易に食事を制限するよりも、まずはスキンケアと外用薬で肌のバリア機能を修復し、皮膚からアレルゲンが入らないようにすることが最優先です。
離乳食を進める際に気をつけるべきポイント
アトピー性皮膚炎がある赤ちゃんでも、肌の状態がコントロールできていれば、通常通り離乳食を進めて問題ありません。
むしろ、必要以上に開始を遅らせることは、栄養面でのデメリットがあるだけでなく、特定の食品に対する耐性を獲得する機会を逃すことにもなりかねません。
大切なのは、口の周りの肌荒れを治しておくことです。荒れた肌に食べ物が付着すると、そこからアレルギー反応が誘発されるリスクが高まります。
食事の前には口の周りにワセリンを塗って保護膜を作り、食後は濡らしたガーゼで優しく(こすらずに)汚れを拭き取り、再度保湿をするといったケアを徹底しましょう。
自己判断での除去食は行わず医師の指導を受ける
「卵が怪しい気がするから食べさせない」といった自己判断での除去食は、赤ちゃんの成長に必要な栄養素を不足させる危険性があります。
また、本当は食べられるのに除去してしまうことで、本来なら問題なかったはずの食品に対して過敏になってしまうこともあります。
食物アレルギーの診断は、血液検査の結果だけで決まるものではなく、実際に食べて症状が出るかどうかで判断されます。疑わしい場合は必ず医師に相談してください。
季節ごとの肌トラブル対策で一年中すべすべ肌を守る
日本の気候は四季の変化が大きく、それぞれの季節によって肌への刺激因子が異なります。一年を通して赤ちゃんの健やかな肌を守るために、季節ごとの特徴に合わせたスキンケア対策を知っておきましょう。
汗や紫外線による刺激が増える夏のスキンケア対策
夏は高温多湿で、赤ちゃんにとって「あせも」ができやすい季節です。アトピー性皮膚炎がある場合、自分の汗が刺激となって痒みが増すことがよくあります。
汗をかいたらそのままにせず、こまめに拭き取るか、シャワーでサッと流してあげることが大切です。シャワーの後は、夏であっても薄く保湿剤を塗ることを忘れないでください。
また、紫外線は肌のバリア機能を低下させ、炎症を悪化させる要因になります。外出時は帽子やベビーカーの日除けを活用し、赤ちゃん用の低刺激な日焼け止めを使用しましょう。
季節ごとの主な肌トラブル要因と対策
| 季節 | 主なトラブル要因 | 推奨される対策 |
|---|---|---|
| 春 | 花粉、紫外線、環境の変化 | 外出後の洗顔、早めの紫外線対策。 |
| 夏 | 汗、あせも、強い紫外線 | こまめなシャワー、日焼け止め。 |
| 秋 | 夏のダメージ、気温低下 | 夏の疲れを癒やす保湿。 |
| 冬 | 極度の乾燥、暖房 | 高保湿(軟膏)、部屋の加湿。 |
乾燥が強まる冬の保湿ケアと室内の湿度管理
冬は空気が乾燥し、アトピー性皮膚炎の症状が悪化しやすい季節です。夏場はローションを使っていた場合も、冬はより保湿力の高いクリームや軟膏に切り替えるなど工夫しましょう。
回数も増やし、常に肌がしっとりしている状態をキープします。また、暖房器具を使うと湿度が極端に下がることがあるため、加湿器などを利用して湿度を50〜60%程度に保ちます。
寒さ対策で厚着をさせすぎると、室内で汗をかいて蒸れてしまい、それが痒みの原因になることがあります。大人の服装より1枚少なめを目安に調整しましょう。
花粉や季節の変わり目に起きやすい肌荒れに備える
春先や秋口といった季節の変わり目は、気温の寒暖差が激しく、自律神経が乱れやすいため肌の調子も不安定になりがちです。
さらに春は花粉や黄砂、PM2.5などが飛散し、これらが肌に付着することで「花粉皮膚炎」のような症状を起こすこともあります。
この時期は、外出から帰ったら手洗いや洗顔だけでなく、着替えをして肌についた付着物を落とすことが有効です。
よくある質問
- Q赤ちゃんのアトピー性皮膚炎は成長とともに自然に治るのですか?
- A
多くの赤ちゃんは、成長に伴い皮膚が厚くなりバリア機能が発達するため、小学校に上がる頃までには症状が落ち着いたり治癒したりするケースが多いです。
しかし、放置して自然に治るのを待つのではなく、乳児期に適切な治療とスキンケアを行い、良い肌状態を保つことが大切です。
早期に肌をきれいにすることが、将来的なアレルギーマーチ(喘息などへの移行)の予防にもつながると考えられています。
- Q処方されたステロイド外用薬を赤ちゃんに毎日塗り続けても副作用の心配はありませんか?
- A
医師の指示通りに適切な強さの薬を、適切な期間・量で使用する限り、全身的な副作用を心配する必要はほとんどありません。
むしろ副作用を恐れて使用を控え、炎症を長引かせることのほうが、肌へのダメージや将来的なリスクを高めてしまいます。
自己判断で中止せず、医師と相談しながら、徐々に減薬していくプロセスを守ることが大切です。
- Q赤ちゃんの顔にできた乳児湿疹に対して市販の保湿クリームを使用しても問題ありませんか?
- A
軽度のカサつき程度であれば、市販のベビー用保湿クリームを使用しても問題ありません。
ただし、赤みが強い、ジュクジュクしている、痒がっているといった炎症症状がある場合は、保湿剤だけでは治らないことが多いです。
逆に刺激になることもあるため、その場合は市販薬で様子を見ず、小児科や皮膚科を受診して適切な薬を処方してもらいましょう。
- Q両親のどちらかがアレルギー体質の場合、赤ちゃんも必ずアトピー性皮膚炎を発症しますか?
- A
必ず発症するわけではありません。確かにアレルギーになりやすい体質は遺伝する傾向がありますが、絶対ではありません。
アトピー性皮膚炎の発症には環境要因やスキンケアの状況も大きく関わっています。
両親にアレルギーがあっても、生後すぐからの徹底した保湿ケアによってバリア機能を保つことで、発症のリスクを下げられるという研究報告もあります。
- Qアトピー性皮膚炎と診断された赤ちゃんは食物アレルギーも併発している可能性が高いですか?
- A
アトピー性皮膚炎の赤ちゃん全員が食物アレルギーを併発するわけではありません。
ただし、肌のバリア機能が低下しているため、経皮感作によって食物アレルギーのリスクが高まる傾向はあります。
しかし、適切な治療で肌をきれいに保つことが、食物アレルギーの予防にもつながります。心配な場合は自己判断で除去食を行わず、医師に相談してください。
