サクセンダのSCALE試験を読む、臨床データが示す体重減少と安全性

サクセンダのSCALE試験を読む、臨床データが示す体重減少と安全性

サクセンダ(リラグルチド3.0mg)の効果と安全性を語るとき、根拠として名前が挙がるのがSCALEと呼ばれる一連の臨床試験です。

SCALEはSatiety and Clinical Adiposity-Liraglutide Evidenceの略で、対象も期間も違う試験がこの名前のもとに束ねられました。

どの試験に何人が参加し、何週間追われ、どの数字が主要評価項目に置かれたのか。設計まで戻って読むと、公表された数字の意味と限界が見えてきます。

体重の変化だけでなく、報告された有害事象と、結果を読むときに外せない前提も並べて確かめていきます。

目次 Outline

サクセンダの根拠を束ねるSCALE試験という枠組み

サクセンダの根拠は1本の論文で完結しておらず、対象の違う試験がまとまって1つの枠組みを作っています。まずは名前の指す範囲から確かめます。

SCALEは満腹感と体脂肪をめぐる根拠の呼び名

SCALE Insulin試験の論文は、SCALEがSatiety and Clinical Adiposity-Liraglutide Evidenceの略であると明記しており、名称そのものが試験群の狙いを表しています。

満腹感と臨床的な体脂肪をめぐるリラグルチドの根拠、という意味合いになります。試験ごとに対象は違っても、確かめようとした薬と用量は共通していました。

対象を変えた試験が同じ用量を別々に調べた

2017年に報告された3年間の追跡は、この試験がSCALEの枠組みに含まれる4つの試験のうちの1つであると述べています。

その後も基礎インスリンを使う2型糖尿病の人を対象にした試験が加わり、集団を変えながら同じ3.0mgが調べられてきました。

論文には資金源と登録番号が記されている

主要な論文はいずれも資金源を明記しており、SCALE Obesity and Prediabetes試験の報告にはノボノルディスクによる資金提供とNCT01272219という登録番号が添えられています。

3年間の追跡も同じ番号で登録され、27か国191施設で2011年6月1日から2015年3月2日まで行われました。

試験対象と人数期間
SCALE Obesity and Prediabetes2型糖尿病のない3731人56週間
同試験の3年間の追跡前糖尿病のある2254人160週間
SCALE Diabetes2型糖尿病のある846人56週間
SCALE Maintenance低カロリー食で減量した422人56週間
SCALE Sleep Apnea睡眠時無呼吸のある359人32週間
SCALE Insulin基礎インスリンを使う人(各群198人)56週間

同じ薬でも、対象と期間が違えば結果の意味も変わります。数字を引くときは、どの試験のものかを合わせて確かめる必要があります。

SCALE試験でサクセンダはどう割り付けられたのか?

結果の数字を読む前に割り付けと評価項目の設計を見ておくと、何がどこまで比べられたのかがはっきりします。SCALE試験はどれも無作為化と盲検化を備えた比較試験でした。

二重盲検で2対1に割り付ける形が取られた

SCALE Obesity and Prediabetes試験は56週間の二重盲検試験で、3731人が2対1の比でリラグルチド3.0mg群2487人とプラセボ群1244人に割り付けられました。

3年間の追跡では電話またはウェブを使った方式で2対1に割り付けており、割り付けの手順そのものが論文に書き残されています。

参加できる人はBMIと併存疾患で線引きされた

3731人の試験に入れたのは、BMIが30以上の人か、治療の有無を問わず脂質異常症または高血圧があってBMIが27以上の人で、2型糖尿病のある人は含まれていません。

SCALE Diabetes試験の条件はBMIが27.0以上で18歳以上、経口血糖降下薬が0剤から3剤、HbA1cが7.0%から10.0%というものでした。適格性を評価された1361人のうち、実際に割り付けられたのは846人です。

主要評価項目が3つ並べて置かれた

3731人の試験は、体重の変化と、5%以上および10%超の減量に届いた人の割合を主要評価項目に並べました。平均だけでは、どれだけの人が区切りに届いたのかが見えないためです。

SCALE Diabetes試験も同じ3つを主要評価項目に置き、SCALE Maintenance試験は減量の維持を評価の柱に加えていました。

  • SCALE Obesity and Prediabetes: 体重の変化、5%以上減った人の割合、10%を超えて減った人の割合
  • SCALE Diabetes: 56週目の体重の相対的な変化、5%以上減った人の割合、10%を超えて減った人の割合
  • SCALE Maintenance: 割り付け時からの体重変化率、導入期の5%以上の減量を維持した割合、割り付け時体重の5%以上を減らした割合

主要評価項目が複数あるとき、どれか1つだけを取り出して語れば全体像はゆがみます。3つを並べる設計そのものが、この試験群の読み方を指し示しています。

SCALE試験のサクセンダ群にも置かれていた生活の土台

どの試験も薬だけを比べたのではなく、食事と運動の指示を全員に行ったうえでプラセボと比較しています。報告された数字は、この土台の上に載ったものです。

1日500kcalの不足と週150分の運動が指示された

SCALE Obesity and Prediabetes試験の生活の質を扱った報告には、1日500kcalの不足となる食事と週150分の運動計画が参加者へ指導されたと記されています。

SCALE Diabetes試験でも同じ500kcalの不足と週150分以上の身体活動が併用され、SCALE Sleep Apnea試験も1日500kcalの不足を伴う食事と運動を土台に置いていました。

低カロリー食で先に減らしてから始めた試験もある

SCALE Maintenance試験は、導入期の低カロリー食で開始時体重の5%以上を減らせた人だけを無作為化する設計でした。422人の参加者は導入期に平均6.0%(標準偏差0.9)を減らしています。

減量したあとの維持を確かめる設計であり、開始時から薬を使う試験とは問いの立て方が違います。

数字は薬だけの効果として読めない

SCALE Insulin試験は集中的な行動療法と組み合わせて行われ、比較の相手も同じ行動療法を受けたプラセボ群でした。

群間の差は、生活面の指示を共通の土台としたうえで薬を上乗せしたときの差にあたります。薬を単独で使ったときの数字ではありません。

試験食事の指示運動その他の指示
SCALE Obesity and Prediabetes1日500kcalの不足週150分の運動計画
SCALE Diabetes1日500kcalの不足週150分以上の身体活動
SCALE Sleep Apnea1日500kcalの不足運動
SCALE Maintenance導入期に低カロリー食試験を通じた食事と運動の指導
SCALE Insulin集中的な行動療法プラセボ群にも同じ行動療法

並べてみると、食事の指示が試験をまたいでほぼ共通していたと分かります。生活面の設計が近いからこそ、集団の違いによる差が読み取りやすくなりました。

SCALE試験が報告したサクセンダの体重の数字

56週間という区切りで報告された体重の数字を、試験ごとに並べていきます。単位がkgと%に分かれる点にも気をつけたいところです。

56週間で報告された平均値と群間差

3731人の試験では、56週目の体重がリラグルチド群で平均8.4±7.3kg、プラセボ群で平均2.8±6.5kg減りました。

群間差は-5.6kg、95%信頼区間は-6.0から-5.1で、P値は0.001未満です。欠測は最終観測値を繰り越す方法で補ったと論文に明記されています。

標準偏差が7.3kgと大きく、平均の周りに広い散らばりがあった点も読み落とせません。

5%と10%の区切りに届いた人の割合

体重が5%以上減った人はリラグルチド群63.2%、プラセボ群27.1%で、10%を超えて減った人は33.1%と10.6%でした。いずれもP値は0.001未満です。

裏返せば、リラグルチド群でも3分の1以上は5%の区切りに届いていません。同じ薬を同じ期間使っても、結果は一様になりませんでした。

集団が変わると減り幅も変わる

SCALE Diabetes試験の56週目は、3.0mg群が6.0%(6.4kg)、1.8mg群が4.7%(5.0kg)、プラセボ群が2.0%(2.2kg)の減少でした。

SCALE Insulin試験では3.0mg群が-5.8%、プラセボ群が-1.5%で、推定治療差は-4.3%、95%信頼区間は-5.5から-3.2と報告されています。

SCALE Maintenance試験は割り付け後にさらに6.2%(標準偏差7.3)減り、プラセボ群の0.2%(7.0)との推定差は-6.1%、95%信頼区間は-7.5から-4.6でした。

試験リラグルチド3.0mg群プラセボ群
SCALE Obesity and Prediabetes-8.4±7.3kg-2.8±6.5kg
SCALE Diabetes-6.0%(-6.4kg)-2.0%(-2.2kg)
SCALE Insulin-5.8%-1.5%
SCALE Maintenance(割り付け後)-6.2%(標準偏差7.3)-0.2%(7.0)

kgと%が混じるため、表の値をそのまま引き算はできません。比べるときは単位と基準になる時点をそろえる必要があります。

サクセンダのSCALE試験で体重以外に測られた指標

体重以外にも、糖尿病の発症、睡眠時無呼吸の指標、生活の質の質問票が評価に組み込まれました。測られた試験と期間は指標ごとに違います。

3年間追った試験で数えられた糖尿病の発症

前糖尿病のある2254人をリラグルチド群1505人とプラセボ群749人に分けた追跡では、160週までに糖尿病と診断されるまでの時間が主要評価項目でした。

160週の時点で診断されたのは、リラグルチド群1472人中26人(2%)、プラセボ群738人中46人(6%)です。診断までの平均期間は99週(標準偏差47)と87週(47)でした。

発症までの時間は2.7倍長く(95%信頼区間1.9から3.9、P値0.0001未満)、ハザード比は0.21、95%信頼区間は0.13から0.34と報告されています。

睡眠時無呼吸の指標は32週間でどう動いたか?

持続陽圧呼吸療法を使えない、または使いたくない359人を32週間追った試験では、無呼吸低呼吸指数の変化が主要評価項目に置かれました。

減少幅はリラグルチド群で12.2回/時、プラセボ群で6.1回/時、推定治療差は-6.1回/時(95%信頼区間-11.0から-1.2)、P値は0.0150です。

同じ試験の体重減少率は-5.7%と-1.6%で、推定治療差は-4.2%(95%信頼区間-5.2から-3.1)でした。参加者の開始時の平均年齢は48.5歳、71.9%が男性です。

質問票で測られた生活の質の変化

3731人の試験では、体重が生活へ及ぼす影響を測るIWQOL-Liteと、健康に関わる生活の質を測るSF-36 v2の2つの質問票が用いられました。

IWQOL-Liteの合計点はリラグルチド群2046人で10.6±13.3、プラセボ群1020人で7.7±12.8の改善で、推定治療差は3.1(95%信頼区間2.2から4.0)でした。

SF-36の身体面の要約点の推定治療差は1.7(95%信頼区間1.2から2.2)、精神面は0.9(95%信頼区間0.3から1.5)で、精神面のP値は0.003と記されています。

指標報告された値出典の試験
2型糖尿病の診断160週で26/1472人(2%)対46/738人(6%)、ハザード比0.213年間の追跡
無呼吸低呼吸指数32週で-12.2対-6.1回/時、推定治療差-6.1回/時SCALE Sleep Apnea
IWQOL-Liteの合計点10.6±13.3対7.7±12.8、推定治療差3.1SCALE Obesity and Prediabetes
HbA1cと収縮期血圧いずれもリラグルチド群の低下が大きい(P値0.001未満)SCALE Sleep Apnea

指標が違えば追跡の長さも違います。1つの数字を全体の要約として使えない点が、この試験群を読むうえでの勘どころです。

SCALE試験でサクセンダに報告された有害事象

有害事象は各論文の結果に記載されています。多く報告された事象と、重篤な事象の割合を順に見ていきます。

最も多く報告されたのは吐き気と下痢

3731人の試験でリラグルチド群に最も多く報告されたのは、軽度または中等度の吐き気と下痢でした。

SCALE Diabetes試験でも消化器系の事象は3.0mg群のほうが1.8mg群やプラセボ群より多く、膵炎の報告はありませんでした。

SCALE Maintenance試験の消化器症状も大半が一過性で、重症度は軽度から中等度だったと記されています。

重篤な有害事象の割合は群間で近かった

56週間の試験で重篤な事象が起きたのは、リラグルチド群の6.2%とプラセボ群の5.0%でした。

160週まで追った報告では、リラグルチド群1501人中227人(15%)、プラセボ群747人中96人(13%)に重篤な事象がありました。

12歳から18歳未満を対象にした別の試験(NN8022-4180)では、重篤な事象がリラグルチド群3人(2.4%)、プラセボ群5人(4.0%)と報告されています。

中止に至った有害事象をどう見るか?

同じ12歳から18歳未満の試験では、消化器系の有害事象が125人中81人(64.8%)対126人中46人(36.5%)、治療の中止に至った事象が13人(10.4%)対0人でした。

64件の無作為化比較試験27018人を集めた2021年のネットワークメタ解析は、有害事象による中止の順位が高い薬剤として1.8mgを超える用量のリラグルチドを挙げました。

8件の試験8847人をもとにした2024年の利益と害の比較では、GLP-1受容体作動薬を2年間使った1000人あたりの嘔吐が110件(80から145)と推計されています。

  • 便秘118件(78から164)、下痢100件(42から173)、嘔吐110件(80から145)
  • 腹痛41件(19から69)、脱毛57件(10から176)、低血糖17件(1から68)
  • 胆石症8件(1から21)、注射部位の反応4件(-3から19)

この推計はセマグルチド、リラグルチド、チルゼパチドを含む解析から出たもので、リラグルチド単独の値ではありません。10%の減量における2年後の正味の利益の確率も、セマグルチド0.96、リラグルチド0.72、チルゼパチド0.60と薬剤ごとに分かれていました。

サクセンダのSCALE試験を読むときに外せない前提

試験の数字には、それが得られた条件が必ず付いています。脱落と資金、そして日本での扱いという3つの前提を押さえておきます。

3年間の試験では半数が脱落している

160週まで完了したのは1128人で、割り付けられた人の50%にとどまります。リラグルチド群714人(47%)とプラセボ群412人(55%)が途中で離脱しました。

論文は、中止した人をその後追跡していない点を限界として明記しています。長期の数字は、続けられた人の側から見た値だといえます。

資金提供と関与の記載を確かめる

SCALE Obesity and Prediabetes試験の報告には資金提供者としてノボノルディスクが記され、3年間の追跡も同社の資金で行われたと書かれています。

資金源の記載があるから結果が偏る、という話ではありません。誰が費用を負担したのかを知ったうえで結論の強さを見積もる、という読み方になります。

日本では未承認で自由診療という前提

サクセンダは日本では未承認で、当院を含め自由診療として扱われます。同じリラグルチドでも、2型糖尿病の効能で承認されているビクトーザとは用量も適応も違います。

費用は全額が自己負担となり、金額の設定は医療機関ごとに異なります。吐き気や下痢などの副作用が起こりうる点も含め、開始前に医師と確かめておきたいところです。

確かめる項目SCALE試験での記載読み方への影響
追跡の完了率160週の完了は1128人(50%)長期の値は続けられた人の側から見た数字
資金と関与ノボノルディスクによる資金提供結論の強さを見積もる材料になる
欠測の扱い最終観測値の繰り越しで補完平均値は補完の方法に左右される
生活面の指示1日500kcalの不足と週150分の運動薬単独ではなく上乗せ分の差
国内での扱い未承認で自由診療費用は全額が自己負担になる

設計まで戻って読むと、同じ数字でも語れる範囲が変わってきます。前提を添えて読む姿勢が、SCALE試験の数字と付き合ううえでの土台になります。

よくある質問

サクセンダのSCALE試験は何本の試験でできていますか?

2017年に報告された3年間の追跡は、SCALEの枠組みに4つの試験が含まれると述べています。肥満と前糖尿病、2型糖尿病、減量後の維持、睡眠時無呼吸を対象にした試験です。

その後に基礎インスリンを使う2型糖尿病の人を対象としたSCALE Insulin試験が加わりました。対象も期間も違うため、数字を引くときはどの試験のものかを合わせて確かめます。

SCALE試験でサクセンダはどのくらい体重が減ったと報告されていますか?

2型糖尿病のない3731人の試験では、56週目の体重減少がリラグルチド群で平均8.4±7.3kg、プラセボ群で平均2.8±6.5kgでした。群間差は-5.6kg、95%信頼区間は-6.0から-5.1です。

ただし標準偏差が7.3kgと大きく、散らばりの幅は狭くありません。5%以上減った人は63.2%で、残りはその区切りに届いていませんでした。

サクセンダのSCALE試験ではどんな有害事象が多かったですか?

3731人の試験で最も多く報告されたのは、軽度または中等度の吐き気と下痢でした。SCALE Diabetes試験でも消化器系の事象は3.0mg群で多く、膵炎の報告はありません。

重篤な事象は56週間の試験でリラグルチド群6.2%、プラセボ群5.0%、160週まで追った報告では15%と13%と記されています。

SCALE試験の結果は日本のサクセンダにもそのまま当てはまりますか?

試験は27か国191施設などで行われ、参加者の体格や併存疾患の分布は試験ごとに定められた条件に沿っています。日本で同じ集団が再現されるとは限りません。

サクセンダは日本では未承認で、自由診療として扱われます。費用は全額が自己負担となり、副作用の説明を受けたうえで医師と方針を相談する形になります。

サクセンダのSCALE試験で生活習慣への働きかけはどう扱われましたか?

どの試験もリラグルチド群とプラセボ群の両方に食事と運動の指示を行っています。SCALE Diabetes試験では1日500kcalの不足と週150分以上の身体活動が併用されました。

報告された群間差は、この土台の上に薬を上乗せしたときの差にあたります。薬を単独で使った場合の数字ではない点に注意がいります。

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この記事を書いた人 Wrote this article

大木 沙織 大木皮ふ科クリニック 副院長

皮膚科医/内科専門医/公認心理師 略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。 所属:日本内科学会