サクセンダが日本で保険外(自由診療)の理由は?承認状況と費用背景

サクセンダが日本で保険外(自由診療)の理由は?承認状況と費用背景

サクセンダ(リラグルチド3.0mg)が日本で保険外に置かれているのは、価格が高いからでも、効き目が疑われているからでもありません。公的医療保険が支払いの対象にしている薬の一覧に、この製品が載っていないためです。

国内の保険は、国が承認した医薬品のうち、薬価基準という一覧に収載されたものだけを給付の対象としています。承認と収載は別々の手続きで、どちらかが欠ければ保険の枠には入りません。

その結果、薬剤費だけでなく診察料や検査料まで全額が自己負担になり、負担を抑える公的な仕組みも働かなくなります。

承認の枠組み、費用が積み上がる範囲、自由診療を選ぶ前に確かめたい説明の中身を順にたどっていきます。

目次 Outline

サクセンダが日本で保険外なのは承認の枠の外にあるから

サクセンダが保険の対象から外れている理由は、この製品が国内で承認された医薬品として登録されていない点にあります。保険が使えるかどうかは、薬の効き目とは別の道筋で決まります。

関門そこで決まる中身通っていないとどうなるか
承認対象になる病気・用法・用量国内で医薬品として販売できない
薬価基準への収載公的保険が支払うときの価格保険診療の中では処方できない
保険診療での使用窓口で支払う自己負担の割合費用は全額が自己負担になる

国内で承認されている薬と承認されていない薬

日本国内で医薬品を販売するには国の審査を受ける必要があり、そこでは対象になる病気、用法、用量までまとめて確かめられます。承認の範囲を外れた使い方は、成分が同じであっても承認された使い方とは扱われません。

ある国で承認された新薬が他の国でも同じように使えるとは限らず、審査の時期も国ごとにずれます。

2010年から2023年に米国FDAが承認した新薬516品目のうち、日本のPMDAが承認していたのは301品目だったと、2026年のBMC Health Services Research誌の解析が報告しました。

その解析によると、日本で生じた遅れは審査そのものよりも申請の段階に集まっていました。承認がないという状況は、国が危険だと判断した結果とは限らないのです。

リラグルチド3.0mgは国内の承認を受けていない

サクセンダは、リラグルチドという成分を1日3.0mgまで使う設計の製品です。同じ成分を1.8mgまで使うビクトーザは2型糖尿病の薬として国内で承認されていますが、3.0mgの製品は国内の承認を受けていません。

当院を含め、国内でサクセンダを扱う医療機関は自由診療の枠組みで取り扱っています。成分が共通していても、用量と対象と入手の道筋が違えば、制度の上では別の薬として扱われます。

保険の対象になるかどうかを決めているのは、成分の名前ではなく製品ごとの承認の中身なのです。

効き目の議論と保険の可否は別の話として動く

臨床試験で体重が減ったという報告があっても、その報告だけで公的医療保険の対象になるわけではありません。効き目の評価と、限られた財源をどう配るかという設計は、別々の判断として積み上がります。

保険が使えないという事実は、効かないという評価とも、危ないという評価とも同じではありません。制度の枠と医学の評価を切り分けて読むと、費用の説明も飲み込みやすくなるでしょう。

日本の保険で薬が使えるまでに置かれた2つの関門

国内で薬に保険が使えるようになるには、国の承認と薬価基準への収載という関門を順に通る必要があります。片方だけでは、保険診療の中で処方できる薬にはなりません。

承認の次に控える薬価基準への収載

国の承認を受けた医薬品であっても、そのままでは保険診療に使えません。公的医療保険が支払う価格を定めた薬価基準に収載されて、はじめて保険の枠の中で処方できる薬になります。

2019年にGlobalization and Health誌が公開した論考は、日本の公的医療保険が診療報酬という一覧に載ったサービスと医薬品だけを給付の対象にしていると説明しました。

この一覧が定めるのは価格だけではなく、支払いを受けるために医療機関が満たすべき条件まで含まれています。

一覧に載っていない薬を保険の中で使う道は、この設計上そもそも用意されていないわけです。

価格を国が決める仕組みが保険の土台にある

日本の薬の価格は、企業が自由に決めるものではなく、公的医療保険のもとで国が定める仕組みに従います。2025年にHealth Economics Review誌が公開した総説は、民間保険のもとで企業が価格を決める米国の方式と、この日本の方式を対比しました。

その総説によると、米国の薬価は平均して日本の3.2倍にあたります。価格の決め方が違えば、同じ成分の薬でも患者が支払う額はまったく別の水準になるわけです。

国内では新しい薬の発売が遅れがちだった経緯を受けて、2024年4月に価格差を縮める加算の枠組みも導入されました。制度は動いており、数年前の説明がそのまま当てはまるとは限りません。

未承認の薬や適応外の使い方を保険の枠へ入れる道

国内で承認されていない薬や、承認の範囲を外れた使い方については、1999年から公知申請と呼ばれる審査の道が置かれています。効き目と安全性が広く知られていて医療上の必要性が高いと判断されれば、あらためて臨床試験を行わずに申請できる仕組みです。

2026年にCurrent Therapeutic Research誌が報告した解析は、2013年8月から2022年3月までに患者団体や学会から開発の要望が出た171件を調べたものです。

医療上の必要性が高いと判断されたのは54件で、そのうち公知申請の要件を満たすとされたのは25件でした。

必要性が高いと認められなかった要望の90%は、国内に既存の治療法がある薬についてのものでした。要件を満たした要望の72%は、欧米6か国で標準的に使われている薬だったと報告されています。

入口が用意されていても、そこを通る要望は限られます。承認と収載までの道のりは、想像されるよりも長いものです。

保険外のサクセンダは自由診療という別の会計になる

保険の対象外の薬を使う診療は、自由診療として保険診療とは別の会計で扱われます。同じ日の受診であっても、両方を混ぜて精算する形は原則として認められていません。

保険診療と自由診療を同じ会計に混ぜられない

日本の公的医療保険は、給付の対象になる診療の範囲と価格を国が定め、その枠を超えた上乗せの請求を制限する形で成り立ってきました。先ほどの論考は、こうした上乗せの請求が1984年に明確に制限されたと記しています。

その設計があるため、保険外の薬を使う診療では、同じ日の診察料や検査料まで含めて保険を離れた扱いになるのが原則です。例外にあたる枠組みも制度上は用意されていますが、対象になる治療や医療機関の条件は限られています。

細かい取り扱いは受診先によって説明の仕方が変わるので、会計の前に確かめておくと行き違いが減ります。

診察も検査も含めて全額が自己負担になる

自由診療で支払う対象は、薬剤費だけにとどまりません。次の費目はいずれも、保険診療であれば1割から3割の負担で済むところが、全額の負担に変わります。

  • 初診料や再診料にあたる診察の費用
  • 血液検査や体格の測定にかかる費用
  • 薬剤そのものの費用
  • 注射針や消毒用品などの付属品

負担の割合という仕組みが働かないため、支払う額の水準は保険診療とは桁から変わってきます。総額を見積もるときは、薬の値段だけを並べても実際には届きません。

自己負担の上限を定めた仕組みも働かない

公的医療保険には、1か月の自己負担が一定の額を超えたときに払い戻す仕組みが置かれています。1973年に導入されたこの仕組みが対象にしているのは、保険診療で生じた自己負担です。

自由診療で支払った額は、その計算には入りません。支払いが大きくなっても公的な上限が働かない点は、費用を見積もるうえで押さえておきたいところです。

税の扱いについては、目的や内容によって判断が分かれます。医療費控除の対象になるかどうかは、国税庁の案内や税務署の窓口で確かめるのが確実です。

分かれる項目保険診療自由診療
価格の決まり方国が定めた一覧で全国共通医療機関がそれぞれ設定する
窓口での負担費用の1割から3割費用の全額
1か月の負担の上限払い戻しの仕組みがある公的な上限は働かない

保険外のサクセンダで費用はどこまで積み上がるのか?

自由診療の総額は、薬剤費に診察料と検査料が加わった合計で決まります。しかも価格そのものが医療機関ごとに設定されるため、1枚の料金表だけでは全体像がつかめません。

薬剤費の外側に積み上がる費目

表示されている金額が何を含んでいるかは、医療機関によって違います。初診の費用や検査の費用が別に加算される形か、まとめて提示される形かで、支払う総額の見え方が変わります。

費目中身確かめ方
診察初診・再診にあたる費用表示価格に含まれるかを聞く
検査血液検査や体格の測定回数と間隔もあわせて確認する
薬剤本数と用量で変わる費用増量したときの金額を聞く
付属品注射針や消毒用品別売りかどうかを確認する

用量を増やす設計の薬では、進み方によって月ごとの薬剤費も動きます。開始時の金額だけで見通しを立てると、途中で見込みが崩れやすくなるのです。

価格に全国共通の基準がない

保険診療の価格は国が定めた一覧で共通していますが、自由診療の価格にその共通の基準はありません。同じ薬であっても、医療機関ごとに提示される金額は違います。

2026年にBMJ Open誌が公開した10か国の横断研究は、公開情報をもとにGLP-1受容体作動薬などの価格を比べたものです。1か月あたりの最低費用はGLP-1受容体作動薬で22.95米ドルから220.80米ドルまで開いていました。

同じ研究では、GLP-1受容体作動薬の1か月分の費用が最低賃金の月額に占める割合が1.6%から110.4%まで幅を持っていたと報告されています。制度と価格の設計が変われば、同じ薬でも負担の重さはまるで違ってくるわけです。

費用の重さは続けやすさに跳ね返る

2023年にJAMA Network Open誌が報告した米国の後ろ向きコホートでは、2型糖尿病と心血管疾患を持つ8万807人が対象になりました。加入している保険ごとに、1か月分の自己負担の額で4つの層に分けた解析です。

GLP-1受容体作動薬の自己負担は、最も高い層で平均118ドル、最も低い層で平均25ドルでした。最も高い層では薬を開始する見込みが13%低く、調整ハザード比は0.87(95%信頼区間 0.78〜0.97)と報告されています。

この研究の対象は保険に加入した人であり、全額が自己負担になる自由診療とは前提が違います。それでも、費用の設計が治療の続き方に効いてくるという関係は共通して読み取れます。

日本で保険が使える肥満症の薬に付いている条件

国内には、肥満症に対して保険で使える薬も一部にあります。ただし対象になる体格と併存疾患の条件が細かく定められており、希望した人が誰でも使えるわけではありません。

対象になる人の条件が細かく決められる

2026年にJournal of Health Economics and Outcomes Research誌が公開した日本の経済モデル研究は、セマグルチド2.4mgを対象にしたものです。

この研究では、BMIが35以上で高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを伴う人、またはBMIが27以上で健康障害を2つ以上持つ人が対象として設定されました。

同じ研究は、国内の公的な指針が対象になる人と使用できる期間の両方に制限を設けていると記しています。保険で使える薬であっても、条件から外れれば枠の中には入れません。

ここに挙げた数字はセマグルチド2.4mgについての報告であり、サクセンダの条件を示したものではありません。

条件に当てはまる人はどれくらいいるのか?

2026年にCirculation Journal誌が報告した国内の研究は、心不全のうち駆出率が保たれた型の患者3706人を調べたものでした。肥満症の治療としてGLP-1受容体作動薬などを保険で使う条件に当てはまったのは654人、全体の17.6%です。

条件に当てはまった人たちは、心不全の薬をより多く処方されていながら症状が重い傾向にあったと記されています。保険の対象になる範囲は、思われているよりも狭く設計されているのです。

支払う費用に見合うかどうかも検討される

保険で使える薬になるかを検討する場面では、支払う費用に見合う効果があるかどうかも調べられます。先ほどの日本の経済モデル研究は、生活の質で調整した生存年1年あたりの追加費用を推計しました。

2型糖尿病を伴わない肥満症で530万580円、2型糖尿病を伴う場合で707万7984円という値が示されています。いずれもセマグルチド2.4mgについての推計であり、割引率は年2%で計算されました。

報告された項目報告された中身
経済モデル研究が置いた対象の条件BMI35以上+健康障害1つ以上、またはBMI27以上+健康障害2つ以上
国内の心不全患者で条件に当てはまった割合3706人中654人(17.6%)
生存年1年あたりの追加費用530万580円(2型糖尿病なし)・707万7984円(2型糖尿病あり)

肥満そのものが医療費を押し上げる面も報告されています。

2026年にJournal of Medical Economics誌が公開した国内の請求データ解析では、健康障害を持つ24万4150人を5年間追跡し、BMIが25以上の群で1人あたりの年間医療費が23万4093円から32万3086円へ増えていました。

保険外でサクセンダを使う前に確かめておきたい説明

自由診療で承認の範囲を外れた薬を使うときには、医療機関が示すべき説明の項目が定められています。その説明が示されているかどうかは、選ぶ側からも確かめられます。

広告に義務づけられた5つの項目

医療広告のきまりでは、承認の範囲を外れた薬を用いる自由診療を広告する際に、5つの項目を必ず示すよう求めています。2025年にJMIR Formative Research誌が公開した国内の調査は、この点を実際のサイトで確かめたものでした。

調査の対象になった87のサイトのうち、5項目をすべて記載していたのは1件だけです。副作用による健康被害の公的な救済の対象外である旨を記していたサイトは8件、全体の9%にとどまっていました。

誇大な表現を含むサイトは72件、全体の83%にのぼります。食事や運動が要らないと受け取れる記述は60件、69%で見つかったと報告されました。

救済の枠から外れる点は費用より見落とされやすい

公的な救済の仕組みは、承認された医薬品を適正に使ったにもかかわらず健康被害が生じた場合を対象にしています。承認の範囲を外れた使い方は、その枠の外に置かれます。

費用の話は請求書という形で目に入りますが、救済の枠組みは何も起きていない間は見えません。先ほどの調査で記載率が9%にとどまっていたのは、その見えにくさを映した数字ともいえます。

説明が見当たらないときは、診察の場で直接たずねておくと安心でしょう。

情報の質そのものにも大きな幅がある

同じ調査は、健康情報の質を採点する尺度を用いた評価も行いました。87サイトの平均点は32.6点(標準偏差5.5)で、良好と評価されたのは1件、水準に届かないと評価されたのは77件です。

広告の言葉づかいは、薬の中身とは別のところで作られます。受診先を決める前に、次の4点を書かれていない側から確かめておくと判断しやすくなります。

  • 提示された総額に何が含まれているか
  • 承認の範囲を外れた使用にあたるかどうか
  • 公的な救済の対象になるかどうか
  • 中断や変更を決めるときの相談先

保険が使えないという前提を先につかんでおくと、提示された金額の意味も違って見えてきます。費用と条件と救済の扱いという3点は、始める前に確かめておきたいところです。

よくある質問

サクセンダの承認と薬価基準への収載は何が違うのですか?

承認は、その薬を国内で医薬品として販売してよいかを、対象になる病気や用法・用量まで含めて審査する手続きです。薬価基準への収載は、その先で公的医療保険が支払う価格を定める別の手続きにあたります。

両方をそろえて、はじめて保険診療の中で処方できる薬になります。片方だけでは足りないという点が、費用の話を分かりにくくしているところです。

サクセンダの費用には薬剤費のほかに何が含まれますか?

診察の費用、血液検査や体格の測定にかかる費用、注射針や消毒用品といった付属品の費用が加わります。どこまでが表示価格に含まれるかは受診先によって違います。

用量を段階的に増やす設計のため、進み方によって月ごとの薬剤費も動きます。開始時の金額だけでなく、増量後の金額もあわせて確かめておくと見通しが立てやすくなるでしょう。

サクセンダの価格が医療機関ごとに違うのはなぜですか?

国が定める価格の一覧は、公的医療保険の中で使う薬を対象にしたものです。その一覧の外にある薬には全国共通の基準がなく、金額は医療機関がそれぞれ設定します。

10か国を比べた2026年のBMJ Open誌の研究でも、GLP-1受容体作動薬の1か月あたりの最低費用は22.95米ドルから220.80米ドルまで開いていました。価格の幅そのものは珍しいものではありません。

サクセンダで健康被害が起きたとき公的な救済は使えますか?

公的な救済の仕組みは、承認された医薬品を適正に使ったうえで健康被害が生じた場合を対象にしています。承認の範囲を外れた使い方は、その枠の外に置かれます。

この点は自由診療の広告で示すべき項目に含まれていますが、国内87サイトを調べた2025年の調査では記載が8件(9%)にとどまりました。書かれていないときは、診察の場で直接たずねてみてください。

サクセンダを続けるかどうかは何を基準に決めればよいですか?

体重や検査値の動き、副作用の出方、暮らしの中で無理なく続けられる費用という3つを、診察のたびに一緒に確かめていきます。どれか1つだけで決める判断は勧められません。

費用の負担が重くなったときは、我慢して自己判断で間隔を空けるより先に相談していただきたいところです。使い方を変える判断は、医師と一緒に行うのが安全です。

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この記事を書いた人 Wrote this article

大木 沙織 大木皮ふ科クリニック 副院長

皮膚科医/内科専門医/公認心理師 略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。 所属:日本内科学会