赤ちゃんの耳の横や前に、小さなイボのようなふくらみを見つけて、これは何だろう、取った方がいいのかと不安になっていませんか。

その多くは「副耳(ふくじ)」という生まれつきのできもので、命にかかわる腫瘍ではありません。あわてて処置をする必要はないことがほとんどです。

中に軟骨が入っていることがあり、見た目が気になるときや炎症をくり返すときには、皮膚と軟骨をまとめて取り除く切除手術がすすめられます。

この記事では、副耳のでき方や見分け方、手術の進み方、そして赤ちゃんの治療時期の目安や術後のケアまでを、できるだけやさしくお伝えします。

耳の横のイボ、その多くは副耳(ふくじ)です

耳の前や横に、小さなイボのようなふくらみを見つけると不安になりますよね。その多くは「副耳(ふくじ)」と呼ばれる生まれつきのできもので、急いで心配いらないものがほとんどです。

副耳ってどんなできもの?

副耳は、耳のすぐ前やほほとの境目あたりにできる、皮膚におおわれた小さな突起です。大きさは数ミリほどのことが多く、やわらかいものもあれば、芯にコリッとした硬さを感じるものもあります。

生まれたときからあるのが特徴で、痛みやかゆみはほとんどありません。日常生活で困らないまま大人になる方も大勢いらっしゃいます。

粉瘤やニキビとの見分け方

耳まわりのできものには、副耳のほかにも粉瘤(ふんりゅう)やニキビなど、似て見えるものがいくつかあります。見た目だけでは区別が難しいことも少なくありません。

大きな手がかりになるのは、いつからあるかという点です。生まれつきあって、体の成長とともに少しずつ大きくなってきたなら、副耳の可能性が高いといえます。

できもの主な特徴中身
副耳生まれつきあり、耳の前に多い皮膚や脂肪、軟骨のことも
粉瘤あとからでき、中央に黒い点角質や皮脂がたまる
ニキビ赤くはれ、痛みを伴いやすい皮脂と炎症

こうした違いはあくまで目安にすぎません。自分で決めつけず、気になるときは皮膚科や形成外科で診てもらうと安心でしょう。

触ると硬いのは中の軟骨が理由

副耳を指でつまんだときにコリッとした感触があるのは、内部に軟骨が含まれているためです。耳の骨組みと同じ種類の組織が、小さく取り残されたような状態と考えるとわかりやすいかもしれません。

この軟骨があるかどうかは、のちのち治療方法を選ぶうえで大切な手がかりになります。糸で縛るだけでは取りきれないことが多いからです。

副耳が生まれつきできる理由と、できやすい場所

副耳は、妊娠中の過ごし方や育て方が原因でできるものではありません。耳が作られていく途中の、ごく自然な名残として生じる生まれつきの変化です。

  • 耳の前のくぼみの近く
  • 耳とほほの境目あたり
  • あごから耳へ向かうライン上
  • まれに首すじ

場所には個人差がありますが、耳の前あたりに片側だけ、ひとつできることがいちばん多いといえます。

耳が作られる途中の名残

赤ちゃんの耳は、おなかの中で「耳介結節(じかいけっせつ)」という小さなふくらみが6つ集まり、互いにくっつき合って形づくられます。この組み立ての途中で組織がわずかに余ると、それが副耳として残ることがあります。

つまり副耳は、体の設計図のちょっとした個性のようなものです。だれにでも起こりうる現象で、特別なことではありません。

妊娠中の生活が原因ではありません

「妊娠中の食事が悪かったのでは」「自分のせいかもしれない」と気に病む保護者の方は少なくありません。けれども副耳のでき方は、お母さんの生活習慣と結びつくものではないと考えられています。

どうかご自身を責めないでください。原因を探すよりも、これからどう付き合っていくかに目を向けるほうが、ずっと前向きです。

片側にひとつが多い副耳の特徴

副耳は左右どちらか一方にできることが多く、数もひとつだけというケースが大半を占めます。ときに複数できたり、両側にみられたりすることもあります。

男の子にやや多いという報告もありますが、女の子にもふつうにみられます。性別による大きな差を心配する必要はないでしょう。

副耳は放っておいて大丈夫?治療をすすめるケース

副耳それ自体は良性で、急いで取らなければならないものではありません。見た目が気になる、衣服やくしに引っかかる、炎症をくり返すといった事情があるときに、切除を検討します。

急いで取らなくてよい理由

副耳は、がんのように広がったり命にかかわったりするできものではありません。放っておいても急に悪くなることはほとんどなく、あわてて処置する必要はないのが基本です。

そのため、赤ちゃんのうちは様子をみて、ご本人やご家族が納得できるタイミングで治療を選ぶ、という考えが広く取られています。

見た目や引っかかりが気になるとき

一方で、成長とともに見た目が気になりはじめたり、髪をとかすときやマスクのひもが当たったりすることがあります。日常のちょっとした不便が、治療を考えるきっかけになる方も多いものです。

お子さん自身が大きくなって「取りたい」と希望する場合も、立派な治療の理由といえます。

治療をすすめるケースの目安

次のような事情が重なるときは、形成外科や皮膚科で切除を相談する目安になります。あくまで一般的な傾向であり、最終的な判断は診察のうえで決めていきます。

ケースみられること対応の目安
見た目が気になる顔の目立つ位置にある切除を相談
引っかかる衣服やくしに当たる切除を相談
炎症をくり返す赤みや痛みが再発まず炎症を抑え相談
困りごとなし痛みも不便もない経過観察でよい

困りごとがなければ、無理に取らずに見守る選択も、もちろん正解のひとつです。あせらず向き合っていきましょう。

副耳の切除手術は皮膚と中の軟骨を一緒に取り除きます

切除手術の多くは、局所麻酔を使った日帰りで行えます。皮膚だけでなく、内部に隠れた軟骨まで含めて取り除くことが、きれいな仕上がりと再発予防のために大切です。

皮膚と軟骨をまとめて取り除く理由

副耳の芯に軟骨が残っていると、表面だけ切っても、あとから小さなふくらみとして再びあらわれることがあります。そのため手術では、根もとにある軟骨をていねいに探し、皮膚とひとまとまりにして取り除きます。

軟骨をしっかり処理できるかどうかが、仕上がりを左右する分かれ目です。糸で縛るだけの方法では、この軟骨を取りきれない点が弱みといえます。

局所麻酔と日帰りでの手術

大人やある程度大きいお子さんでは、患部だけに効く局所麻酔で手術を行えることが多いです。所要時間は数十分ほどで、その日のうちに帰宅できるのが一般的でしょう。

小さなお子さんで、じっとしているのが難しい場合には、安全のために全身麻酔を選ぶこともあります。年齢や状態に合わせて、無理のない方法を相談していきます。

手術当日の進み方

当日の流れは施設によって細かな違いがありますが、おおまかには次のように進みます。事前に説明を受けておくと、当日も落ち着いて臨めるでしょう。

場面行うこと
診察・確認大きさや位置、軟骨の有無を確認します
麻酔患部に局所麻酔をかけます
切除皮膚と軟骨をまとめて取り除きます
縫合細い糸でていねいに閉じます

痛みは麻酔でやわらげられるため、手術中につらい思いをすることはほとんどありません。終わったあとの過ごし方も、その場で具体的に教えてもらえます。

傷あとを目立たせない縫合の工夫

顔まわりの手術では、傷あとをできるだけ目立たせない縫い方を選びます。皮膚のしわや耳の輪郭に沿って切開線をとり、内側と表面を分けて細い糸で閉じるなどの配慮を重ねます。

それでも体質によっては、赤みやかたさがしばらく残ることがあります。心配なときは遠慮なく主治医に伝えてください。

赤ちゃんの副耳はいつ取るのがよい?治療時期の目安

急ぐ病気ではないため、全身麻酔に安全に耐えられる年齢になってから取るのが基本です。多くは就学前後を目安に、ご家族と相談しながら時期を決めていきます。

時期特徴・考え方主な選択肢
新生児〜乳児期あわてて処置しない経過観察
幼児期体力や説明の理解が進む全身麻酔で切除も
就学前後見た目を気にし始める頃局所または全身麻酔で切除

目安はあくまで一般的なものです。お子さん一人ひとりの状態によって、ふさわしい時期は変わってきます。

新生児期に糸で縛る方法をすすめない理由

昔は、副耳や指のあまった部分を糸で縛って自然に落とす方法が手軽だと考えられていました。けれども、この方法は感染を起こしたり、根もとの軟骨が残って小さなふくらみが居座ったりする心配があります。

そうした合併症の報告から、いまでは糸で縛る処置はすすめられないというのが専門家の共通した見方です。取るのであれば、軟骨まで確認できる切除のほうが安心といえます。

全身麻酔ができる年齢を待つ

赤ちゃんはじっと動かずにいるのが難しく、顔まわりの手術には全身麻酔が必要になります。全身麻酔は、体がある程度しっかりしてくる時期まで待つほうが、安全面で有利です。

緊急性のない副耳だからこそ、無理をせず、安全に行える時期を選べるという利点があります。

就学前後を目安にすることが多い

見た目を気にし始めるのは、お友だちとの関わりが増える幼児期から学童期にかけてです。この時期に合わせて治療を選ぶと、お子さんの気持ちにも寄り添いやすくなります。

もちろん、困りごとがなければあせる必要はありません。大人になってから取る方もいて、それも自然な選択のひとつです。

副耳の手術後のケアと回復までの過ごし方

傷あとは、数日で落ち着いてきます。とはいえ最初の1〜2週間は、ぬれや刺激を避けて清潔を保つことが回復への近道です。

抜糸までの傷の守り方

手術のあとは、医師の指示に従って傷を清潔に保ちます。指定された日まではぬらさないよう気をつけ、ガーゼやテープで保護することが多いです。

細い糸を使った場合、数日から1週間ほどで抜糸を行います。お子さんが傷を引っかかないよう、まわりの大人が見守ってあげてください。

  • 指定日まで傷をぬらさない
  • 強くこすらない・かかない
  • 処方された薬を忘れず使う
  • 強い赤みや腫れは早めに連絡

こうした点を守れば、多くの場合は問題なく回復していきます。気になる変化があれば、自己判断せず受診しましょう。

傷あとが落ち着くまでの時間

表面の傷は1〜2週間でふさがりますが、赤みやかたさが完全におさまるまでには数か月かかることもあります。これは体が傷を治していく自然な経過で、少しずつ目立たなくなっていきます。

日焼けは色素沈着の原因になるため、傷あとが落ち着くまでは紫外線対策を心がけると安心です。

再発や気になる症状が出たとき

軟骨をしっかり取り除けていれば、再発はまれです。それでも、もとの場所に小さなふくらみが出てきたり、なかなか赤みが引かなかったりするときは、早めに相談してください。

気になる症状を早く伝えることが、安心につながります。受診をためらう必要はありません。

副耳に伴うことのある難聴や腎臓の検査

副耳が単独でみられる赤ちゃんの多くは、難聴も腎臓の異常も伴いません。基本的な聞こえの確認をしておけば、過度に心配する必要はないと考えられています。

新生児の聞こえの確認

耳の近くにできものがあると、聞こえへの影響を心配される方がいます。実際には、副耳があるからといって難聴が多いとは限らないと報告されています。

日本では生まれてまもなく聞こえの検査を受ける機会があり、副耳の有無にかかわらず確認できます。結果に不安があれば、耳鼻科で詳しく調べてもらえます。

腎臓の超音波検査が必要なケース

かつては、耳のできものがあると腎臓も調べたほうがよいといわれた時期がありました。しかし副耳だけが単独でみられる場合、腎臓の超音波検査をいつも行う必要はないとする研究が重ねられています。

ほかの体の特徴が重なるときや、家族に難聴や腎臓の病気がある場合などには、念のため検査を検討します。

ほかの特徴があるときの相談先

副耳のほかに気になるサインがあるときは、小児科でまとめて相談すると安心です。次のようなときには、追加の確認を提案されることがあります。

気になるサイン検討される確認相談先
顔や手足にほかの変化全身の診察小児科
家族に難聴や腎臓病聞こえ・腎臓の検査小児科・耳鼻科
聞こえへの不安聴力の検査耳鼻科

こうした確認は、あくまで念のためのものです。多くの赤ちゃんは追加の検査なく、すこやかに育っていきます。

よくある質問

Q
副耳は自然になくなることはありますか?
A

副耳は生まれつきの組織なので、自然に消えてなくなることはほとんどありません。大きさが急に変わることも少なく、体の成長とともにゆっくり目立つようになる程度です。

気になる場合は、取るかどうかをあせらず相談していけば大丈夫です。

Q
赤ちゃんの副耳は何歳ごろに切除するのがよいですか?
A

赤ちゃんの副耳は急いで取る必要がなく、全身麻酔に安全に耐えられる年齢まで待つのが一般的です。多くは就学前後を目安に、ご家族と相談しながら時期を決めていきます。

困りごとがなければ、大人になってから取る選択もあります。お子さんの気持ちも大切にしながら考えていきましょう。

Q
副耳の切除手術で軟骨を残すとどうなりますか?
A

芯の軟骨を残したまま表面だけを取ると、あとから小さなふくらみとして再びあらわれることがあります。そのため手術では、皮膚と一緒に軟骨もていねいに取り除きます。

軟骨までしっかり処理できれば、再発はまれで、仕上がりも整いやすくなります。

Q
副耳を糸で縛って取る方法はすすめられますか?
A

糸で縛る方法は手軽に見えますが、感染を起こしたり、根もとの軟骨が残ってふくらみが居座ったりする心配があります。こうした合併症の報告から、いまではすすめられていません。

取るのであれば、軟骨まで確認できる切除のほうが安心です。気になるときは形成外科で相談してみてください。

Q
副耳の手術後に傷あとはどのくらい残りますか?
A

表面の傷は1〜2週間でふさがり、その後は少しずつ目立たなくなっていきます。赤みやかたさが落ち着くまでに数か月かかることもありますが、これは自然な経過です。

顔まわりではしわや輪郭に沿って縫う工夫もされ、傷あとは目立ちにくくなります。日焼け対策を続けると、より安心でしょう。

参考文献