HPVワクチンのキャッチアップ接種は2025年3月末で新規の受付が終了し、1回以上接種済みの方を対象とした経過措置も2026年3月31日に打ち切りとなりました。対象は平成9年度〜平成20年度生まれの女性で、公費で接種できた期間はすでに過ぎています。
この記事では、キャッチアップ接種の背景と対象者の条件、経過措置の詳細、自費接種した場合の償還払い制度、そして無料期間が終わった今後の子宮頸がん予防の選択肢を整理しています。
公費接種の機会を逃してしまった方も、自費での接種や定期検診など引き続きできることがあります。まずはご自身の接種履歴を確認し、必要な行動を検討してみてください。
キャッチアップ接種の無料期間は2025年3月末に終了した
HPVワクチンのキャッチアップ接種を公費(無料)で受けられる期間は、2025年3月31日をもって終了しました。2013年から約9年間にわたった積極的勧奨の差し控えにより接種機会を逃した世代への救済として、2022年4月に制度が始まったものです。
積極的勧奨の差し控えが生んだ「接種空白世代」
HPVワクチンは2013年4月に定期接種に組み込まれましたが、接種後の体の痛みなどがメディアで大きく報じられた影響で、同年6月に厚生労働省が積極的勧奨を差し控える判断を下しました。定期接種そのものは中止されなかったものの、自治体からの個別通知が届かなくなった結果、接種率は70%超からほぼ0%まで急落しています。
この状態が約8年半続いたため、本来なら公費で接種を受けられたはずの多くの女性がワクチンを打てないまま対象年齢を過ぎてしまいました。研究によると、この空白期間に接種機会を逃した世代では、将来の子宮頸がん罹患数が大幅に増加すると推計されています。
2022年4月から始まった3年間のキャッチアップ制度
2021年11月、専門家会議でHPVワクチンの安全性に特段の懸念がないことが改めて確認され、積極的勧奨の差し控えが終了しました。そのうえで、接種機会を逃した世代に公平な機会を確保する目的で、2022年4月から2025年3月末までの3年間に限り「キャッチアップ接種」として無料接種が実施されたのです。
キャッチアップ期間中は、通常の定期接種対象年齢(小学校6年〜高校1年相当)を超えた方でも、お住まいの自治体で公費による接種を受けることができました。
対象だった生まれ年は平成9年度〜19年度
キャッチアップ接種の対象は、平成9年度(1997年4月2日)から平成19年度(2008年4月1日)生まれの女性で、過去にHPVワクチンを合計3回受けていない方でした。この世代は、積極的勧奨差し控えの期間中に定期接種の対象年齢にあたっていた方々にあたります。
| 区分 | 対象の生まれ年 | 期間 |
|---|---|---|
| 定期接種 | 小6〜高1相当の女性 | 通年(毎年度) |
| キャッチアップ | H9〜H19年度生まれ | 2022年4月〜2025年3月 |
| 経過措置 | H9〜H20年度生まれ | 2025年4月〜2026年3月 |
上の表のとおり、キャッチアップ接種と経過措置では対象の生まれ年が異なる点に注意が必要です。経過措置では平成20年度生まれの方も加わっています。
経過措置は2026年3月31日で打ち切り――期限までに完了できたか
キャッチアップ接種期間の終了後に設けられた経過措置の期限は、2026年3月31日でした。この措置は、2025年3月末までに1回以上HPVワクチンを接種していた方に限り、残りの回数分を公費で完了できるようにしたものです。
経過措置で1年間延長された条件
経過措置の対象となるには、2022年4月1日から2025年3月31日までの間にHPVワクチンを少なくとも1回接種していることが条件でした。キャッチアップ期間中に一度も接種していない方は、この延長の対象には含まれていません。
HPVワクチンは原則として3回の接種で完了するため、2回目や3回目が間に合わなかった方への猶予措置という位置づけです。標準的なスケジュールでは接種完了まで約6か月かかるため、駆け込みで1回目を打った方には特に重要な延長でした。
平成20年度生まれも経過措置の対象に追加
キャッチアップ接種の対象は平成19年度生まれまでとされていましたが、経過措置では平成20年度(2008年4月2日〜2009年4月1日)生まれの女性も加わりました。この世代はキャッチアップ期間中に高校1年生の定期接種対象であったものの、期間内に接種を完了できなかった方がいたためです。
期限に間に合わなかったらいくらかかる?
経過措置の期限である2026年3月31日を過ぎてHPVワクチンを接種する場合、費用は全額自己負担となります。9価ワクチン「シルガード9」を3回接種すると、合計でおよそ10万円程度の費用がかかるのが一般的です。
金額は医療機関によって多少異なりますので、接種を検討される方は事前にお問い合わせください。また、加入する健康保険組合によっては費用補助を行っている場合もあるため、そちらの確認も一つの方法でしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 経過措置の期限 | 2026年3月31日 |
| 条件 | 2025年3月末までに1回以上接種済み |
| 対象の生まれ年 | H9〜H20年度生まれの女性 |
| 期限後の費用 | 全額自己負担(約10万円) |
「自分は対象だったのか」と不安な方へ――無料接種の条件を整理
すでに公費接種の期間は過ぎていますが、今からでも自分が対象だったかを確認し、今後の行動を考えることには意味があります。ご自身の生まれ年や接種履歴を照らし合わせてみてください。
キャッチアップ接種と通常の定期接種の違い
通常の定期接種は、小学6年生から高校1年生相当の女性が対象で、毎年度公費により接種を受けられます。一方、キャッチアップ接種は積極的勧奨の差し控えにより機会を逃した世代だけを対象にした時限的な制度でした。
定期接種の対象年齢にある方は、現在も引き続き公費で接種を受けることが可能です。高校1年生相当の方は、その年度の3月31日までが公費接種の最終期限となるため、早めに接種を開始することが大切といえます。
1回でも接種していれば延長の対象だった?
経過措置の適用を受けるには、キャッチアップ期間中(2022年4月〜2025年3月)に最低1回のHPVワクチン接種を済ませている必要がありました。仮に1回しか打っていなくても、残りの2回分を2026年3月末までに公費で接種できたのです。
ただし、キャッチアップ期間中に一度も接種しなかった方は経過措置の対象外となり、2025年4月以降に接種する場合は最初から全額自己負担が発生します。この点は見落としやすいポイントでした。
母子健康手帳で過去の接種履歴を確認する方法
HPVワクチンの接種履歴は、母子健康手帳の予防接種欄に記録されています。接種したワクチンの種類や日付、接種回数を確認できますので、手帳が手元にある方は一度開いて確かめてみてください。
手帳を紛失した場合でも、接種を受けた医療機関や市区町村の予防接種担当課に問い合わせることで履歴を調べられる可能性があります。自治体によって対応が異なるため、まずはお住まいの市区町村に連絡するのが確実です。
HPVワクチン3種類と接種スケジュールの違い
日本で接種可能なHPVワクチンは、2価・4価・9価の3種類です。2023年4月からは9価ワクチン「シルガード9」も定期接種の対象に加わり、選択の幅が広がりました。
2価サーバリックスと4価ガーダシルの特徴
2価ワクチン「サーバリックス」は、子宮頸がんの主な原因であるHPV16型と18型の感染を防ぎます。4価ワクチン「ガーダシル」は16型・18型に加え、尖圭コンジローマの原因となる6型・11型にも対応しています。
いずれも子宮頸がんの原因の50〜70%を予防できるとされ、これまで多くの国で接種されてきた実績のあるワクチンです。日本では2009年にサーバリックス、2011年にガーダシルが承認されました。
9価シルガード9が原因の80〜90%をカバー
9価ワクチン「シルガード9」は、16型と18型に加えて31型・33型・45型・52型・58型のHPVにも対応しており、子宮頸がんの原因の80〜90%を防ぐ効果が期待できます。臨床試験では、対象とするHPV型による高度の子宮頸部異形成に対して約97%の予防効果が確認されました。
15歳未満で1回目を接種した場合は2回で完了できるため、低年齢での接種はスケジュール面でもメリットがあります。15歳以上で開始する場合は、従来どおり3回の接種が必要です。
| ワクチン名 | 対応HPV型 | 予防率 |
|---|---|---|
| サーバリックス(2価) | 16・18型 | 約50〜70% |
| ガーダシル(4価) | 6・11・16・18型 | 約50〜70% |
| シルガード9(9価) | 6・11・16・18・31・33・45・52・58型 | 約80〜90% |
予防率はワクチンが対象とするHPV型が子宮頸がん全体の原因に占める割合を示したものであり、ワクチン自体の有効率とは異なります。どのワクチンを選択するかは、医師と相談のうえ決めていただくのが望ましいでしょう。
標準的な接種間隔と回数の基本
9価ワクチンの標準的なスケジュールでは、初回接種から2か月後に2回目、6か月後に3回目を打つ流れになります。このスケジュールで進めると約6か月で接種が完了します。
やむを得ず間隔が空いてしまった場合でも、接種を最初からやり直す必要はありません。残りの回数を続けて接種すれば完了と見なされるため、中断している方も担当医に相談してみてください。
途中で別のワクチンに切り替えても大丈夫?
原則として、3回の接種は同一のワクチンで行うことが推奨されています。ただし、すでに2価または4価ワクチンで1〜2回接種している方が、医師と相談のうえ残りの回数を9価ワクチンに切り替えることも認められていました。
キャッチアップ接種期間中であれば、切り替えた場合も公費での接種が可能でした。変更による効果やリスクについては、接種する医療機関でご確認ください。
自費で接種していた方が申請できる償還払い制度
積極的勧奨差し控え期間中に、定期接種の対象年齢を過ぎてから自費でHPVワクチンを接種した方には、費用の払い戻し(償還払い)を受けられる制度が用意されています。まだ申請していない方は、お住まいの自治体に早めに確認してください。
償還払いの対象となる接種時期と条件
償還払いの対象は、キャッチアップ接種の対象世代のうち、高校2年生の年度以降から2022年3月31日までに2価ワクチン(サーバリックス)または4価ワクチン(ガーダシル)を自費で接種した方です。9価ワクチン「シルガード9」は償還払いの対象外となっているため注意が必要です。
定期接種を3回完了していない方が条件であり、2022年4月以降にキャッチアップ接種として同じ回数分の接種を受けていないことも必要です。
払い戻しの上限額と申請に必要な書類
各自治体は定めた上限の範囲内で、接種費用の実費を払い戻します。自治体によって上限額は異なりますが、1回あたり14,000〜17,000円程度としているケースが多いようです。接種費用の領収書がない場合は、自治体所定の金額での支給となります。
- 償還払い申請書(各自治体の所定様式)
- 接種記録が確認できる書類(母子手帳、接種済証など)
- 接種費用の領収書または医療機関発行の証明書
- 本人確認書類の写しと振込先口座の情報
上記の書類が揃わない場合でも申請できる場合がありますので、まずは自治体の窓口に問い合わせてみることをおすすめします。
申請期限が過ぎていないか確認を
償還払いの申請受付期間は自治体ごとに異なります。すでに受付を終了している自治体もありますので、対象となりそうな方は速やかにお住まいの市区町村に連絡を取ってください。
申請から支給までは通常2〜3か月程度かかるとされていますが、自治体によって処理期間は前後します。書類の不備があると追加提出を求められる場合もあるため、事前に必要書類を一式そろえてから申請すると手続きがスムーズです。
無料期間終了後でも子宮頸がん予防はあきらめない
公費での接種期間が終わったとしても、子宮頸がんを防ぐための手段がなくなったわけではありません。自費での接種と定期検診の組み合わせが、今後の予防の柱になります。
自費でもHPVワクチン接種は受けられる
キャッチアップ接種や経過措置の対象外であっても、HPVワクチンは自費で接種できます。費用は医療機関により異なりますが、9価ワクチンの場合は3回接種で合計約8〜10万円が目安です。
すでにHPVに感染した型についてはワクチンの予防効果は期待できないものの、まだ感染していない型に対しては予防効果を発揮します。性的活動の有無にかかわらず、年齢とともにさまざまなHPV型に接触する機会が生じるため、未接種の方にとって接種を検討する価値は十分にあるでしょう。
定期的な子宮頸がん検診が命を守る
HPVワクチンは子宮頸がんの原因となるHPV感染を防ぐ「一次予防」ですが、ワクチンだけですべてのHPV型をカバーできるわけではありません。ワクチン接種の有無にかかわらず、20歳以上の女性は2年に1回の子宮頸がん検診を受けることが強く勧められています。
検診ではがんになる前の段階(前がん病変)を発見でき、早期に対処すれば子宮を温存できる可能性も高まります。「ワクチンを打ったから大丈夫」と油断せず、検診を続けることが自分の体を守る確かな方法です。
| 予防の段階 | 具体的な手段 |
|---|---|
| 一次予防 | HPVワクチン接種 |
| 二次予防 | 子宮頸がん検診(20歳以上、2年に1回) |
一次予防と二次予防を組み合わせることで、子宮頸がんによる死亡リスクを大幅に減らすことが可能です。どちらか一方に頼るのではなく、両方を実践していただきたいと考えています。
定期接種世代の保護者に伝えたいこと
現在、小学6年生から高校1年生相当のお子さんは、毎年度の定期接種として公費でHPVワクチンを受けることができます。高校1年生相当の方は、年度末の3月31日が公費接種の期限であり、翌年度以降は自費となってしまいます。
接種にあたっては、ワクチンの効果と副反応について正しい情報を確認したうえで、お子さんと話し合い、かかりつけ医にも相談してみてください。接種後まれに痛みや腫れが出ることがありますが、厚生労働省の専門家会議により安全性は繰り返し確認されています。
- 小学6年生〜高校1年生相当の女性は公費で接種可能
- 15歳未満で接種を開始すれば2回で完了できる場合がある
- 高校1年生の3月31日までが公費接種の期限
よくある質問
- QHPVワクチンのキャッチアップ接種は現在も無料で受けられますか?
- A
キャッチアップ接種の新規受付は2025年3月31日で終了しており、現在は公費(無料)で受けることはできません。2025年3月末までに1回以上接種を済ませた方に限り、経過措置として2026年3月31日まで残りの接種を公費で受けられましたが、その期限もすでに過ぎています。
今後接種を希望される場合は、自費での接種となります。費用は9価ワクチンで3回合計約10万円が目安ですが、医療機関や加入する健康保険組合の補助制度によって異なる可能性がありますので、まずはお近くの医療機関にご相談ください。
- QHPVワクチンのキャッチアップ接種の対象者はどのような方でしたか?
- A
キャッチアップ接種の対象は、平成9年度(1997年4月2日)から平成19年度(2008年4月1日)生まれの女性で、過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない方でした。積極的勧奨が差し控えられていた期間に定期接種の対象年齢にあたっていた世代が該当します。
経過措置では対象がさらに広がり、平成20年度(2008年4月2日〜2009年4月1日)生まれの方も含まれました。ただし経過措置の適用には、2022年4月から2025年3月末の間に1回以上接種を済ませていることが条件でした。
- QHPVワクチンを自費で接種した場合に費用を取り戻す方法はありますか?
- A
積極的勧奨差し控え期間中に、定期接種の対象年齢を超えてから自費で2価または4価のHPVワクチンを接種した方には、自治体による償還払い(払い戻し)制度が用意されています。申請に必要な書類は自治体ごとに異なりますが、申請書・接種記録・領収書・本人確認書類などが一般的です。
ただし、9価ワクチン(シルガード9)は償還払いの対象外とされている自治体がほとんどです。また、申請の受付期間が終了している場合もあるため、対象となりそうな方はできるだけ早くお住まいの市区町村に確認していただくことをおすすめします。
- QHPVワクチンの接種後に報告されている副反応にはどのようなものがありますか?
- A
HPVワクチン接種後に見られる主な副反応としては、注射部位の痛みや腫れ、発熱などが報告されています。また、注射時の痛みや緊張をきっかけに一時的な失神や立ちくらみが生じることがまれにあるため、接種後30分程度は医療機関内で安静にしていることが推奨されています。
頻度はごくまれですが、重い副反応としてアナフィラキシーや急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などの報告もあります。厚生労働省の専門家会議では、ワクチン接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると評価されていますが、気になる症状が出た場合は速やかに接種を受けた医療機関に相談してください。
- QHPVワクチンを接種しても子宮頸がん検診は必要ですか?
- A
HPVワクチンを接種した場合でも、子宮頸がん検診を定期的に受けることは欠かせません。9価ワクチンでも子宮頸がんの原因となるHPV型のすべてをカバーしているわけではなく、ワクチンが対応していない型による発がんリスクは依然として残ります。
日本では20歳以上の女性を対象に、2年に1回の子宮頸がん検診が推奨されています。検診によって前がん段階の病変を早期に発見し治療すれば、がんへの進行を食い止めることができます。ワクチンによる一次予防と、検診による二次予防の両方を組み合わせることで、子宮頸がんのリスクを最小限に抑えられるでしょう。
