子宮頸がんを予防するHPVワクチンには、4つのHPV型に対応するガーダシル(4価)と、9つの型をカバーするシルガード9(9価)があり、予防できる子宮頸がんの割合は約70%から約90%へと大きく向上しました。

現在、世界的にガーダシルからシルガード9への移行が進んでおり、日本でもシルガード9が定期接種に採用されています。すでにガーダシルを接種した方でも、シルガード9の追加接種が可能です。

この記事では、両ワクチンの対応HPV型・予防率・接種スケジュール・副反応の違いを比較し、ご自身やご家族の接種選択に役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

シルガード9とガーダシルではカバーするHPV型の数が違う

もっとも大きな違いは、ワクチンが対応するHPV(ヒトパピローマウイルス)の型数です。ガーダシルが4つの型を対象とするのに対して、シルガード9は9つの型をカバーし、子宮頸がんの原因となるハイリスク型をより広範に防ぎます。

項目ガーダシル(4価)シルガード9(9価)
対応HPV型6, 11, 16, 186, 11, 16, 18, 31, 33, 45, 52, 58
子宮頸がん予防率約65〜70%約90%

ガーダシル(4価)が防ぐHPV6・11・16・18型

ガーダシルは、子宮頸がんの主な原因であるHPV16型と18型に加え、尖圭コンジローマ(性器いぼ)の原因となるHPV6型と11型の計4つの型を対象としたワクチンです。HPV16型と18型は子宮頸がん全体の約65〜70%に関与しており、4価ワクチンはこれらの型による感染を高い確率で予防します。

2006年に世界で初めて承認されて以降、多くの国の定期接種プログラムに組み込まれ、子宮頸がんの前がん病変の発生率を減少させた実績があります。HPV6型と11型は発がん性こそ低いものの、尖圭コンジローマの原因の約90%を占めるため、生活の質を守るうえでも予防する意義は大きいといえます。

シルガード9(9価)はさらに5つのハイリスク型を追加

シルガード9は、ガーダシルの4つの型に加えて、HPV31・33・45・52・58型の5つの発がん性が高い型をカバーします。この5つの型は、子宮頸がんのうち約15〜20%の原因とされているため、合計9つの型に対応することで予防率が飛躍的に広がりました。

東アジアではHPV52型や58型の感染頻度が比較的高い傾向があり、日本の女性にとって9価ワクチンの恩恵は特に大きいといえるでしょう。

対応HPV型の違いが子宮頸がん予防率を左右する

子宮頸がんの原因となるHPV型は10種類以上存在しますが、ワクチンがカバーする型の数が増えるほど、予防できるがんの範囲も広くなります。ガーダシルでは全体の約70%をカバーしていたのに対し、シルガード9は約90%のカバー率を達成しています。

残りの約10%は、ワクチンの対象外となるHPV型が原因です。そのため、ワクチン接種後も定期的な子宮頸がん検診を受けることが大切であり、ワクチン接種と検診の両方を活用して子宮頸がんの予防に取り組むことが大切です。

子宮頸がん予防率は約70%から約90%へ向上した

ガーダシルの約70%からシルガード9の約90%へ、子宮頸がんの予防率はおよそ20ポイント上昇しました。この数字の裏付けとなる臨床データと、接種年齢による効果の違いを整理します。

比較項目ガーダシル(4価)シルガード9(9価)
子宮頸がん予防率約65〜70%約90%
追加5型の有効率対象外96.7%
効果の持続期間長期持続を確認12年以上持続を確認

ガーダシル4価で約70%を予防できた背景

HPV16型と18型は世界的に子宮頸がんの主要原因であり、ガーダシルはこの2つの型による高度異形成(CIN2以上の前がん病変)をほぼ100%近く予防することが臨床試験で確認されました。全HPV型を含めた子宮頸がん全体でみると、ガーダシルによる予防率は約65〜70%と推定されています。

この数値は、HPV16型・18型以外の発がん性HPV型による子宮頸がんまでは防ぎきれないことを示しています。

シルガード9で予防率が約90%に達する根拠

シルガード9が新たに追加した5つの型(HPV31・33・45・52・58型)は、HPV16・18型を除いた子宮頸がんの原因のなかで上位を占めます。9つの型をすべて合わせると、子宮頸がん全体の約90%を引き起こすHPV型に対応できる計算です。

大規模な国際共同臨床試験でも、シルガード9は追加5型に関連する高度子宮頸部異形成の発生を96.7%低減させたと報告されています。

臨床試験が示した高い有効率

16〜26歳の女性約14,000人を対象にした二重盲検無作為化比較試験では、シルガード9はHPV31・33・45・52・58型による高度病変に対して96.7%の有効率を達成しました。さらに、HPV6・11・16・18型に対する免疫応答はガーダシルと同等であることも確認されています。

追跡調査で確認された効果の持続

6年間の追跡調査でも、ワクチンの有効性は持続していました。北欧諸国では12年間のフォローアップでも、ワクチンで防げるHPV型による高度異形成の発生率が90%以上低いままだったと報告されています。

接種年齢が早いほど予防効果が高まる

HPVワクチンは、HPVに感染する前の段階で接種するのが理想的です。性的接触によるHPV感染が起こる前の年代で接種を完了すると、ワクチンの有効率を最大限に引き出せます。

スウェーデンの大規模コホート研究では、17歳未満で接種した女性の子宮頸がんリスクが81%低下したのに対し、17〜30歳で接種した場合のリスク低下は36%にとどまりました。早期接種の優位性を示す結果です。

4価から9価への移行が世界中で進んでいる

2014年にシルガード9が米国で承認されたことを皮切りに、多くの国がガーダシルからシルガード9への切り替えを実施しました。日本も2023年4月からシルガード9を定期接種ワクチンに採用しています。

各国が9価ワクチンへ切り替えた背景

米国では2016年以降、HPVワクチンの定期接種プログラムをシルガード9に一本化しました。オーストラリアやカナダ、欧州各国も順次9価への移行を進めています。

  • 米国:2016年にガーダシルの供給を終了し、シルガード9へ完全移行
  • オーストラリア:2018年に学校接種プログラムをシルガード9へ変更
  • EU諸国:各国の判断で順次シルガード9を導入中

移行の主な理由は、9価ワクチンのほうが予防できる子宮頸がんの範囲が広く、費用対効果でも4価と同等以上であると複数のモデル研究で示されたためです。米国のシミュレーション研究では、4価から9価への切り替えにより、子宮頸がんの発症件数をさらに減少させられると推計されました。

日本でのシルガード9の定期接種化

日本では2021年2月にシルガード9が薬事承認を受け、2023年4月から定期接種の対象ワクチンに加わりました。定期接種の対象は小学6年生から高校1年生相当の女子で、公費で接種を受けられます。

積極的勧奨の差し控え期間に接種の機会を逃した方を対象に、キャッチアップ接種の制度も設けられています。この制度により、接種を希望する幅広い年齢層の方がシルガード9を選択できるようになりました。

4価接種済みでも9価の追加接種は可能

ガーダシル(4価)をすでに接種した方が、あらためてシルガード9を接種することは医学的に問題ありません。臨床試験では、4価ワクチン接種後に9価を追加接種した場合でも、新たにカバーされる5つのHPV型に対して十分な免疫応答が得られたことが確認されています。

ただし、4価接種で対応済みの4つの型についてはすでに免疫が形成されているため、追加接種による上乗せ効果は限定的です。追加の5型をカバーしたいかどうかが、判断のポイントになるでしょう。

接種スケジュールと対象年齢はどう違う?

接種回数は年齢によって2回または3回に分かれ、ガーダシルとシルガード9で大きな差はありません。ただし、初回接種の年齢が15歳未満かどうかで回数が変わる点に注意が必要です。

基本は2回または3回接種

シルガード9もガーダシルも、ワクチンの効果を十分に得るためには複数回の接種を受ける必要があります。1回接種では長期的な免疫の維持が難しいため、定められたスケジュールに沿って接種を完了することが重要です。

項目15歳未満で開始15歳以上で開始
接種回数2回3回
接種間隔初回と6か月後初回・2か月後・6か月後

年齢によって接種回数が変わる理由

15歳未満の若年者は、免疫応答が大人よりも強い傾向にあります。臨床試験のデータから、15歳未満で2回接種した場合でも、15歳以上で3回接種した場合と同等の抗体価が得られることが示されました。

この結果をもとに、WHOをはじめ多くの国の保健機関が、15歳未満の接種者には2回接種を推奨するようになっています。

キャッチアップ接種で見落としがちな注意点

日本のキャッチアップ接種制度では、積極的勧奨の差し控え期間に接種機会を逃した方を対象に、公費でHPVワクチンを接種できます。対象となる年齢や期限は制度によって定められていますので、お住まいの自治体の公式サイトで現在の情報を確認してください。

キャッチアップ接種の場合、途中でワクチンの種類を変更するケースも考えられますが、原則として同じ種類のワクチンでスケジュールを完了するのが望ましいでしょう。やむを得ず種類を変える場合は、接種医に相談しましょう。接種間隔が開きすぎた場合でも、最初からやり直す必要はなく、残りの回数を接種すれば問題ありません。

副反応の種類と頻度を比較する

シルガード9とガーダシルの副反応プロファイルは大きく異なりません。どちらも注射部位の痛みや腫れが主な症状であり、重篤な副反応の報告頻度は低い水準です。

接種部位の痛み・腫れはどちらにも起こりやすい

HPVワクチンの副反応として多いのは、注射部位の痛み・腫れ・発赤です。これらの症状は接種後数日以内に治まることがほとんどで、日常生活に大きな支障をきたすことは少ないでしょう。

全身性の副反応としては、頭痛・発熱・倦怠感などが報告されていますが、いずれも一過性であり、数日で回復するケースが大半を占めます。

シルガード9で局所反応がやや増える傾向

シルガード9はガーダシルに比べて、ウイルス様粒子(VLP)の種類が多いぶん、注射部位の腫れや痛みがわずかに多く見られる傾向があります。7つの第3相臨床試験を統合した安全性解析でも、シルガード9の注射部位反応率はガーダシルよりやや高い結果でした。

副反応ガーダシルシルガード9
注射部位の痛み約84%約90%
注射部位の腫れ約29%約40%
発熱(37.8℃以上)約4%約5%

ただし、重篤な副反応の発生率には両ワクチンで有意差がなく、全体的な安全性は同等と評価されています。

大規模臨床試験で確認された長期安全性

シルガード9の安全性は、合計3万人以上が参加した複数の国際共同臨床試験で検証されています。新たに重篤な安全性の懸念は見つかっておらず、ワクチンの忍容性は良好です。10年以上のフォローアップデータでも、遅発性の重篤な副反応は確認されていません。

世界保健機関(WHO)のワクチン安全性に関する諮問委員会も、HPVワクチンのリスクと利益のバランスは良好であると繰り返し見解を発表しています。接種を検討している方は、かかりつけ医にご自身の体質やアレルギーの有無を相談したうえで判断することをおすすめします。

HPVワクチン接種後も子宮頸がん検診を続けるべき理由

シルガード9を接種しても、子宮頸がんのリスクを完全にゼロにすることは難しいため、定期的な検診との併用が予防効果を最大化する鍵となります。

ワクチンだけでは防げないHPV型も存在する

シルガード9は子宮頸がんの約90%に関わるHPV型をカバーしますが、残りの約10%は対象外の型が原因です。まれに、ワクチンの対象型であっても、接種前にすでに感染が成立していた場合には予防効果が十分に得られないことがあります。

検診によって初期病変を早期に見つけられる

子宮頸がん検診(子宮頸部細胞診)を定期的に受けることで、前がん状態の異形成を早い段階で発見できます。異形成の段階で対処すれば、がんへの進行を食い止められる可能性が高まります。

日本では20歳以上の女性に対し、2年に1回の子宮頸がん検診が推奨されています。ワクチンを接種した方も、この推奨を守ることが大切です。検診で見つかる異形成は、適切に管理すればがんへ進行する前に治療できるケースがほとんどです。

ワクチンと検診の組み合わせが予防効果を高める

ワクチンが「感染を防ぐ一次予防」であるのに対し、検診は「がんの早期発見を目指す二次予防」です。この両方を組み合わせることで、子宮頸がんの発症と死亡のリスクを大幅に引き下げることが期待されています。

  • 一次予防(ワクチン接種):HPV感染そのものを防ぐ
  • 二次予防(定期検診):ワクチンで防ぎきれなかった感染による異常を早期に発見する

WHOも子宮頸がんの撲滅戦略として、ワクチン接種の普及と検診体制の整備を両輪で進める方針を示しています。ご自身の健康を守るために、ワクチンと検診の両方を積極的に活用してください。

よくある質問

Q
シルガード9とガーダシルのどちらを接種すべきですか?
A

現在、日本の定期接種ではシルガード9(9価)が主に使用されています。シルガード9はガーダシル(4価)よりも多くのHPV型をカバーし、子宮頸がんの予防率が約90%と高いため、新規に接種を開始する方にはシルガード9が選ばれることが一般的です。

どちらのワクチンもHPV16型・18型に対する予防効果は同等であり、安全性にも大きな差はありません。接種を検討される際は、対象年齢やスケジュールについてかかりつけ医にご相談ください。

Q
ガーダシル(4価)を接種済みの場合にシルガード9の追加接種はできますか?
A

ガーダシルの接種が完了している方でも、シルガード9をあらためて接種することは可能です。臨床試験では、4価接種後に9価を追加した方にも、新たに追加された5つのHPV型に対して十分な免疫応答が確認されています。

追加接種によって新たにHPV31・33・45・52・58型への防御が期待できます。ただし、追加接種は定期接種の対象とならない場合がありますので、費用負担について事前に医療機関へ確認することをおすすめします。

Q
シルガード9で子宮頸がんを完全に予防できますか?
A

シルガード9は子宮頸がんの原因となるHPV型の約90%をカバーしますが、すべての型を対象としているわけではありません。残りの約10%はワクチンの対象外のHPV型によるものです。

そのため、ワクチン接種を受けた方であっても、20歳以降は定期的な子宮頸がん検診を受けることが大切です。ワクチンと検診を組み合わせることで、予防効果をより高めることができます。

Q
HPVワクチンは男性にも接種する意味がありますか?
A

HPVは子宮頸がんだけでなく、中咽頭がんや肛門がん、尖圭コンジローマなど、男性にも関わる疾患の原因となります。男性がHPVワクチンを接種することで、本人の疾患予防に加えて、パートナーへのHPV感染を減らす集団免疫効果も期待できます。

海外では男女を問わずHPVワクチンの定期接種を実施している国が増えており、日本でも男性への接種について議論が進んでいます。ガーダシルは日本国内で男性への適応が承認されています。

Q
シルガード9はガーダシルよりも副反応が強いですか?
A

シルガード9はガーダシルに比べて含まれるウイルス様粒子の種類が多いため、注射部位の腫れや痛みがわずかに多い傾向が報告されています。ただし、全身性の副反応や重篤な有害事象の発生率は両ワクチンでほぼ同等であり、全体としての安全性に大きな差はありません。

注射部位の症状は通常、数日以内に自然に治まります。体質やアレルギーに不安がある場合は、接種前にかかりつけ医へご相談ください。

参考文献