男性がHPVワクチンを接種する場合、原則として全額自費となり、3回接種の総額はおよそ5万円から10万円が相場です。ワクチンの種類や医療機関ごとの価格設定によって差が生じるため、事前の確認が欠かせません。

一方で、2020年代に入り、東京都や一部の自治体では男性を対象とした接種費用の助成制度を設ける動きが広がりつつあります。対象年齢や助成額は自治体によって異なるため、お住まいの地域の制度を確認することが費用を抑えるうえで大切です。

この記事では、男性のHPVワクチン接種にかかる具体的な費用の内訳、自治体ごとの補助制度の現状、さらに費用負担を少しでも軽くするための方法を整理してお伝えします。

目次
  1. 男性のHPVワクチンが全額自費になる理由と費用の仕組み
    1. 定期接種と任意接種で変わるHPVワクチンの費用負担
    2. HPVワクチンの種類ごとに異なる価格帯
    3. 1回あたりではなく「総額」で見積もることが大切
  2. 自治体の助成金制度を活用して男性のHPVワクチン費用を抑える方法
    1. 東京都が先行する男性向けHPVワクチン助成の動き
    2. 東京都以外の自治体でも広がる助成の輪
    3. 助成金の申請で注意すべきポイント
  3. 男性がHPVワクチンを接種するメリットは費用に見合うのか
    1. 尖圭コンジローマや肛門がんの予防に有効な臨床データ
    2. パートナーへの感染リスクを低減する間接的な効果
    3. 費用対効果をどう判断するか
  4. HPVワクチンの接種スケジュールと費用が発生するタイミング
    1. 3回接種の具体的なスケジュール
    2. 接種間隔がずれた場合の費用面での影響
    3. 医療機関を選ぶときに確認したい費用項目
  5. なぜ男性のHPVワクチンは定期接種化されていないのか
    1. 厚生労働省の審議と定期接種化への課題
    2. 海外では男女ともに公費接種が当たり前になりつつある
    3. 「女性だけが対象」という誤解が接種を遅らせている
  6. 費用を少しでも抑えたい男性が取れる具体的な対策
    1. 複数の医療機関で料金を比較する
    2. 医療費控除を活用する
    3. 職場の福利厚生や健康保険組合の補助を確認する
  7. よくある質問

男性のHPVワクチンが全額自費になる理由と費用の仕組み

男性のHPVワクチン接種は現時点で定期接種の対象外であり、費用は原則として自己負担です。女性の場合は定期接種として公費で賄われる年齢帯がありますが、男性にはその枠組みが適用されていないことが大きな違いといえます。

定期接種と任意接種で変わるHPVワクチンの費用負担

日本の予防接種法では、HPVワクチンは女性の定期接種に位置づけられています。小学6年生から高校1年生相当の女性は原則無料で接種を受けられますが、男性はこの対象に含まれていません。そのため男性が接種を希望する場合、医療機関の窓口で全額を支払う「任意接種」という扱いになります。

任意接種では、ワクチンそのものの薬剤費に加えて、診察料や接種手技料が上乗せされるのが一般的です。医療機関ごとに価格を自由に設定できるため、同じワクチンでも施設によって1回あたり数千円の差が出ることも珍しくありません。泌尿器科や皮膚科だけでなく、内科やトラベルクリニックなど幅広い診療科で接種を受けられる場合があるので、選択肢を広くもつことが費用の節約につながります。

HPVワクチンの種類ごとに異なる価格帯

現在、日本国内で使用されているHPVワクチンには2価・4価・9価の3種類があります。男性への適応が承認されているのは4価(ガーダシル)と9価(シルガード9)で、それぞれ対象となるHPV型の数が異なります。

ワクチンの種類1回あたりの目安3回接種の合計目安
4価(ガーダシル)約16,000〜20,000円約50,000〜60,000円
9価(シルガード9)約25,000〜35,000円約80,000〜100,000円

9価ワクチンは対象となるウイルス型が多い分、1回あたりの費用も高くなります。ただし、より幅広い型に対する予防効果が期待できるため、総合的なコストパフォーマンスを考慮して選択する方も増えています。

1回あたりではなく「総額」で見積もることが大切

HPVワクチンは原則3回の接種で完了するスケジュールが組まれています。1回目の費用だけで判断してしまうと、最終的な出費が予想を大きく上回ることになりかねません。初診料や再診料、消費税の扱いも施設ごとに異なります。

また、2回目・3回目を別の医療機関で受ける場合、改めて初診料がかかることがあります。接種を始める前に、3回分の総額と追加費用の有無を確認しておくと安心でしょう。

自治体の助成金制度を活用して男性のHPVワクチン費用を抑える方法

近年、男性のHPV接種を対象とする助成制度を設ける自治体が少しずつ増えており、条件を満たせば費用の一部または全額を公費で賄える可能性があります。助成の有無は地域差が大きいため、まずはお住まいの市区町村に問い合わせるのが確実です。

東京都が先行する男性向けHPVワクチン助成の動き

東京都の一部の区では、男性に対するHPVワクチン接種費用の助成を開始しています。中野区や品川区などが先行事例として知られており、対象年齢の男性であれば無料または大幅な減額で接種を受けられるケースがあります。

助成額は自治体によって全額補助から一部補助まで幅があり、対象年齢も「小学6年生から高校1年生相当」に限定している場合が多い傾向です。申請方法や接種できる医療機関にも指定があるため、各自治体の公式サイトを確認してから動くのが望ましいでしょう。

東京都以外の自治体でも広がる助成の輪

東京都だけでなく、北海道の旭川市や青森県平川市など、地方自治体でも男性へのHPVワクチン助成に踏み切る動きが見られます。男性の接種を公費で支える自治体は2024年から2025年にかけて増加傾向にあり、今後もこの流れは続くと考えられます。

ただし、制度の詳細は自治体ごとに異なるため、助成開始の時期、対象年齢、接種回数の上限などを個別に確認する手間は避けられません。転居のタイミングによって助成を受けられなくなるケースもあるため、早めの情報収集をお勧めします。

助成金の申請で注意すべきポイント

助成を受けるには、多くの場合、事前に申請書の提出や予診票の取得が求められます。指定された医療機関以外で接種すると助成が適用されないこともあるため、事前に窓口や公式ウェブサイトで手順を確認しておくことが大切です。

  • 住民票がある自治体に助成制度があるか確認する
  • 対象年齢・対象ワクチンの種類を把握する
  • 指定医療機関の一覧を入手する
  • 申請期限や必要書類を事前に整理する

こうした準備をしておくことで、助成の適用漏れを防ぎ、費用を最小限に抑えることができます。

男性がHPVワクチンを接種するメリットは費用に見合うのか

数万円から10万円近い費用に見合う効果があるかどうかは、男性にとって当然の疑問です。結論として、HPVワクチンは尖圭コンジローマ(性器にできるイボ)や肛門がん、中咽頭がんといった男性特有のリスクを大幅に下げることが国際的な臨床研究で示されています。

尖圭コンジローマや肛門がんの予防に有効な臨床データ

16〜26歳の男性4,065人を対象にした国際的な無作為化比較試験では、4価HPVワクチンが性器の外性器病変を約90%の有効率で予防したと報告されています。肛門部の前がん病変に対しても高い有効率が確認されており、単なる感染予防にとどまらず、がんの前段階を防ぐ効果が実証されています。

男性のHPV感染は無症状のまま長期間持続するケースが少なくないため、発症してから治療するよりも、ワクチンによる予防のほうが身体的・経済的な負担を抑えやすいといえます。尖圭コンジローマの治療は複数回の通院を要する場合が多く、再発率も高いため、事前の予防が特に有効な疾患です。

パートナーへの感染リスクを低減する間接的な効果

HPVは性的接触によって感染するため、男性がワクチンを接種することでパートナーへの感染伝播を減らす効果が期待できます。女性の子宮頸がん予防の観点からも、男女ともに接種率を高める「性別を問わないワクチン接種」の意義は国際的に認められつつあるところです。

予防が期待される疾患男性への関連
尖圭コンジローマHPV6型・11型が主な原因
肛門がんHPV16型が高リスク因子
中咽頭がん近年、男性の罹患率が上昇傾向
陰茎がん発生頻度は低いがHPV関連

これらの疾患を未然に防ぐ手段として、HPVワクチンの費用を「将来の治療費や心身の負担を先回りして抑える投資」と捉える考え方も広がっています。

費用対効果をどう判断するか

海外の医療経済研究では、男性へのHPVワクチン接種が一定の費用対効果をもつことが複数のモデル分析で示されています。ワクチンの価格や接種率、女性の接種カバー率といった条件によって結果は変動しますが、男性を対象に加えることで集団全体のHPV関連疾患が減少するという点では多くの研究が一致しています。

HPVワクチンの接種スケジュールと費用が発生するタイミング

HPVワクチンは3回に分けて接種するのが標準的なスケジュールであり、費用もその都度発生します。接種間隔を正しく守ることが免疫を十分に獲得するうえで大切です。

3回接種の具体的なスケジュール

4価ワクチン(ガーダシル)の場合、初回接種から2か月後に2回目、初回から6か月後に3回目を接種します。9価ワクチン(シルガード9)も基本的には同じ間隔で進みますが、接種開始時の年齢によっては2回接種で完了する場合もあります。

なお、2回接種が認められるのは9歳以上15歳未満で接種を開始した場合に限られ、15歳以上で初回接種を受ける男性は原則として3回接種が必要です。

接種間隔がずれた場合の費用面での影響

仕事やスケジュールの都合で接種間隔が予定より空いてしまうことは珍しくありません。間隔が多少延びても、最初からやり直す必要はないとされています。ただし、長期間中断すると追加の診察が必要になったり、改めて初診料がかかる場合があるため、できるだけ計画通りに進めるのが経済的です。

医療機関を選ぶときに確認したい費用項目

接種を受ける医療機関を選ぶ際には、単にワクチンの薬剤費だけでなく、診察料・接種手技料・税込み表示の有無もあわせて確認してください。ホームページに料金を明記しているクリニックも増えていますが、記載がない場合は電話で事前に問い合わせると安心です。

確認項目チェック内容
ワクチン薬剤費4価か9価か、1回あたりの価格
診察料初診料・再診料の有無
税込み表示消費税が含まれているか

なぜ男性のHPVワクチンは定期接種化されていないのか

多くの方が疑問に感じるのが、「女性は無料なのに、なぜ男性は全額自費なのか」という点でしょう。背景には、費用対効果に関する議論や、女性の接種率との兼ね合いといった複数の要因が絡んでいます。

厚生労働省の審議と定期接種化への課題

厚生労働省の審議会では、男性へのHPVワクチン定期接種化について継続的な検討が行われています。しかし、公費負担の拡大には財源の確保やワクチン供給量の安定といったハードルがあり、結論には至っていません。

また、日本では一時期HPVワクチンの積極的勧奨が差し控えられていた経緯があり、まずは女性の接種率の回復を優先する方針が取られてきました。男性への拡大は、女性の接種が安定した段階で改めて議論される見通しです。

海外では男女ともに公費接種が当たり前になりつつある

オーストラリア、アメリカ、カナダ、イギリスなどでは、すでに男女ともにHPVワクチンの公費接種が導入されています。オーストラリアは2013年に世界で初めて男子への定期接種を開始し、HPV関連疾患の減少に大きな成果を挙げたことで知られています。

日本でも国際的な動向や国内での男性のHPV関連疾患の増加を踏まえ、定期接種化の議論が加速する可能性があります。とはいえ、制度の変更を待つあいだにも感染のリスクは存在するため、現状で接種を検討すること自体に意味があるでしょう。

「女性だけが対象」という誤解が接種を遅らせている

HPVワクチンは子宮頸がん予防のイメージが強いため、「男性には関係ないもの」と考える方が少なくありません。しかし実際には、HPVは男女を問わず感染し、男性にもがんやコンジローマを引き起こします。

知識不足が接種をためらう大きな要因であることは、国際的な調査でも繰り返し指摘されています。HPVに関する正しい知識を得ることが、自分自身とパートナーの健康を守る第一歩です。医療者からの推奨がワクチン接種の決断に大きく影響するとの報告もあり、かかりつけ医に相談してみることが行動を起こすきっかけになるかもしれません。

費用を少しでも抑えたい男性が取れる具体的な対策

自治体の助成制度以外にも、HPVワクチンの費用負担を軽減する方法はいくつかあります。複数の手段を組み合わせることで、実質的な自己負担額を減らすことが可能です。

複数の医療機関で料金を比較する

任意接種は自由診療に該当するため、同じワクチンでも医療機関によって価格差が生じます。都市部のクリニックでは競争原理が働き、比較的リーズナブルな料金設定をしている施設も見つかるかもしれません。インターネットでの料金公開が増えているため、複数の施設を比べてから予約すると効率的です。なかには3回セット料金を設定して割安にしている医療機関もあるため、1回あたりの単価だけでなくセット割引の有無も確認してみてください。

医療費控除を活用する

HPVワクチンの接種費用は、確定申告の際に医療費控除の対象となる場合があります。年間の医療費が一定額を超えた場合に所得税の一部が還付される仕組みで、ワクチン費用もその合算に含めることができます。

控除を受けるには領収書の保管が必要です。接種後に受け取る領収書は、年末まで大切に保管してください。

職場の福利厚生や健康保険組合の補助を確認する

一部の企業や健康保険組合では、従業員の予防接種に対して補助金を出している場合があります。HPVワクチンが対象に含まれるかどうかは組合ごとに異なりますが、確認してみる価値はあるでしょう。勤務先の総務や人事に問い合わせてみることをお勧めします。

  • 自治体の助成制度の有無を確認する
  • 複数の医療機関で見積もりを取る
  • 確定申告の医療費控除を活用する
  • 勤務先の福利厚生・健康保険組合の補助を調べる

これらの方法を組み合わせれば、実質的な負担を数万円単位で軽減できる可能性があります。

よくある質問

Q
男性のHPVワクチンは1回あたりいくらかかりますか?
A

男性が接種できるHPVワクチンの費用は、4価ワクチン(ガーダシル)で1回あたり約16,000〜20,000円、9価ワクチン(シルガード9)で約25,000〜35,000円が目安です。医療機関によって価格が異なるため、事前に確認してから予約されることをお勧めします。

これに初診料や接種手技料が加わるケースもあるため、ワクチン代だけでなく総額を把握しておくことが大切です。3回接種で完了するため、トータルでは4価で約5〜6万円、9価で約8〜10万円程度になることが多いでしょう。

Q
男性のHPVワクチン接種に助成金を出している自治体はどこですか?
A

東京都の中野区や品川区など一部の区が、男性へのHPVワクチン接種費用の助成を開始しています。また、北海道旭川市や青森県平川市など、東京都以外でも助成制度を導入する自治体が徐々に増えています。

対象年齢や助成額は自治体によって異なり、制度の新設や変更も相次いでいます。お住まいの地域に制度があるかどうかは、市区町村の公式サイトや保健センターへの問い合わせで確認できます。

Q
HPVワクチンは男性にどのような効果がありますか?
A

HPVワクチンは男性において、尖圭コンジローマ(性器のイボ)、肛門部の前がん病変、さらにHPVが原因となる肛門がんや中咽頭がんなどのリスクを下げる効果が報告されています。国際的な臨床試験では、4価HPVワクチンの男性における外性器病変への有効率が約90%と高い数値を示しました。

加えて、男性が接種することでパートナーへのHPV感染伝播を減らす間接的な効果も期待できます。男女ともに接種率が高まることで、社会全体としてHPV関連疾患が減少していくと考えられています。

Q
HPVワクチンの費用は医療費控除の対象になりますか?
A

HPVワクチンの接種費用は、確定申告の際に医療費控除として申告できる場合があります。年間の医療費合計が10万円(または総所得金額の5%)を超えると、超過分に対して所得税の一部が還付される仕組みです。

控除の申告には接種時の領収書が必要となりますので、忘れずに保管してください。ご自身の所得状況や他の医療費との合算によって還付額は変わるため、詳細は税務署や税理士にご相談いただくのが確実です。

Q
男性のHPVワクチンは何歳までに接種するのが望ましいですか?
A

HPVワクチンは、性的接触が始まる前に接種するのが最も効果的とされています。感染前の段階で免疫を獲得することで、高い予防効果が得られるためです。国際的な推奨では9〜12歳ごろの接種開始が理想とされますが、この年齢を過ぎていても接種のメリットは十分にあります。

日本では26歳までの男性を対象にワクチンの適応が認められているケースが多く、自治体の助成対象も主に10代が中心です。接種を迷っている間にも感染する可能性はあるため、検討されている方はできるだけ早めに医療機関へご相談ください。

参考文献