男性のHPVワクチンは、皮膚科または泌尿器科で接種を受けられます。どちらの診療科でもワクチンの取り扱いがあれば対応してもらえるため、まずは身近な医療機関に問い合わせてみることが第一歩です。

HPV(ヒトパピローマウイルス)は女性だけの問題と思われがちですが、男性も尖圭コンジローマや一部のがんの原因になります。予防のためにワクチン接種を検討する男性が増えている一方で、「何科に行けばいいのかわからない」という声は少なくありません。

この記事では、男性がHPVワクチンを受けられる診療科の選び方から、予約・受診・接種当日の流れ、費用や助成制度の情報までを、わかりやすくお伝えします。

男性のHPVワクチンは皮膚科・泌尿器科のどちらでも接種できる

結論から言えば、HPVワクチンの取り扱いがある医療機関であれば、皮膚科でも泌尿器科でも男性は接種を受けられます。診療科の名称よりも、その医療機関がワクチンを常備しているかどうかが判断のカギになるでしょう。

皮膚科でHPVワクチンを受けられる背景

HPVが引き起こす代表的な皮膚疾患に、尖圭コンジローマ(性器や肛門周囲にできるいぼ)があります。皮膚科はこうしたいぼの診断・治療を日常的に行っており、HPV関連の疾患に精通した医師が多い診療科です。そのため予防としてのワクチン接種にも積極的に対応している施設が見られます。

とくに性器周辺のいぼや皮膚トラブルを過去に経験したことがある方は、その延長線上で皮膚科に相談するのが自然な流れといえます。受診のハードルが比較的低い点も、皮膚科を選ぶ利点の一つです。

泌尿器科が男性のHPVワクチン接種に向いている理由

泌尿器科は男性の生殖器や泌尿器を専門的に扱う診療科で、陰茎がんや尖圭コンジローマの診療経験が豊富です。HPV関連疾患について男性特有の視点からアドバイスを受けやすい環境が整っています。

性感染症の検査や治療のついでにワクチンの相談ができるのも、泌尿器科ならではのメリットでしょう。男性の患者が中心なので、待合室での気まずさを感じにくいという声もあります。

内科やかかりつけ医が対応しているケースもある

皮膚科や泌尿器科だけでなく、内科や小児科、婦人科と併設されたクリニックでもHPVワクチンを扱っている場合があります。かかりつけ医であれば持病やアレルギーの情報を把握してくれているため、安心して接種を任せられるでしょう。

診療科特徴こんな方に向いている
皮膚科いぼ・皮膚疾患に精通性器いぼの経験がある方
泌尿器科男性器の専門診療性感染症の検査も受けたい方
内科等総合的な健康管理かかりつけ医がいる方

診療科を選ぶ前に確認しておきたいこと

どの診療科を選ぶにしても、事前にワクチンの在庫があるか、男性への接種実績があるかを電話やウェブサイトで確認してください。HPVワクチンは取り寄せに数日かかることもあるため、予約時に「男性のHPVワクチン希望」と伝えておくとスムーズです。

また、3回の接種をすべて同じ医療機関で完了させるのが望ましいとされています。通いやすさも大切な判断基準です。

HPVワクチンの予約から接種当日まで男性が知っておきたい受診の流れ

予約は電話またはウェブで行い、当日は問診・説明・接種という3つの段階を経て完了します。全体の所要時間は30分から1時間程度です。

予約の際に伝えるべき情報

予約の電話やオンライン予約フォームでは、「HPVワクチンの接種を希望している男性である」ことを明確に伝えましょう。医療機関によってはワクチンの事前発注が必要なため、飛び込みで受診しても当日に接種できないことがあります。

あわせて、過去にワクチンで強いアレルギー反応が出たことがないか、現在服用中の薬がないかも確認されます。メモにまとめておくと安心です。

初回受診で行われる問診と説明

初回の受診時には、まず問診票への記入を求められます。体調やアレルギー歴、既往歴などを記載し、医師が接種に問題がないかを判断します。

問診に続いて、ワクチンの効果・副反応・接種スケジュールについて説明を受けます。わからないことや不安に思う点があれば、このタイミングで質問しておくと良いでしょう。同意書に署名をしたあと、肩の筋肉(三角筋)に注射を行います。

2回目・3回目の接種スケジュール

HPVワクチンは合計3回の接種で完了するのが標準的なスケジュールです。初回接種から2か月後に2回目、6か月後に3回目を打ちます。すべての接種を終えることで十分な免疫が得られるとされています。

スケジュールどおりに通えない場合でも、一定の期間内であればやり直す必要はありません。ただし間隔が空きすぎると効果に影響する可能性があるため、できる限り予定どおりに受けることが望まれます。

回数時期の目安備考
1回目初回受診日問診・説明のあと接種
2回目初回から2か月後同じ医療機関で継続
3回目初回から6か月後全3回で免疫が完成

男性がHPVワクチンで予防できる疾患と接種のメリット

HPVワクチンは男性にとっても感染症予防の有力な手段です。尖圭コンジローマの発症を大幅に減らせるほか、一部のがんリスクを下げる効果が臨床試験で確認されています。

尖圭コンジローマを防ぐ高い予防効果

尖圭コンジローマは、主にHPV6型・11型が原因で性器や肛門の周囲にいぼができる疾患です。痛みやかゆみを伴うこともあり、治療後に再発するケースも珍しくありません。4価HPVワクチンの臨床試験では、HPV未感染の男性における尖圭コンジローマの発症を約90%抑えたと報告されています。

再発のリスクを考えると、一度かかってから治療するよりも、ワクチンで発症そのものを防ぐほうが身体的・精神的な負担を軽減できるといえるでしょう。

肛門がん・陰茎がん・中咽頭がんへのリスク低減

HPV16型や18型は、肛門がん・陰茎がん・中咽頭がんなどの発症に関与することがわかっています。とくに肛門がんはHPV関連がんのなかでも増加傾向にあり、ワクチン接種による予防が注目されています。

臨床試験では、HPVワクチンが肛門上皮内腫瘍(がんの前段階の病変)を約62%減少させたとするデータが示されました。がんを未然に防ぐという観点から、ワクチン接種は男性にも大きなメリットをもたらします。

パートナーへの感染予防という視点

男性がHPVワクチンを接種することで、性的パートナーへのウイルス伝播を減らす効果も期待できます。女性パートナーの子宮頸がんリスクを間接的に下げることにつながるため、カップルや夫婦での接種を検討する方も増えてきました。

  • 尖圭コンジローマの発症予防(HPV6型・11型への対策)
  • 肛門がん・陰茎がんなどHPV関連がんのリスク低減
  • パートナーへのHPV感染リスクの軽減

HPVワクチンの種類と男性が接種対象になる年齢の目安

日本国内で男性に使用できるHPVワクチンは限られていますが、接種の選択肢は広がりつつあります。年齢による効果の違いを把握したうえで、早めの決断が予防効果を高めるポイントです。

4価ワクチンと9価ワクチンの違い

4価ワクチン(ガーダシル)はHPV6・11・16・18型の4つの型に対応しており、男性への接種が国内で承認されています。一方、9価ワクチン(シルガード9)はさらに5つの型を加えた計9型に対応しますが、日本での男性への適応は限定的な状況が続いています。

4価ワクチンでも尖圭コンジローマや肛門がんの原因となる主要なHPV型をカバーできるため、男性にとって実用的な選択肢といえます。

国内で男性に承認されているワクチンの状況

日本では2020年12月に4価HPVワクチン(ガーダシル)が9歳以上の男性に対して適応拡大されました。世界的に見ると、オーストラリアやアメリカ、イギリスなど多くの国が男女ともにHPVワクチンの定期接種を推奨しています。

日本国内での男性への定期接種化はまだ実現していませんが、自費での接種は可能です。一部の自治体では男性向けの費用助成が始まっており、状況は変わりつつあります。

何歳までに接種するのが効果的か

HPVワクチンは性的接触が始まる前、つまりウイルスに感染する前に接種するのが最も効果的です。海外のガイドラインでは9〜12歳ごろの接種開始を推奨しており、遅くとも26歳までの接種が広く勧められています。

27歳以上でもワクチンの恩恵が得られないわけではありませんが、すでにHPVに感染している可能性が高まるため、効果は限定的になる場合があります。接種を迷っている方は、まず医師に相談して自分に合ったタイミングを確認してみてください。

ワクチン名対応HPV型男性への承認
ガーダシル(4価)6・11・16・18国内承認済み
シルガード9(9価)6・11・16・18・31・33・45・52・58男性は適応外(2025年時点)

HPVワクチン接種後の副反応と受診後に気をつけたいポイント

多くの方が経験するのは注射部位の痛みや腫れで、数日以内にほとんど治まります。重い副反応はまれですが、万一に備えて知識を持っておくと安心です。

注射部位の痛みや腫れといった一般的な反応

HPVワクチンに限らず、筋肉注射では接種した腕に痛み・赤み・腫れが出ることがあります。臨床試験のデータでも、こうした局所反応は接種者の半数以上に見られましたが、いずれも軽度で2〜3日で軽快しています。

接種後は注射した腕を強くもんだり激しく動かしたりしないようにしましょう。入浴は当日から問題ありませんが、接種部位を長時間こすらないよう注意してください。

全身症状が出た場合の対処と相談の目安

まれに発熱・頭痛・倦怠感などの全身症状が出ることがあります。多くは一時的なもので、自然に回復します。ただし、38.5度以上の高熱が続く場合や、強いめまい・呼吸困難を感じた場合は、速やかに接種を受けた医療機関に連絡してください。

接種直後の15〜30分間は院内で経過観察を行うのが一般的です。アナフィラキシーなど急性のアレルギー反応は、この待機時間中に医療スタッフが対応できる体制が整っています。

接種当日と翌日の過ごし方

接種当日は、激しい運動や大量の飲酒を控えるのが基本です。入浴やシャワーは問題ありませんが、長時間の入浴は避けたほうが良いでしょう。翌日以降は、腕の痛みが残っていなければ日常生活に制限はありません。

HPVワクチンの費用と男性が使える助成制度を確認しよう

現時点で男性のHPVワクチン接種は原則として自費になりますが、助成制度を設ける自治体が少しずつ増えています。費用面の不安を解消するために、事前に情報を集めておきましょう。

自費接種における1回あたりの費用の目安

4価HPVワクチン(ガーダシル)を自費で接種する場合、1回あたりおよそ15,000円〜20,000円が目安です。3回接種すると総額で45,000円〜60,000円程度になります。医療機関によって価格差があるため、複数の施設に問い合わせて比較するのも一つの方法です。

自治体による男性向けHPVワクチン助成の広がり

東京都の一部の区をはじめ、男性にもHPVワクチンの接種費用を助成する自治体が出てきています。助成の対象年齢や補助額は自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村の公式サイトで確認してください。

助成制度は年度ごとに新設・変更されることが多いため、検討中の方はできるだけ早めに最寄りの保健センターへ問い合わせることをおすすめします。

項目目安
1回あたりの費用約15,000〜20,000円
3回合計約45,000〜60,000円
助成がある場合自治体により一部〜全額補助

費用を抑えるために知っておきたい工夫

助成制度の有無を確認するほか、複数回分の接種をまとめて予約することで割引を設けている医療機関もあります。また、大学の保健管理センターが学生向けに割安な料金を提示している場合もあるため、学生の方は在籍する学校への問い合わせも選択肢に入れてみてください。

医療費控除の対象になるかどうかは個人の状況によって異なりますが、年間の医療費と合算すれば控除を受けられるケースがあります。確定申告の際に領収書を保管しておくと良いでしょう。

よくある質問

Q
男性のHPVワクチンは何歳から何歳まで接種できますか?
A

日本国内で承認されている4価HPVワクチン(ガーダシル)は、9歳以上の男性が接種対象です。年齢の上限は添付文書上は定められていませんが、性的接触前の9〜12歳ごろに接種するのが最も効果的とされています。

26歳までの接種が広く推奨されており、27歳以降も医師と相談のうえで接種を受けることは可能です。ただし、年齢が上がるほどすでにHPVに感染している可能性が高くなるため、早めの接種が予防効果を高めます。

Q
HPVワクチンを男性が接種する場合、痛みはどの程度ですか?
A

HPVワクチンは肩の筋肉(三角筋)に打つ筋肉注射です。注射の瞬間にチクッとした痛みを感じますが、数秒で落ち着く方がほとんどです。接種後1〜2日は腕に鈍い痛みが残ることがありますが、日常生活に支障をきたすほどではありません。

注射が苦手な方は、事前に医師や看護師にその旨を伝えておくと、リラックスした状態で接種を受けられるよう配慮してもらえるでしょう。

Q
HPVワクチンを途中でやめた場合、最初からやり直す必要がありますか?
A

接種の間隔が予定より空いてしまった場合でも、原則として最初からやり直す必要はありません。残りの回数を続けて接種することで免疫を獲得できます。

ただし、間隔が大幅に空くとワクチンの効果が十分に得られない可能性もあるため、できるだけ早く残りの接種を済ませるようにしてください。かかりつけの医師に相談すれば、具体的なスケジュールの立て直しを提案してもらえます。

Q
HPVワクチンの接種前に男性もHPV検査を受けたほうが良いですか?
A

一般的には、HPVワクチンの接種前にHPV検査を受ける必要はないとされています。たとえすでにいくつかの型に感染していたとしても、ワクチンがカバーするほかの型への感染を防ぐ効果は期待できます。

現在のところ、男性を対象としたHPVスクリーニング検査は広く普及していません。検査の有無にかかわらず、ワクチン接種は有効な予防策となりますので、迷っている方はまず接種を検討されることをおすすめします。

Q
HPVワクチンは男性の性器ヘルペスにも効果がありますか?
A

HPVワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンであり、性器ヘルペスの原因である単純ヘルペスウイルス(HSV)とは異なるウイルスを対象にしています。そのため、性器ヘルペスに対する予防効果はありません。

HPVと性器ヘルペスは混同されやすい疾患ですが、原因ウイルスも症状も異なります。性器にいぼや水疱ができた場合は自己判断せず、皮膚科や泌尿器科を受診して正確な診断を受けてください。

参考文献