帯状疱疹を防ぐワクチンには、皮下注射で受ける生ワクチンと、筋肉注射で受けるシングリックスという2種類があります。それぞれ特徴が異なります。

両者は接種経路だけでなく、接種後に感じやすい痛みの強さや、効果が続く期間にも違いがあります。

とくにシングリックスは、生ワクチンよりも注射部位の痛みが強く出やすい傾向が報告されています。

この記事では、それぞれの特徴と痛みの違いを整理しながら、ご自身に合ったワクチン選びのヒントをお伝えしていきます。

目次
  1. 帯状疱疹ワクチンには生ワクチンとシングリックスの2種類がある
    1. 乾燥弱毒生水痘ワクチンの特徴と歴史
    2. シングリックス(サブユニットワクチン)の特徴
    3. 予防効果と持続期間に大きな差がある
    4. 接種できる年齢と回数の違い
  2. 生ワクチンが皮下注射でシングリックスが筋肉注射になる理由
    1. 皮下注射という投与方法の仕組み
    2. 筋肉注射という投与方法の仕組み
    3. アジュバント(免疫増強剤)の有無が投与経路を決める
    4. 投与経路が変わると何が変わるのか
  3. 接種後の痛みはシングリックスのほうが強く出やすい
    1. 生ワクチン接種後に起こりやすい痛みの程度
    2. シングリックス接種後に起こりやすい痛みの程度
    3. 臨床試験で示された痛みの発生割合
    4. 発赤や腫れなど痛み以外の局所反応
  4. 発熱や倦怠感などの痛み以外の副反応にも違いがある
    1. 全身に起こりやすい副反応の種類
    2. 副反応が現れやすい時期と続く期間
    3. 副反応がつらいときの対処法
    4. 稀に起こる重い副反応への備え
  5. ワクチンを受ける前に確認しておきたい注意点
    1. 持病や治療中の病気がある場合の注意点
    2. 妊娠中や授乳中の接種はどう考えるべきか?
    3. 他のワクチンとの接種間隔
    4. 接種を控えたほうがよいケース
  6. 生ワクチンとシングリックスはどちらを選べばいいのか?
    1. 予防効果の持続期間を重視する場合
    2. 痛みへの不安が強い場合の考え方
    3. 費用面から比較するとどうなるか?
    4. 迷ったときはかかりつけ医に相談する
  7. よくある質問

帯状疱疹ワクチンには生ワクチンとシングリックスの2種類がある

帯状疱疹を予防するワクチンは、乾燥弱毒生水痘ワクチンとシングリックスの2種類に大別できます。両者は成分や作用の仕組みが根本的に異なり、それが接種方法や副反応の違いにもつながっています。どちらを選ぶにしても、まずは基本の違いを押さえておくことが安心につながります。

両者の基本的な特徴を並べると、次のような大きな違いが見えてきます。

項目生ワクチンシングリックス
種類弱毒生ワクチン組換えサブユニットワクチン
接種方法皮下注射筋肉注射
接種回数1回2回
対象年齢50歳以上50歳以上
効果の持続約5年程度9年以上との報告あり

乾燥弱毒生水痘ワクチンの特徴と歴史

生ワクチンは、水痘(水ぼうそう)の原因となるウイルスの毒性を弱めて作られたワクチンです。もともとは水痘予防のために開発された経緯があり、帯状疱疹の予防にも応用されるようになりました。

体内でウイルスにごく弱く感染させることで、免疫の記憶を呼び覚ます仕組みになっています。長年使われてきた実績があり、安全性のデータも豊富に蓄積されています。

もとになっている株は日本で分離されたもので、水痘ワクチンとして世界的に広く使われてきた歴史があります。帯状疱疹の予防用としては、高齢者を中心に接種が進められてきました。

シングリックス(サブユニットワクチン)の特徴

シングリックスは、ウイルスそのものを使わず、ウイルスの表面にあるたんぱく質の一部と、免疫を強く刺激するアジュバントを組み合わせたワクチンです。

生きたウイルス成分を含まないため、免疫の状態に不安がある方にも選択肢になりやすい点が特徴といえます。そのぶん免疫を強く刺激するため、接種後の反応も出やすくなります。

比較的新しいタイプのワクチンでありながら、世界の多くの国で承認され、帯状疱疹予防の中心的な選択肢として位置づけられるようになってきました。

予防効果と持続期間に大きな差がある

生ワクチンの予防効果は、接種後数年で徐々に弱まっていくことが知られています。一方でシングリックスは、9年以上にわたって高い予防効果が続くとする報告があります。

長期的な予防を重視するなら、この持続期間の差は選択の大きな判断材料になるでしょう。年齢を重ねるほど帯状疱疹を発症した際のリスクが高まるため、効果が長続きするワクチンの価値は大きいといえます。

接種できる年齢と回数の違い

どちらのワクチンも50歳以上の方が主な接種対象です。生ワクチンは1回の接種で完了しますが、シングリックスは2か月から6か月の間隔をあけて2回接種する必要があります。

通院の回数や間隔も、ワクチンを選ぶうえで意識しておきたいポイントです。仕事や家庭の予定と照らし合わせながら、無理なく通える方法を選ぶとよいでしょう。

生ワクチンが皮下注射でシングリックスが筋肉注射になる理由

どうして注射方法が違うのだろうと感じる方も多いはずです。実はこの違いは、ワクチンに含まれる成分と、免疫を働かせる仕組みの差から生まれています。接種を受ける前に理由を知っておくと、当日の不安も和らぐでしょう。

皮下注射という投与方法の仕組み

皮下注射は、皮膚のすぐ下にある脂肪の層に薬液を注入する方法です。針を浅い角度で刺すため筋肉注射に比べて痛みを感じにくいとされ、生ワクチンのように吸収がゆるやかでよいワクチンに向いています。

上腕の外側に注射することが一般的で、比較的細い針が使われます。皮膚をつまむようにして針を刺すため、圧迫感はあるものの、深く刺さない分だけ刺激が小さく済みやすいといわれています。

筋肉注射という投与方法の仕組み

筋肉注射は、皮下組織よりも深い筋肉層に薬液を届ける方法です。筋肉は血流が豊富なため、成分の吸収が早く、免疫細胞への働きかけも強くなりやすいとされています。

シングリックスに含まれるアジュバントの効果を十分に引き出すには、この筋肉注射という経路が適しているのです。

一般的には二の腕の筋肉に注射することが多く、皮下注射よりもやや深い位置まで針を進めるため、刺した瞬間の圧迫感を強く感じる方もいます。

アジュバント(免疫増強剤)の有無が投与経路を決める

シングリックスには、免疫の反応を強めるアジュバントという成分が加えられています。この働きを最大限に生かすには、血流が豊富な筋肉組織に届ける必要があります。

生ワクチンにはアジュバントが含まれていないため、皮下注射でも十分に免疫の記憶を呼び起こすことができます。アジュバントの有無は、接種後の痛みや発赤の出方にも影響を与える要素の一つです。

投与経路が変わると何が変わるのか

投与経路が変わると、成分が吸収される速さや、免疫細胞が刺激される強さが変化します。その結果として、接種後に体が示す反応の大きさにも差が生まれます。

投与経路によって変わること

  • 吸収される速さ
  • 免疫を刺激する強さ
  • 注射部位の痛みの出方
  • 発赤や腫れの範囲

こうした違いを踏まえたうえで、次の章では痛みそのものについて詳しく見ていきます。投与経路の仕組みを知っておくと、接種当日の説明もより理解しやすくなるはずです。

接種後の痛みはシングリックスのほうが強く出やすい

皮下注射のほうが痛いはずと思われがちですが、実際には筋肉注射であるシングリックスのほうが、注射部位の痛みを強く感じる方が多いという報告があります。これはアジュバントによる免疫刺激の強さが関係しています。

生ワクチン接種後に起こりやすい痛みの程度

生ワクチンの接種後は、注射した部分に軽い痛みや赤みが出ることがありますが、多くは数日以内に自然と落ち着きます。

強い痛みを訴える方は比較的少なく、日常生活に支障が出るケースはまれとされています。腕を動かすと少し違和感がある程度で済む方も多いようです。

シングリックス接種後に起こりやすい痛みの程度

シングリックスの接種後は、注射した腕を上げると痛む、押すとずきずきするといった強めの痛みを感じる方が少なくありません。

アジュバントによって免疫が強く刺激されるぶん、局所の炎症反応も大きくなりやすいと考えられています。人によっては腕が上がりにくくなるほどの痛みを感じることもあります。

臨床試験で示された痛みの発生割合

実際の臨床試験でも、この傾向を裏づけるデータが示されています。

項目生ワクチン目安シングリックス目安
接種部位の痛み約3〜4割程度約7〜8割程度
強い痛み(重度)まれ1割前後

このように、シングリックスのほうが痛みを感じる方の割合が明らかに高くなっています。ただし、これらの数値はあくまで報告された傾向であり、実際の感じ方には個人差があることも忘れないようにしましょう。

発赤や腫れなど痛み以外の局所反応

痛みだけでなく、注射した部分の赤みや腫れについても、シングリックスのほうが強く出やすい傾向があります。

多くは数日でおさまりますが、気になる腫れが続く場合は接種を受けた医療機関に相談すると安心です。冷やしたタオルを軽く当てるだけでも、不快感が和らぐことがあります。

発熱や倦怠感などの痛み以外の副反応にも違いがある

痛み以外の副反応にも、両者には明確な差があります。シングリックスのほうが、発熱や倦怠感といった全身反応を経験する方の割合が高いことが分かっています。仕事や予定を考えながら接種日を選ぶ際の参考にしてください。

全身に起こりやすい副反応の種類

  • 倦怠感
  • 筋肉痛
  • 頭痛
  • 悪寒
  • 微熱

これらは免疫が働き始めているサインでもあり、体が異常な反応を起こしているわけではありません。シングリックスのほうが生ワクチンよりもこうした症状を経験する方の割合が高いことも分かっています。

副反応が現れやすい時期と続く期間

多くの副反応は、接種した当日から翌日にかけて最も強く感じられます。その後は徐々に和らぎ、2日から3日ほどで治まることがほとんどです。

1週間以上続くような場合は、接種とは別の原因が隠れている可能性もあるため注意が必要です。とくにシングリックスの2回目接種では、1回目よりも反応が強く出る方が多いといわれています。

副反応がつらいときの対処法

痛みや発熱がつらいときは、注射した部分を軽く冷やしたり、市販の解熱鎮痛薬を使ったりすることで和らげられる場合があります。

無理に体を動かさず、十分な休息をとることも回復を早める助けになるでしょう。接種の翌日に大切な予定を入れず、体を休められるよう余裕を持ったスケジュールを組むのが理想です。

稀に起こる重い副反応への備え

頻度は高くありませんが、強いアレルギー反応や高熱が続くといった重い症状が現れることもごくまれにあります。

接種後しばらくは体調の変化に注意を払い、異変を感じたらためらわずに医療機関へ連絡してください。息苦しさや広範囲の発疹など、いつもと違う症状が出た場合はとくに注意が必要です。

ワクチンを受ける前に確認しておきたい注意点

持病の有無や体調によっては、接種のタイミングや選ぶワクチンを見直したほうがよい場合があります。事前に確認しておきたいポイントを整理しました。安心して接種を受けるためにも、順番に確認していきましょう。

持病や治療中の病気がある場合の注意点

免疫の働きを抑える薬を使っている方や、がんの治療中の方は、生ワクチンよりもシングリックスが選ばれることが多くなっています。

持病がある場合は、自己判断せずに主治医と相談しながら接種の可否を決めることが必要です。生ワクチンは免疫が弱っている方には適さない場合がある点も知っておきましょう。

妊娠中や授乳中の接種はどう考えるべきか?

妊娠中の方は、生ワクチンとシングリックスのいずれも接種を見合わせるのが一般的な考え方です。

授乳中の接種については個別の状況によって判断が分かれるため、産婦人科医や接種を行う医師に確認してから決めてください。

他のワクチンとの接種間隔

項目生ワクチンシングリックス
不活化ワクチンとの間隔制限なしとされることが多い制限なしとされることが多い
他の生ワクチンとの間隔原則4週間あける該当なし

同じ生ワクチンを複数接種する場合は、一定の間隔をあける必要があるため、接種スケジュールは事前に確認しておくと安心です。インフルエンザワクチンなど、季節性の予防接種との兼ね合いも考えておきたいところです。

接種を控えたほうがよいケース

発熱や体調不良がある日は接種を控え、体調が回復してから受けるのが基本です。

過去にワクチンで強いアレルギー反応を起こしたことがある方も、接種前に必ず申告するようにしてください。少しでも不安がある場合は、接種当日ではなく事前の診察で相談しておくと落ち着いて判断できます。

生ワクチンとシングリックスはどちらを選べばいいのか?

痛みへの不安が少なく費用を抑えたいなら生ワクチン、長期的な予防効果を優先するならシングリックスが向いています。最終的にはご自身の体調や生活状況に合わせて選ぶことが大切です。ここまでの内容を踏まえ、判断のポイントを整理していきます。

予防効果の持続期間を重視する場合

できるだけ長く帯状疱疹を防ぎたいと考えるなら、効果の持続期間が長いシングリックスに分があります。

とくに免疫が低下しやすい高齢の方や、持病を抱えている方にとっては心強い選択肢となるでしょう。再接種の手間を減らしたいという方にも適した選び方といえます。

痛みへの不安が強い場合の考え方

注射部位の痛みに対する不安が強い場合は、比較的痛みが軽く済むことが多い生ワクチンを選ぶという考え方もあります。

ただし痛みの感じ方には個人差があるため、過度に心配しすぎる必要はありません。実際にはシングリックスを選んだ方でも、想像していたより痛くなかったと話す方もいます。

費用面から比較するとどうなるか?

シングリックスは2回接種が必要なぶん、生ワクチンよりも総額の費用が高くなる傾向があります。

自治体によっては帯状疱疹ワクチンの接種費用を助成している場合もあるため、お住まいの地域の制度を確認してみましょう。助成の内容や対象年齢は地域ごとに異なるため、早めに調べておくと計画を立てやすくなります。

迷ったときはかかりつけ医に相談する

どちらのワクチンにも一長一短があり、絶対的な正解は一つではありません。

持病の有無や生活スタイルを踏まえたうえで、かかりつけの医師と相談しながら決めていくことをおすすめします。納得のいく選択をするためにも、疑問点は遠慮なく質問しましょう。

選択基準の比較

重視する点向いている傾向ワクチン
効果の持続期間長期予防を優先シングリックス
痛みの少なさ痛みへの不安が強い生ワクチン
費用総額を抑えたい生ワクチン
通院回数1回で済ませたい生ワクチン

よくある質問

Q
帯状疱疹の生ワクチンとシングリックスは同時に接種できますか?
A

生ワクチンとシングリックスは、それぞれ想定している免疫の働かせ方が異なるため、同時に接種することは基本的に推奨されていません。どちらか一方を選んで接種を受けるのが一般的な考え方です。

すでに生ワクチンを接種したことがある方でも、あとからシングリックスに切り替えて接種を受けることは可能とされています。切り替えを希望する場合は、接種間隔について医療機関に確認しておくと安心です。過去にどちらのワクチンを受けたかを、母子手帳や接種記録で確認しておくとスムーズです。

Q
シングリックスの接種後の痛みはどのくらい続きますか?
A

シングリックスの接種後に感じる注射部位の痛みは、多くの場合接種当日から翌日にかけて最も強くなります。その後は徐々に和らぎ、2日から3日程度で落ち着くことがほとんどです。

腕を上げると痛む、触れるとずきずきするといった症状が数日続くこともありますが、1週間以上長引く場合は自己判断せず医療機関に相談してください。冷却シートなどで冷やすと、痛みが和らぐことがあります。

Q
帯状疱疹の生ワクチンはどのような人に向いていますか?
A

生ワクチンは、免疫の働きに大きな問題がなく、注射部位の痛みをできるだけ抑えたいと考える方に向いています。1回の接種で完了する手軽さも特徴の一つです。

ただし、免疫を抑える薬を使用している方やがんの治療中の方には接種が推奨されない場合があるため、事前に医師へ相談することが必要です。持病がなく健康な状態であれば、比較的安心して選びやすいワクチンといえます。

Q
シングリックスは何歳から接種できますか?
A

シングリックスは、50歳以上の方を対象に接種が認められています。加えて、18歳以上で免疫の働きが低下しやすい状態にある方も対象に含まれる場合があります。

対象となるかどうかは体の状態によって異なるため、接種を検討する際は事前に医療機関で確認しておくとよいでしょう。

Q
帯状疱疹ワクチンの接種後に運動をしても大丈夫ですか?
A

接種当日は、注射した腕に強い負荷をかける運動や、体を激しく動かす運動は控えたほうが無難です。痛みや腫れが悪化する可能性があります。

軽いウォーキングなど体に負担の少ない運動であれば、体調に問題がなければ行っても差し支えないとされています。不安な場合は接種を受けた医療機関に確認してください。入浴についても、注射部位を強くこすらなければ当日から可能な場合が多いです。

参考文献