イボとは皮膚の表面にある突起物。さまざまな種類があり医学的用語も異なりますが、ほとんどが良性で悪性のものはほぼありません。

種類によりできる場所や原因も異なるものの首のイボは摩擦による刺激や老化、紫外線(UV)でできることが多く、できやすい人には心当たりがあるはずです。

取り方は種類によりますが、液体窒素で細胞を凍らせて除去する方法が一般的。イボは一回で取れる人もいれば、取れるまで何日か皮膚科で液体窒素の治療を続けることもあります。

液体窒素で治らないイボにはほかの治療法を使うことも。

顔や脇、指のイボとの共通点や違いのほか、イボコロリやヨクイニンなどの薬を使ったりハサミで切ったりちぎるなどイボを自分で除去することはやってはいけないかどうか?もお話しします。

この記事を書いた医師

大木皮ふ科クリニック院長大木沙織

名前:大木 沙織
大木皮ふ科クリニック 副院長
皮膚科医/内科専門医/公認心理師
略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。

本文中の上付き数字1)2)3)は論文引用箇所で文末に論文名を記載しています

いぼ 首のいぼ ibo アクロコルドン スキンタッグ

首にできたイボの症状|種類の違いや首ならではの影響も

首にできるイボの種類は医学用語では大きく分けてこの五つです。

  1. 軟性繊維腫(アクロコルドンAcrochordon、スキンタッグ)
  2. 脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)または老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)
  3. 神経線維腫(しんけいせんいしゅ)
  4. 基底細胞癌(きていさいぼうがん、BCC)
  5. 有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん、SCC)

あれっと思う方もいるかもしれません。指や手のひら、足の裏などにできて、ほかの場所や人にうつるウイルス性のいぼ(尋常性疣贅、じんじょうせいゆうぜい)が含まれていませんよね。

ウイルス性のイボが首にできることは、なぜか滅多にないのです。

症状も種類によって異なりますが、共通して言えることは肌が露出するところなので目立ちやすく見た目が気になること、服やアクセサリーが擦れて邪魔なこと。それ以外の症状をまとめました。

病名見た目症状
軟性繊維腫1)小さい、柔らかい、皮膚が伸びた感じやぷっくりしている。色はない。正常な皮膚と境目は明らか。なし
脂漏性角化症2,3)硬くてざらざらしている、色はさまざま、正常な皮膚と境目は明らか。でき始めや大きいとかゆい、血が出る
神経線維腫4-7)柔らかくぽこっとして動く。無色~ピンク色。大きくなるとかゆい
基底細胞癌8,9)ピンク~黒い色でぼこぼこしている正常な皮膚と境目は明らか。大きくなると真ん中に潰瘍(かいよう)ができる
有棘細胞癌10,11)赤くてざらざら・ぼこぼこしている。正常な皮膚と境目がはっきりしない。大きくなるとただれたり潰瘍ができる、血やくさい汁が出る。転移するとほかのがんと同様の症状がでる。

この中で悪性、つまりイボに見えるガンは有棘細胞癌。基底細胞癌も悪性腫瘍ではありますが、ほぼ転移しませんので「大きくなる汚らしいイボ」というイメージで大丈夫です。

これらの自分でできる見分け方は後述しますが、いずれも放置せずに皮膚科を受診してください。

神経繊維腫は主に遺伝で起こる全身の病気「神経線維腫症I型」(neurofibromatosis type1:NF1、別名レックリングハウゼン病)によって起こることがほとんどで、首のイボだけで受診する方はほぼいません。

脂漏性角化症(老人性イボ)についての詳細はこちらhttps://oki.or.jp/seborrheic-keratosis/で説明しています。

今回は首のいぼのなかでも一番多い軟性繊維腫、俗に言うアクロコルドンについてのお話しです。まずは写真をご覧ください。

あれっ、脇や股にも同じようなイボがあるな、と思った方もいると思います。恐らく同じものですが、その理由はこれからお話ししましょう。

アクロコルドン akurokorudon スキンタッグ sukintagu 首のいぼ kubinoibo

首のイボ、アクロコルドンの原因|予防と対処のポイント

首のイボとしてアクロコルドン(スキンタッグ)がなぜできるか。詳しいことはわかっていないことも多いですが、直接的な原因は皮膚が擦れること

皮膚同士が擦れたり衣服と擦れることで皮膚が刺激を受けてイボになる、ということです。脇や股関節も同様に摩擦が起こりやすいので、首のイボと同じようなことが起こるのでしょう。

その他のイボができやすい人の特徴は

  • 遺伝
  • ホルモン
  • 加齢
  • 肥満
  • インスリンが効きにくい(インスリン抵抗性)
  • 糖尿病
  • 免疫力の低下

があります。

・遺伝

血の繋がった家族に首のイボができやすい人がいると、スキンタッグができやすくなります。恐らく遺伝的な要因があると思いますが、原因はわかっていません。

・ホルモン

妊娠中の女性やホルモン治療を受けている人は、スキンタッグができやすいです。ホルモンバランスの変化が首のイボに関係していると思われます。

・加齢

年齢とともにスキンタッグが発生しやすくなるようです。皮膚の老化がイボができることと関係しているのでしょう。

・肥満

太っている人はスキンタッグができやすくなります。第一には太っていることで首同士の皮膚やほかの部分と摩擦が起こりやすくなるということ。

もう一つの理由として、太っている人は炎症を起こしやすくなったり、これから話すインスリンが効きにくくなること(インスリン抵抗性)が関係しているという研究が盛んです。

・インスリン抵抗性

・糖尿病

インスリンという血糖値を下げるホルモンが効きにくい人は首のイボができやすい傾向にあります。糖尿病になる人の原因はいろいろです。

その中でもインスリン抵抗性が原因の場合は同様にスキンタッグが起こりやすくなります。インスリンとは血糖値を下げるホルモンのこと。

これが効きにくくなることで血糖値が高くなるのですが、そうなると皮膚の細胞分裂が盛んになることで首のイボができやすくなるようです。

・免疫力の低下

皮膚の免疫力が落ちることで皮膚が刺激に弱くなり、首のイボができやすくなるようです。

とはいえ、これらがなぜ首のイボの原因になるかはあまりわかっていません。スキンタッグができやすい人の中でもこれらの原因がどれほどできやすさにかかわっているかもさまざまです。

これがあるから首にイボができやすいということもはっきり言えません。今後の研究でもっと詳しいことがわかることに期待しましょう。

首のイボをチェックする方法|皮膚科での検査

首のいぼをチェックするには、いぼの種類とその特徴、そしていぼとほくろの違いやほかの皮膚疾患との区別が大切です。

首のイボはお話しした通りほとんどが良性のものですが、万が一うつるものだったり悪性腫瘍・別の病気が原因だったら大変。皮膚科ではこのように検査をいたしますので、ご参考にどうぞ。

<視診(目で見る)>

まず、首を見やすくするために明るい環境で診察します。場合によってはペンライトもおすすめです。確認するのは以下のとおり。

  • 色 アクロコルドンなら通常無色です。
  • 形 平ら、または茎のあるつるんとした膨らみが特徴です。
  • 数 イボができやすい人の特徴を考えると、いくつか存在することが多いです。

<触診(さわる)>

次に手で触れて触り心地や触られた時の感触を確認。茎のあるアクロコルドンだと柔らかく、皮膚が伸びたような感触が特徴です。一方平らなアクロコルドンはつるんとしています。

触っても痛い、かゆいということはありません。

アクロコルドンの場合はこれだけで診断がつきます。もし違いそうだな、と思った場合は皮膚を良く見るための機械(ダーモスコープ)で確認するかもしれません。

アクロコルドン スキンタッグ いぼ 首のイボ ibo

アクロコルドンを取りたい|治療方法は薬より液体窒素?

アクロコルドンはあっても特に問題はありません。ただ、擦れて邪魔・見た目が気になる・つい触ってしまう方はイボ取りを検討してもいいでしょう。

イボを確実に除去する取り方|治療は皮膚科で

皮膚科で行われるは大きく分けて4つ。

・液体窒素

アクロコルドンにかかわらず、多くのいぼは液体窒素で取ることが多いです。いぼの細胞にダメージを与えることで自然に取れる、という方法で、液体窒素凍結療法・冷凍凝固法と呼びます。

治療期間はそこまでかからず、一回で取れることがほとんどで、保険適応の除去方法です。

液体窒素 えきたいちっそ くらいお

・ハサミで切る

滅菌したハサミでイボを除去するという、首のイボならではの取り方です。イボをハサミで切ったと言われるとびっくりされるかもしれませんが、アクロコルドンの場合は一般的な治し方。

血は出るときと出ないときがあります。こちらも保険適応です。

はさみ hasami クーパー

・電気焼灼

イボを手術で使うような電気メスで焼き取ります。保険適応ですが、痛いので要麻酔。大きなイボに対して検討します。

・レーザー治療

炭酸ガスレーザーでいぼを焼いて除去します。保険適応ではありませんが、導入している施設は多いです。

レーザー いぼ イボ取り 首のイボ

自分でイボを取ることは可能?|イボコロリは治療薬か

イボ治療のために皮膚科に行くのはためらわれるし、だからといって見た目が気になったり邪魔だし、イボを自分で取る方法はないかなという声も多いでしょう。

首のイボは自然に取れた、ということはあまりありませんので薬を検討する方もいれば、ハサミで切ったという方もいます。

一番やってはいけないことは比較的大きなイボを自分でちぎる・ハサミで切るといった物理的な除去をすること。

皮膚科ではあまりにも大きいイボを切るとたくさん血が出るので、液体窒素や炭酸レーザーで取るものです。仮にハサミで切ったとしても電気メスで止血を行います。

一方でイボを市販薬で取る方法を知りたいという方もいるかもしれません。特にイボといえばイボコロリやスピール膏、という方はとても多いです。

イボコロリやスピール膏の正体はサリチル酸ワセリンという、硬くなった皮膚を溶かす薬。しかし首のイボはすでに柔らかく、皮膚が伸びたようなもの。

イボといってもいろんな種類があるわけで、イボコロリの使い方や取れ方とは一致しません。

イボに木酢液を使う、ハトムギやヨクイニンを飲む通説もありますが、こちらも首のイボには効果なし。首のイボ取りは皮膚科で行いましょう。

アクロコルドンの治療費|種類と取り方で変わる値段

いざ医療機関でイボ取りをしたい、となったとき、気になるのはお値段ですよね。同じ皮膚科でも保険適応か自由診療か、また個数や大きさで費用が変わります。

保険適用とレーザー治療、費用の違いは

保険適応の費用は治療内容や負担額によってさまざまです。一般的に保険は3割負担ですが、高齢者の医療費は2割負担。

以下、10割負担の料金表です。

まず診察料として初診2880円、再診料730円がかかります。

加えて必要となる処置料は以下の通りです。

液体窒素3個以下2100円4個以上2700円
ハサミで切る3個以下2100円4個以上2700円
電気焼灼3個以下2100円4個以上2600円

一方で自由診療となる炭酸ガスレーザー治療の場合は医療機関によって異なります。1個あたり1000円~3000程度のことが多く、たくさんある場合は取り放題プランがあるかもしれません。

完全に除去できるまでの費用

イボの大きさによりますが、一番取れるまで長くかかる液体窒素でも1~2回で終わります。ただ、イボが多かったり大きい場合は何回かに分けて取ることもあるのでその分費用が追加されることに。

首のイボ取りの副作用|デメリットは痛いこと

保険適用の取り方とレーザー治療のデメリット

何事にもデメリットはつきものながらもイボ取りの場合は単純な話で、痛いこと

ハサミで切る・液体窒素凍結療法を行う場合は麻酔の針による痛みの方が強いので麻酔なしで行うものの、少し痛い感じは防げません。

一方電気メスを使ったり炭酸ガスレーザーによるイボ取りをするには痛いので麻酔をしますが、針を入れるときの痛みは避けられないのです。

付け加えるデメリットとして跡が多少は残ってしまう可能性があるものの、もともとあるイボに比べたら気にならない程度です。

除去後も再発する?本当に予防したい人の治療とは

イボ治療のデメリットそのものとも言えることは、取ることにかかわる手間すべて。痛いこと以外にも費用や通院の時間も問題となると、治療後も再発しないようにする必要があります。

ここで首のイボ、アクロコルドンの原因を考えましょう。体質以外に挙げられるのは生活習慣、特に擦れること

今までの生活を送るとイボ取りの後も再発してしまいがち、どんな良い治療よりも予防が大切だと心がけましょう。

アクロコルドン スキンタッグ 首のイボ

重症化するいぼの注意点|早期発見と適切な対応

普通のイボではないおかしなイボ

アクロコルドンは見るからにアクロコルドン、という診断が付きますので悪いものと間違えることはほぼありません。

ただ、似たものとしては「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」(または老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい))もおなじようなピロンとした見た目をすることもあります。

基本的にアクロコルドンは首や脇に出来るものなので、そうでないときはアクロコルドンではないイボだと考えるものです。脂漏性角化症について詳しくはこちら。https://oki.or.jp/seborrheic-keratosis/

精密検査の病院は医療連携で

もしイボが悪いものかもしれないというときは、取ったイボを病理検査(顕微鏡でイボの形を細かく見る)に出すことに。

医療機関によっては(特に美容皮膚科の場合)自前の施設では行えないことも多く、保険診療をしている皮膚科と連携することが望ましいです。

と言ってもお話ししたようにアクロコルドンの場合はほかの病気を考えることは少なく大体が無関係なので、本当に心配なときはというお話。

イボ取り治療の体験談|口コミも参考に

首にぼつぼつがたくさんできていることが気になっていました。別件で皮膚科を受診したときについでに相談してみたら、液体窒素で取れるので今からやりましょうということでその場で治療してもらいました。

昔ウイルス性のイボを液体窒素で取りましたが、その時みたいに何度も通うことなく取ることができてよかったです。

(50代女性)

服を着るたびに首のイボが引っかかって邪魔だなと思ってました。ちぎってしまいたいくらいでしたが、怖いので皮膚科に相談しました。

ハサミで切るか液体窒素で焼くかという選択がありましたが、思い切り取りたかったのでハサミで切ってもらいました。思ったより痛くなかったし、跡もそこまで残りませんでした。

(40代女性)

まとめ

首のイボを取るには皮膚科受診が大切です。自分で除去しようとするのは危ないのでやめてください。

首のイボの代表的なものとして軟性繊維腫(アクロコルドン、スキンタッグ)がありますが、取り方は液体窒素で凍らせる、ハサミで切る、レーザー治療が一般的です。

状況に応じて皮膚科医と相談して取る方法を決めましょう。再発を防ぐためには摩擦を減らしたり肌のケアを心がけてください。

参考文献

1)Syed, Shehla Yasin Belgam, Jules B. Lipoff, and Kingshuk Chatterjee. “Acrochordon.” In StatPearls [Internet]. StatPearls Publishing, 2022.
2)Karadag, Ayse Serap, and Lawrence Charles Parish. “The status of the seborrheic keratosis.” Clinics in Dermatology 36, no. 2 (2018): 275-277. 
3)Hafner, Christian, and Thomas Vogt. “Seborrheic keratosis.” JDDG: Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft 6, no. 8 (2008): 664-677.
4)Messersmith, Lynn, and Kevin Krauland. “Neurofibroma.” (2019).
5)Ferner, Rosalie E., and Michael J. O’Doherty. “Neurofibroma and schwannoma.” Current opinion in neurology 15, no. 6 (2002): 679-684.
6)Gutmann, David H., Rosalie E. Ferner, Robert H. Listernick, Bruce R. Korf, Pamela L. Wolters, and Kimberly J. Johnson. “Neurofibromatosis type 1.” Nature Reviews Disease Primers 3, no. 1 (2017): 1-17.
7)Reynolds, R. M., G. G. P. Browning, I. Nawroz, and IW von Campbell. “Von Recklinghausen’s neurofibromatosis: neurofibromatosis type 1.” The lancet 361, no. 9368 (2003): 1552-1554.
8)Goldberg, Leonard H. “Basal cell carcinoma.” The Lancet 347, no. 9002 (1996): 663-667.
9) Dika, Emi, Federica Scarfì, Manuela Ferracin, Elisabetta Broseghini, Emanuela Marcelli, Barbara Bortolani, Elena Campione, Mattia Riefolo, Costantino Ricci, and Martina Lambertini. “Basal cell carcinoma: a comprehensive review.” International Journal of Molecular Sciences 21, no. 15 (2020): 5572.
10) Marks, Robin. “Squamous cell carcinoma.” The Lancet 347, no. 9003 (1996): 735-738.
11) Bernstein, Steven C., Katherine K. Lim, David G. Brodland, and Karen A. Heidelberg. “The many faces of squamous cell carcinoma.” Dermatologic surgery 22, no. 3 (1996): 243-254.

Q&A(質疑応答集)

Q
アクロコルドンとは何ですか?
Q
アクロコルドンに症状はありますか?
Q
アクロコルドンを放置したら自然に取れますか?
Q
アクロコルドンの治療法はどのようなものがありますか?
Q
治療は痛いですか?
Q
アクロコルドンは再発しますか?
Q
アクロコルドンを自分で取り除くことはできますか?
Q
治療は保険適用ですか?
Q
アクロコルドンの治療にかかる時間はどのくらいですか?
Q
取った後の注意事項はありますか?
Q
アクロコルドンの出来やすい人の特徴はありますか?
Q
アクロコルドンを取った跡は残りますか?