
「自分はゼップバウンドを使えるのだろうか」と気になっている方は多いでしょう。ゼップバウンドは、BMI27以上で肥満に関連する健康障害を2つ以上抱えている方、またはBMI35以上の方が処方対象です。
ただし、食事療法と運動療法を6か月以上続けても十分な効果が得られなかった場合に限られます。この記事では、具体的なBMI基準や健康障害の評価方法、処方を受けるまでの流れをわかりやすく解説します。
ご自身が対象に当てはまるかどうか、ぜひ確認してみてください。
ゼップバウンドはどんな肥満症治療薬なのか
ゼップバウンドは、GIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用する週1回の注射薬で、食欲を抑えながら体重減少を促す肥満症治療薬です。もともと2型糖尿病治療薬として開発された「マンジャロ」と同じ有効成分(チルゼパチド)を含み、肥満症に特化して承認されました。
チルゼパチドが食欲と体重に働きかける仕組み
チルゼパチドは、腸から分泌される2種類のホルモン(GIPとGLP-1)の受容体に同時に作用します。GLP-1受容体への作用により、脳の視床下部や脳幹に直接働きかけて食欲を抑え、胃の動きをゆるやかにして満腹感を長く保ちます。
さらにGIP受容体への作用が加わることで、脂肪の代謝やエネルギー消費を高める効果も期待できます。この2つの受容体に同時にアプローチするのが、従来のGLP-1受容体作動薬との大きな違いといえるでしょう。
マンジャロとゼップバウンドは同じ成分だが適応症が異なる
マンジャロとゼップバウンドの有効成分はどちらもチルゼパチドです。違いは承認されている適応症にあります。マンジャロは2型糖尿病の血糖コントロールを目的とした薬であり、ゼップバウンドは肥満症の体重管理を目的とした薬です。
成分が同じだからといって、自己判断でどちらかを代用することはできません。医師が患者さんの病態を総合的に評価したうえで、適切な薬を選択します。
ゼップバウンドとマンジャロの比較
| 項目 | ゼップバウンド | マンジャロ |
|---|---|---|
| 有効成分 | チルゼパチド | チルゼパチド |
| 適応症 | 肥満症 | 2型糖尿病 |
| 投与方法 | 週1回皮下注射 | 週1回皮下注射 |
| 用量 | 2.5〜15mg | 2.5〜15mg |
週1回の皮下注射で続けやすい投与スケジュール
ゼップバウンドは、週に1回お腹や太ももに自己注射するタイプの薬です。使い切りのペン型注射器を使うため、操作はシンプルで、初回は医療者から手技の指導を受けます。
投与量は2.5mgからスタートし、4週間ごとに2.5mgずつ増やしていきます。維持量は週1回10mgが基本ですが、体の状態に応じて5mgまで減量したり、15mgまで増量したりすることも可能です。
ゼップバウンドの処方対象になるBMI基準は2パターンある
ゼップバウンドの処方対象となるBMI基準は、「BMI27以上かつ健康障害2つ以上」と「BMI35以上」の2つに分かれます。いずれの場合も、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のうち少なくとも1つを有していることが前提条件です。
BMI27以上で肥満に関連する健康障害が2つ以上ある場合
BMIが27以上35未満の方がゼップバウンドの処方を受けるには、肥満に関連する健康障害を2つ以上合併していなければなりません。たとえば、高血圧と脂質異常症を同時に抱えている方や、耐糖能障害と非アルコール性脂肪性肝疾患がある方が該当します。
BMIの値だけでなく、複数の健康問題が重なっていることが求められるため、単に体重が多いというだけでは対象になりません。
BMI35以上の高度肥満症に該当する場合
BMIが35以上の方は「高度肥満症」に分類されます。この場合、健康障害の数が1つ以上であれば処方対象となる可能性があります。高度肥満症では心血管疾患や糖尿病などの合併リスクが格段に高まるため、より積極的な薬物治療が検討されるわけです。
ただし、高度肥満症であっても、食事療法や運動療法に取り組む意思がなければ処方の対象にはなりません。あくまでも生活習慣の改善と併用する治療という位置づけです。
BMIの計算方法と自宅で確認するやり方
BMIは「体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)」で計算できます。たとえば身長160cm・体重75kgの方であれば、75÷1.6÷1.6=約29.3となり、BMI27以上の基準を満たします。
自宅で体重計と身長さえわかれば、すぐに計算できるでしょう。ご自身のBMIを把握しておくことで、受診時に医師と具体的な相談がしやすくなります。
BMI値と肥満度の目安
| BMI値 | 判定 | ゼップバウンドの対象 |
|---|---|---|
| 18.5〜24.9 | 普通体重 | 対象外 |
| 25.0〜26.9 | 肥満(1度) | 対象外 |
| 27.0〜34.9 | 肥満(1〜2度) | 健康障害2つ以上で対象 |
| 35.0以上 | 高度肥満 | 健康障害1つ以上で対象 |
肥満に関連する11の健康障害を一つずつ確認しよう
ゼップバウンドの処方判定で評価される「肥満に関連する健康障害」は全部で11項目あります。ご自身にいくつ当てはまるかを確認することが、処方対象かどうかを知る第一歩です。
耐糖能障害・脂質異常症・高血圧はとくに多い合併症
11項目のうち、日本人の肥満症患者さんで特に多いのが耐糖能障害(2型糖尿病や耐糖能異常を含む)、脂質異常症、高血圧の3つです。健康診断で「血糖値が高め」「コレステロールが高い」「血圧が高い」と指摘された経験がある方も多いかもしれません。
これらは自覚症状が出にくいため、気づかないうちに進行していることがあります。定期的な健康診断の結果を手元に用意して、医師に相談すると話がスムーズに進むでしょう。
高尿酸血症・冠動脈疾患・脳梗塞は見落としやすい
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞など)
- 脳梗塞
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常・不妊
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 運動器疾患(変形性膝関節症・腰痛症など)
- 肥満関連腎臓病
女性特有の健康障害として月経異常や不妊も含まれる
肥満に関連する健康障害には、月経異常や不妊も含まれています。肥満が原因でホルモンバランスが崩れ、月経周期が乱れたり排卵が起こりにくくなったりするケースは珍しくありません。
「体重のせいで月経が不順になっている」と感じている方は、婦人科と内科の両方で相談することをおすすめします。肥満症として治療を始めることで、月経の改善にもつながる可能性があるからです。
睡眠時無呼吸症候群は肥満と深くつながっている
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、肥満との関連が非常に強い疾患です。首まわりや喉の脂肪が増えることで気道が狭くなり、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりします。
「いびきがひどい」「日中に強い眠気がある」という方は、一度検査を受けてみてください。睡眠時無呼吸症候群と診断されれば、肥満に関連する健康障害のカウントに含まれます。
食事療法と運動療法を6か月以上続けても改善しない方が薬物治療の対象になる
ゼップバウンドの処方を受けるには、食事療法・運動療法を6か月以上継続しても十分な体重減少が得られなかったという実績が必要です。薬だけに頼る治療ではなく、生活習慣の見直しを土台とすることが大前提となります。
なぜ6か月間の生活改善が処方の前提になっているのか
肥満症の治療で大切なのは、薬を使う前にまず食事と運動による生活改善を試みることです。6か月という期間は、体重の変化を正確に評価するために必要な時間とされています。
短期間の無理なダイエットではなく、医師や管理栄養士の指導のもとで計画的に取り組むことが求められます。この期間中、2か月に1回以上の栄養指導を受けることも条件に含まれています。
栄養指導の記録は処方判定で確認される
処方を受ける際には、6か月間にどのような食事療法・運動療法を行い、どの程度の栄養指導を受けたかが評価されます。医療機関では、管理栄養士による栄養指導の内容や回数を記録しており、これが処方判定の根拠となります。
自己流のダイエットだけでは処方の要件を満たしません。まずは内科を受診し、医療チームと一緒に計画を立てるところから始めましょう。
生活習慣の改善はゼップバウンド使用中も続ける
ゼップバウンドの処方が始まった後も、食事療法と運動療法は継続します。薬の効果を高めるためには、カロリー管理や適度な運動が欠かせないからです。
臨床試験でも、食事のカロリー制限と身体活動の増加を薬と併用する形で行われており、薬だけの力で体重が減るわけではありません。日常生活のなかで無理なく続けられる運動や食事の工夫を、担当医と相談しながら見つけていきましょう。
処方までに必要な条件のまとめ
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| BMI基準 | BMI27以上(健康障害2つ以上)またはBMI35以上 |
| 必須の合併症 | 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれか |
| 生活改善の期間 | 6か月以上の食事療法・運動療法 |
| 栄養指導 | 2か月に1回以上 |
| 年齢 | 20歳以上 |
ゼップバウンドを処方できる医療機関には厳しい施設基準がある
ゼップバウンドは、厚生労働省が定める「最適使用推進ガイドライン」の対象薬剤です。そのため、どの医療機関でも処方できるわけではなく、一定の施設基準を満たした施設に限られます。
教育研修施設として認定された医療機関でなければ処方できない
ゼップバウンドを処方できるのは、日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本循環器学会のいずれかから教育研修施設として認定されている医療機関です。これは主に大学病院や総合病院などの大規模施設に限られます。
一般のクリニックでは施設基準を満たすことが難しいため、まずはかかりつけ医に相談し、条件を満たす施設を紹介してもらう流れが一般的です。
専門医と管理栄養士がチームで治療にあたる体制が求められる
| 施設要件 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 学会認定 | 内分泌・糖尿病・循環器関連の教育研修施設 |
| 専門医 | 肥満症の診療経験を持つ内科専門医の在籍 |
| 栄養指導体制 | 管理栄養士による栄養指導が実施可能 |
| 副作用対応 | 緊急時の対応体制が整備されていること |
かかりつけ医から専門施設への紹介で治療を始める方が多い
多くの方は、まずかかりつけの内科でBMIの測定や合併症の評価を受け、処方条件に該当するかどうかを確認します。条件を満たしていると判断された場合、教育研修施設として認定された医療機関への紹介状を書いてもらう流れになります。
紹介先の医療機関では、改めて精密な検査や問診を行い、ゼップバウンドの投与が適切かどうかを総合的に判断します。焦らず一つずつ準備を進めていくことが大切です。
ゼップバウンドの臨床試験ではどのくらい体重が減ったのか
ゼップバウンドの有効性は、SURMOUNT(サーマウント)と呼ばれる大規模な国際臨床試験で確認されています。72週間の治療で、プラセボ(偽薬)と比較して大幅な体重減少が認められました。
SURMOUNT-1試験では15mg投与群で約20%の体重減少
肥満または過体重で糖尿病のない成人2539名を対象としたSURMOUNT-1試験では、72週時点でゼップバウンド15mg群の平均体重減少率が約20.9%に達しました。5mg群でも約15.0%、10mg群では約19.5%の減少が報告されています。
プラセボ群の減少率が約3.1%だったことを考えると、非常に大きな差といえるでしょう。参加者の約9割が5%以上の体重減少を達成しており、多くの方が治療効果を実感できる結果でした。
日本人を対象としたSURMOUNT-J試験でも有効性が確認されている
海外で行われた試験の参加者は欧米人が大半を占めていたため、日本人への効果については別の試験で確認されました。日本国内で実施されたSURMOUNT-J試験では、BMI27以上で健康障害を2つ以上有する日本人225名を対象に調査が行われました。
72週時点で、ゼップバウンド10mg群は約17.8%、15mg群は約22.7%の体重減少を達成しています。日本人の体格や生活環境においても、ゼップバウンドが有効であることが示されたのです。
3年間の長期投与でも体重減少が維持され、2型糖尿病の発症リスクも低下した
SURMOUNT-1試験の3年間延長解析では、肥満と前糖尿病状態を合併した参加者においてゼップバウンドの長期的な効果も確認されています。176週(約3年4か月)時点で、15mg群の体重減少率は約19.7%を維持していました。
さらに注目すべきは、ゼップバウンド投与群では2型糖尿病を新たに発症した割合がわずか1.3%だった点です。プラセボ群の13.3%と比較すると、発症リスクが大幅に抑えられています。
主な臨床試験の結果
| 試験名 | 対象 | 15mg群の体重減少率 |
|---|---|---|
| SURMOUNT-1 | 肥満(糖尿病なし) | 約20.9%(72週) |
| SURMOUNT-2 | 肥満+2型糖尿病 | 約14.7%(72週) |
| SURMOUNT-J | 日本人肥満症 | 約22.7%(72週) |
| SURMOUNT-4 | 肥満(維持試験) | 約25.3%(88週) |
ゼップバウンドの副作用と安全に使うために注意したいこと
ゼップバウンドの副作用で多いのは消化器症状であり、多くは軽度から中等度で一時的なものです。安全に治療を続けるためには、副作用の特徴をあらかじめ知っておくことが大切です。
吐き気・下痢・便秘などの消化器症状が出やすい時期がある
- 吐き気(投与開始〜増量期に多い)
- 下痢(投与初期に多く、数週間で軽減することが多い)
- 嘔吐(増量時に出やすく、食事量の調整で改善しやすい)
- 便秘(体質によって出現する場合がある)
- 腹痛(用量を上げた直後に感じることがある)
投与量を段階的に増やすのは副作用を和らげるため
ゼップバウンドは2.5mgからスタートし、4週間ごとに2.5mgずつ増量する設計になっています。いきなり高用量を投与すると消化器症状が強く出やすいため、体を徐々に慣らしていく仕組みです。
増量のペースは医師が一人ひとりの状態を見て決定します。副作用がつらい場合は、増量を遅らせたり減量したりする調整も可能です。無理をせず、気になる症状は早めに担当医に伝えてください。
まれに起こる重大な副作用も知っておくと安心
頻度はまれですが、急性膵炎や胆嚢炎、重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)などの報告もあります。激しい腹痛や嘔吐が続く場合には、すぐに医療機関を受診してください。
こうした重大な副作用は、定期的な診察や血液検査によって早期に発見できます。治療期間中は主治医との連携を密にし、体調の変化を見逃さないようにしましょう。
よくある質問
ゼップバウンドはダイエット目的で処方してもらえますか?
ゼップバウンドは、医学的に「肥満症」と診断された方に限って処方される治療薬です。単に体重を減らしたい、見た目を変えたいといった美容目的では使用できません。
処方の対象となるには、BMIが27以上で肥満に関連する健康障害を2つ以上有しているか、BMIが35以上であることが必要です。加えて、6か月以上の食事療法・運動療法を試みたうえで効果が十分でなかった場合に初めて検討されます。
ゼップバウンドの治療期間はどのくらいですか?
ゼップバウンドの投与期間は、添付文書上では72週間(約1年4か月)が目安とされています。臨床試験でもこの期間で体重減少効果が十分に確認されました。
ただし、治療を中止すると体重が戻りやすいことも臨床試験で示されています。投与の継続や終了のタイミングは、体重の変化や健康障害の改善度合いを見ながら、主治医と相談して決めていく形になります。
ゼップバウンドとウゴービはどう使い分けるのですか?
ゼップバウンドとウゴービはどちらも肥満症に対して処方される注射薬ですが、作用する受容体が異なります。ウゴービはGLP-1受容体のみに作用する一方、ゼップバウンドはGIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用します。
どちらを使うかは、患者さんの病態や過去の治療歴などを踏まえて、処方施設の担当医が判断します。まずウゴービを使い、効果が十分でなかった場合にゼップバウンドへの切り替えを検討するケースもあるようです。
ゼップバウンドは近くのクリニックで処方を受けられますか?
現時点では、ゼップバウンドを処方できる医療機関は限られています。厚生労働省の最適使用推進ガイドラインにより、日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本循環器学会のいずれかから教育研修施設として認定されている施設のみが対象です。
一般的なクリニックでは施設基準を満たすことが難しいため、かかりつけ医に相談して紹介状を書いてもらい、対象の医療機関を受診するのがスムーズな流れです。
ゼップバウンドは妊娠中や授乳中でも使用できますか?
妊娠中および授乳中の方は、ゼップバウンドを使用することができません。動物実験において胎児への影響が報告されているため、妊娠の可能性がある方は投与前に必ず医師に申告してください。
妊娠を希望している方も、投与を中止してから一定期間をあける必要があります。具体的な期間については、担当医に確認することをおすすめします。
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