ゼップバウンドとマンジャロの違い|同じ成分チルゼパチドでの適応と用量

ゼップバウンドとマンジャロの違い|同じ成分チルゼパチドでの適応と用量

「ゼップバウンドとマンジャロって何が違うの?」と疑問に思い、このページにたどり着いた方は多いのではないでしょうか。結論から申し上げると、両者の有効成分はまったく同じ「チルゼパチド」です。

ただし、ゼップバウンドは肥満症の治療薬として、マンジャロは2型糖尿病の治療薬として、それぞれ異なる適応症で承認されています。用量設定は同一ですが、処方される目的やBMIなどの基準は異なります。

この記事では、肥満症に悩む方が知っておきたい両薬剤の違いを、成分から用量、副作用まで丁寧に解説いたします。

目次 Outline

ゼップバウンドとマンジャロは同じ成分チルゼパチドでも「使い道」がまったく違う

ゼップバウンドとマンジャロは有効成分がチルゼパチドで共通していますが、国が承認した「使い道」が異なります。同じ薬のように見えて別々の治療目的を持つため、正しく区別しておくことが大切です。

ゼップバウンドは肥満症治療のために開発された

ゼップバウンドは、イーライリリー社が肥満症に特化して開発した週1回皮下注射の薬です。米国では2023年にFDAから肥満治療薬として承認され、日本でも2024年12月に「肥満症」を効能・効果として承認を取得しました。

体重を減らすことそのものを治療目的としている点が、この薬の大きな特徴といえるでしょう。BMI35以上の高度肥満症、またはBMI27以上で健康障害を複数有する場合に処方の対象となります。

マンジャロは2型糖尿病の血糖コントロールが目的

一方のマンジャロは、2型糖尿病の血糖コントロール改善を目的に開発された薬です。日本では2023年4月に発売されました。食事療法や運動療法で血糖値が十分に管理できない患者さんに対して、週1回の皮下注射で使用します。

臨床試験ではHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の大幅な低下が確認されており、副次的に体重減少も期待できます。とはいえ、あくまで糖尿病治療薬という位置づけです。

ゼップバウンドとマンジャロの基本情報を比べてみると

項目ゼップバウンドマンジャロ
有効成分チルゼパチドチルゼパチド
承認された適応症肥満症2型糖尿病
投与方法週1回 皮下注射週1回 皮下注射
製造元イーライリリーイーライリリー
日本での承認時期2024年12月2022年9月

有効成分が同じなのに名前が違う理由

同じチルゼパチドでありながら製品名が異なるのは、承認された適応症ごとに別の製品として申請・審査が行われるためです。糖尿病治療薬としての審査と肥満症治療薬としての審査は、求められる臨床試験のデザインや評価項目が異なります。

そのため、同じ成分であっても「マンジャロ」と「ゼップバウンド」という別々のブランド名が付けられました。これは医薬品の世界ではごく一般的なことです。

チルゼパチドはGIPとGLP-1の両方に働きかける新しいタイプの治療薬

チルゼパチドが注目を集めている理由は、GIPとGLP-1という2種類のホルモン受容体に同時に作用する「デュアル受容体作動薬」だからです。従来のGLP-1受容体作動薬とは異なる作用を持つことで、より強い効果が期待されています。

GLP-1は食欲を抑えて満腹感を持続させる

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事の後に小腸から分泌されるホルモンです。脳の満腹中枢に作用して食欲を抑え、胃からの食べ物の排出を遅らせることで、少ない食事量でも満足感が続きやすくなります。

チルゼパチドはこのGLP-1の働きを模倣することで、食べすぎを防ぐ効果を発揮します。

GIPは脂肪代謝とインスリン分泌を同時にサポートする

GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)は、もうひとつのインクレチンホルモンです。膵臓からのインスリン分泌を促して血糖値を効率よく下げるだけでなく、脂肪組織のエネルギー代謝にも影響を与えるとされています。

チルゼパチドはGIPとGLP-1の両方に結合することで、食欲抑制と血糖改善の相乗効果を生み出しています。

デュアル作用だからこそ従来薬を上回る体重減少が報告されている

従来のGLP-1受容体作動薬であるセマグルチド(オゼンピック、ウゴービ)は、GLP-1のみに作用します。チルゼパチドはGIPの作用が加わることで、臨床試験において従来薬を上回る体重減少率を示しました。

SURMOUNT-1試験では、チルゼパチド15mg群で平均約20.9%の体重減少が達成されています。この数値は肥満症治療薬として画期的なものでしょう。

薬剤の種類作用する受容体体重減少率の目安
チルゼパチド(15mg)GIP+GLP-1約20.9%
セマグルチド(2.4mg)GLP-1のみ約15%
従来の肥満症治療薬薬剤により異なる約3〜9%

ゼップバウンドの処方条件はBMIと健康障害で厳密に決められている

ゼップバウンドは誰でも処方してもらえるわけではありません。日本では食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、かつBMIや健康障害について一定の基準を満たした方のみが対象です。

BMI35以上の高度肥満症が基本的な対象

ゼップバウンドの処方対象として、まずBMI35以上の高度肥満症が挙げられます。BMI35以上というのは、たとえば身長160cmの方であれば体重が約90kg以上に該当する水準です。

食事や運動を試みても体重が思うように減らなかった方にとって、薬物療法の選択肢が広がったことは朗報かもしれません。

BMI27以上でも健康障害を複数有する場合は対象になる

BMI35未満であっても、BMI27以上で高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有し、肥満に関連する健康障害が2つ以上ある場合にはゼップバウンドの処方対象に含まれます。

つまり、数値だけでなく合併症の有無も判断材料になります。主治医とよく相談したうえで自分が基準に該当するかどうかを確認しましょう。

ゼップバウンドの処方に求められる主な条件

条件詳細
BMI35以上高度肥満症として処方対象
BMI27以上35未満高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有し、肥満関連の健康障害が2つ以上
食事・運動療法事前に実施し、十分な効果が得られなかったこと

マンジャロの処方対象は2型糖尿病患者に限られる

マンジャロの処方対象は2型糖尿病と診断された患者さんです。糖尿病ではない方が体重管理のためにマンジャロを使うことは適応外使用にあたり、万が一重篤な副作用が出た場合に公的な救済制度の対象外になるリスクがあります。

「肥満が気になるから」という理由だけでマンジャロを希望するのは、安全面から慎重に考える必要があるでしょう。

ゼップバウンドとマンジャロの用量は2.5mgから15mgまで6段階で共通している

ゼップバウンドもマンジャロも、チルゼパチドの用量設定は2.5mg・5mg・7.5mg・10mg・12.5mg・15mgの6段階です。開始用量や増量ペースも同じで、身体が薬に慣れるよう段階的に量を増やしていく点が共通しています。

2.5mgから開始して4週間ごとに増量するのが基本

どちらの薬も、まずは2.5mgという低い用量から投与を始めます。2.5mgの段階は身体を慣らすための期間であり、この用量自体に強い治療効果を期待するものではありません。

4週間以上の間隔を置きながら2.5mgずつ増量し、医師が効果と副作用のバランスを見ながら維持用量を決定します。

維持用量は5mgから15mgの範囲で医師が判断する

増量後の維持用量は患者さんの状態によって異なります。5mgで十分な効果が得られる方もいれば、15mgまで増量する方もいるでしょう。

大切なのは、自己判断で用量を変えないことです。消化器症状などの副作用が増量に伴って強くなることもあるため、必ず担当医の指示に従ってください。

週1回の自己注射はペン型デバイスで手軽にできる

ゼップバウンドもマンジャロも「アテオス」と呼ばれるペン型の使い切りデバイスを使用します。針があらかじめ内蔵されているため、注射針を自分で取り付ける手間がかかりません。

お腹か太ももに皮下注射する方式で、毎週同じ曜日に投与します。初めて自己注射をする方でも比較的扱いやすい設計になっています。

  • 開始用量2.5mgで4週間以上の慣らし期間を設ける
  • 2.5mgずつ段階的に増量し、維持用量は5mg〜15mg
  • ペン型使い切りデバイスで針の取り付けが不要
  • 投与部位はお腹または太もも(他者が打つ場合は上腕も可)
  • 毎週同じ曜日に1回皮下注射する

チルゼパチドの体重減少効果は臨床試験で平均約20%と報告されている

チルゼパチドの臨床試験では、肥満症の方を対象に72週間の投与で平均約20.9%の体重減少が確認されました。100kgの方なら約21kgの減量に相当する数値であり、既存の薬物療法と比較して群を抜いた結果です。

SURMOUNT-1試験が示した肥満症患者への効果

SURMOUNT-1試験は、糖尿病のない肥満症または過体重の成人2,539名を対象にした大規模な臨床試験です。72週間にわたりチルゼパチド5mg・10mg・15mgまたはプラセボ(偽薬)を投与し、体重変化を評価しました。

結果として、15mg群では平均20.9%の体重減少が得られ、プラセボ群の3.1%と比べて大きな差がつきました。10mg群でも19.5%、5mg群でも15.0%の減少が報告されています。

2型糖尿病を合併した肥満症ではSURMOUNT-2試験のデータがある

糖尿病を持つ方の場合、一般的に肥満症治療薬の体重減少効果はやや控えめになるとされています。SURMOUNT-2試験は、BMI27以上で2型糖尿病を有する成人938名を対象とした臨床試験です。

72週間の投与で、15mg群は平均約14.7%、10mg群は平均約12.8%の体重減少を達成しました。糖尿病がある方でもこの水準の体重減少が得られたことは注目に値するでしょう。

SURMOUNT試験シリーズの主な結果

臨床試験名対象15mg群の体重減少率
SURMOUNT-1糖尿病のない肥満症平均約20.9%
SURMOUNT-22型糖尿病を有する肥満症平均約14.7%
SURMOUNT-4糖尿病のない肥満症(維持試験)累計約25.3%

体重が減るだけでなく血圧や脂質にも好影響が期待できる

チルゼパチドの効果は体重減少にとどまりません。臨床試験では、収縮期血圧の低下やウエスト周囲径の減少、脂質プロファイルの改善も報告されています。

肥満症は高血圧や脂質異常症などの合併症を引き起こしやすいため、体重減少を通じてこれらのリスク因子も同時に改善できる点は大きなメリットといえます。

ゼップバウンドとマンジャロに共通する副作用と注意点を必ず押さえておこう

有効成分が同じである以上、ゼップバウンドとマンジャロの副作用は基本的に共通しています。多くは消化器系の症状で、用量を段階的に上げていく期間に出やすい傾向があります。事前に知っておけば、過度に不安を感じる必要はないでしょう。

吐き気・下痢・便秘など消化器症状がもっとも多い

臨床試験で報告された副作用のうち、頻度がもっとも高かったのは吐き気(悪心)です。下痢や便秘、腹部膨満感といった消化器症状も比較的よく見られました。

これらの症状の大半は軽度から中等度にとどまり、投与を続けるうちに落ち着くことが多いとされています。増量のタイミングで一時的に症状が強まることがあるため、医師と相談しながら慎重に用量を調整することが大切です。

低血糖や急性膵炎など注意が必要な副作用もある

まれではありますが、低血糖や急性膵炎、胆のう炎といった重篤な副作用の報告もあります。低血糖は手の震えや冷や汗、強い空腹感として現れることがあり、特にスルホニルウレア薬やインスリンと併用する場合にリスクが高まります。

持続的な激しい腹痛や嘔吐が続く場合は急性膵炎の可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。

副作用が心配なときは遠慮なく担当医に伝えよう

「こんな些細なことで受診してもいいのだろうか」と遠慮してしまう方もいらっしゃるかもしれません。けれども、副作用の早期発見と対処こそが安全な治療の鍵を握ります。

気になる症状が出たときは、次の受診日まで待たずに担当医へ連絡しましょう。体調の変化を細かく伝えることで、用量の調整や対処法を一緒に考えてもらえます。

  • 吐き気・下痢・便秘・腹部膨満感などの消化器症状が出やすい
  • 低血糖のリスクは他の糖尿病薬と併用する際に高まる
  • 急性膵炎や胆のう炎はまれだが激しい腹痛が続いたら即受診
  • 多くの消化器症状は軽度〜中等度で、継続投与により改善しやすい

ゼップバウンドとマンジャロのどちらを選ぶか迷ったら必ず主治医に相談を

有効成分が同じである以上、どちらを選んでも身体に対する作用は同一です。選択の基準となるのは、自分がどの適応症に該当するか、そして担当医の判断にほかなりません。

肥満症と診断された方はゼップバウンドが選択肢に入る

ゼップバウンドとマンジャロの選び方ガイド

状況候補となる薬剤
糖尿病のない肥満症(BMI35以上等)ゼップバウンド
2型糖尿病と診断されているマンジャロ
肥満症と2型糖尿病の両方がある担当医と要相談

肥満症と診断され、食事療法や運動療法では効果が不十分だった方にとって、ゼップバウンドは有力な治療の選択肢です。処方にはBMIや合併症の基準を満たす必要があるため、まずはかかりつけの医療機関で相談してみてください。

2型糖尿病の治療中であればマンジャロが基本

すでに2型糖尿病の治療を受けている方は、主治医からマンジャロを提案される可能性が高いでしょう。血糖コントロールと体重管理を同時に進められるため、糖尿病治療の一環として使いやすい薬です。

マンジャロで血糖値を改善しつつ、結果的に体重が減少するという流れになります。

自己判断で薬を選ばず、医師の診断に基づいて使うことが安全への近道

インターネット上にはさまざまな情報があふれていますが、どの薬が自分に合うかは、BMI・合併症・生活習慣など総合的な観点から医師が判断します。成分が同じだからといって代替品のように考えるのは禁物です。

適応外で使用した場合、副作用被害の救済制度が適用されないリスクもあります。安全に治療を続けるためにも、必ず医師の指示に従いましょう。

よくある質問

ゼップバウンドとマンジャロは有効成分が同じなのに、なぜ別々の薬として販売されているのですか?

医薬品は適応症ごとに別の製品として承認申請を行うのが一般的です。マンジャロは2型糖尿病の治療薬として臨床試験を行い承認を取得しており、ゼップバウンドは肥満症の治療薬として別途臨床試験を実施し承認されました。

有効成分はどちらも同じチルゼパチドですが、対象となる患者さんの病態や評価項目が異なるため、別々のブランド名で流通しています。薬の中身は同じでも、医療現場での使い分けを明確にするための仕組みです。

チルゼパチドを使った治療では、どのくらいの期間で体重減少の効果を感じられますか?

個人差はありますが、多くの臨床試験では投与開始から12週間ほどで体重の変化が見え始め、72週間(約1年半)をかけて効果がピークに近づく傾向が報告されています。開始直後の4〜5週間は2.5mgの慣らし期間であるため、この段階では大きな体重変化を期待しにくいかもしれません。

焦らずに用量を段階的に上げながら、食事療法と運動療法を並行して続けることが、効果を引き出すうえで重要になります。

チルゼパチドの投与をやめると体重はリバウンドしますか?

SURMOUNT-4試験では、36週間チルゼパチドを投与して平均20.9%の体重減少を達成した後、プラセボに切り替えた群は52週間で体重の約14%が戻ったと報告されています。一方、そのまま投与を続けた群はさらに5.5%の体重減少を維持しました。

肥満症は慢性的な疾患であるため、治療の中断によるリバウンドのリスクは考慮しておく必要があります。投与の継続や中止については、担当医とよく話し合って決めることが大切です。

ゼップバウンドとマンジャロで副作用に違いはありますか?

有効成分が同じチルゼパチドである以上、副作用の種類や頻度に医学的な差はないと考えられています。どちらの薬を使用しても、吐き気・下痢・便秘・食欲減退といった消化器症状がもっとも多く報告されています。

また、まれに低血糖や急性膵炎が起こる可能性がある点も共通です。副作用の出方には個人差があるため、体調に異変を感じたら速やかに医師へ相談してください。

チルゼパチドの注射は痛みがありますか?

ゼップバウンドもマンジャロも、針が内蔵された使い切りペン型デバイスを使用します。針は非常に細く短いため、多くの方が「チクッとする程度」と感じています。注射の経験がない方でも、医療機関で初回の指導を受ければ自宅で安全に行えるでしょう。

投与部位はお腹や太ももが基本で、毎回同じ場所に打つのではなく少しずつずらすのがポイントです。不安がある場合は、担当の医師や看護師に実演してもらいながら練習するとよいでしょう。

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この記事を書いた人 Wrote this article

大木 沙織 大木皮ふ科クリニック 副院長

皮膚科医/内科専門医/公認心理師 略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。 所属:日本内科学会