
「ゼップバウンドが気になるけれど、自分には処方してもらえるのだろうか」「ほかに似た薬はないの?」——そんな不安を抱えている方は少なくありません。
ゼップバウンド(チルゼパチド)は2024年12月に国内で承認された肥満症治療薬ですが、処方できる医療機関や対象となる患者さんの条件が限られています。そのため、代替薬としてウゴービやマンジャロを検討する動きが広がっています。
この記事では、3つの薬の違いや特徴をわかりやすく比較しながら、あなたに合った選択肢を見つけるためのヒントをお届けします。
ゼップバウンド(チルゼパチド)の代替薬が求められている理由
ゼップバウンドは体重減少効果の高さで注目を集めていますが、現時点では処方を受けるまでのハードルが高く、代わりの治療薬を探している方が増えています。
ゼップバウンドの処方は大規模医療機関に限られている
ゼップバウンドは「適正使用推進ガイドライン」の対象薬剤に指定されており、処方できる施設は日本糖尿病学会や日本内分泌学会などの専門医が常勤する教育研修施設に限られます。つまり、多くの場合は大学病院クラスの大規模な医療機関でなければ処方を受けられません。
一般のクリニックで「ゼップバウンドを出してほしい」と希望しても、施設要件を満たさないケースがほとんどでしょう。身近な医療機関で治療を始めたい方にとって、この制限は大きな壁となっています。
薬価収載後1年間は2週間分しか処方できない
新薬には処方日数の制限があり、ゼップバウンドも薬価収載から約1年間は最大2週間分の処方しか認められていません。2週間ごとに通院する負担は、仕事や家庭を抱える方にとって軽くはないでしょう。
この通院頻度のハードルから、すでに長期処方が可能になっているウゴービへ目を向ける方もいらっしゃいます。
ゼップバウンドと代替候補薬の基本情報
| 薬剤名 | 一般名 | 投与頻度 |
|---|---|---|
| ゼップバウンド | チルゼパチド | 週1回皮下注射 |
| ウゴービ | セマグルチド | 週1回皮下注射 |
| マンジャロ | チルゼパチド | 週1回皮下注射 |
処方条件を満たしても「すぐに使えるわけではない」
BMIや合併症の条件をクリアしていても、まず6か月以上の食事療法・運動療法を実施し、それでも十分な効果が得られない場合に初めて薬物治療の対象になります。すぐに薬を処方してもらえるわけではないため、並行して別の選択肢を把握しておくことが大切です。
ウゴービ(セマグルチド)でゼップバウンドの代わりは務まるのか
ウゴービはゼップバウンドに先行して発売されたGLP-1受容体作動薬であり、十分な体重減少効果と心血管リスク低減のエビデンスを持つ薬剤です。
ウゴービの作用はGLP-1受容体への単独作用
ウゴービの有効成分セマグルチドは、GLP-1というホルモンの働きを模倣して食欲を抑え、胃の動きをゆっくりにする作用があります。脳の満腹中枢に直接はたらきかけるため、「お腹が空かなくなった」と感じる方が多いのが特徴です。
一方、ゼップバウンドはGLP-1に加えてGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)にも作用する「二重受容体作動薬」という点で、作用の幅が異なります。
臨床試験で報告された体重減少率の違い
ウゴービを用いた国際共同試験(STEP 1試験)では、68週間の投与で平均14.9%の体重減少が報告されています。これは体重100kgの方なら約15kgの減量に相当する数値です。
日本人を含む東アジア人を対象としたSTEP 6試験でも、ウゴービ2.4mgで約13.2%の減少が確認されました。一方、ゼップバウンドはSURMOUNT-1試験で15mg投与群において約20.9%の減少を達成しており、数値上はゼップバウンドのほうが上回ります。
心血管リスクの低減という独自の強み
ウゴービには、ゼップバウンドにはないエビデンスが1つあります。SELECT試験では、糖尿病のない心血管疾患患者を対象に、セマグルチド2.4mgが主要心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中・心血管死)のリスクを20%低減させたと報告されました。
心臓や血管に不安を抱える方にとって、この結果は治療薬選びの判断材料になるかもしれません。ゼップバウンドについても同様のアウトカム試験(SURMOUNT-MMO)が進行中ですが、結果はまだ出ていません。
ゼップバウンドとウゴービの効果比較
| 項目 | ゼップバウンド | ウゴービ |
|---|---|---|
| 体重減少率 | 約15〜20% | 約13〜15% |
| 作用する受容体 | GIP+GLP-1 | GLP-1のみ |
| 心血管イベント低減 | 試験進行中 | 20%低減(SELECT試験) |
マンジャロとゼップバウンドは同じ成分なのに何が違うのか
マンジャロとゼップバウンドはどちらもチルゼパチドを有効成分とする薬剤ですが、承認されている適応症が異なります。この違いを正しく知ることが、治療の選択に直結します。
マンジャロは2型糖尿病治療薬として承認されている
マンジャロは2023年4月から日本国内で使用されており、適応症は「2型糖尿病」です。血糖コントロールを改善する目的で開発され、体重減少は副次的な効果として報告されています。
そのため、糖尿病の診断を受けていない方がマンジャロを肥満治療目的で使用することは、添付文書上の適応外にあたります。
ゼップバウンドは「肥満症」に特化した適応を持つ
ゼップバウンドは、マンジャロと同一成分ながら「肥満症」を対象に改めて臨床試験を行い、承認を取得した薬剤です。用量設定や投与対象者の基準がマンジャロとは異なる部分もあるため、同じ成分であっても別の薬として扱われています。
マンジャロとゼップバウンドの違い
| 項目 | マンジャロ | ゼップバウンド |
|---|---|---|
| 有効成分 | チルゼパチド | チルゼパチド |
| 適応症 | 2型糖尿病 | 肥満症 |
| 承認時期(日本) | 2023年4月 | 2024年12月 |
2型糖尿病を合併している肥満患者にはマンジャロが選択肢になる
もし肥満症に加えて2型糖尿病の診断も受けているなら、マンジャロを糖尿病治療として処方してもらい、その体重減少効果も享受できる可能性があります。SURMOUNT-2試験では、2型糖尿病を有する肥満患者に対してチルゼパチド15mgを72週間投与した結果、約14.7%の体重減少が得られました。
糖尿病の有無によって治療のアプローチが変わるため、ご自身の健康状態を主治医とよく共有することが大切です。
ゼップバウンド・ウゴービ・マンジャロの副作用を見比べてみよう
3つの薬はいずれも消化器系の副作用が出やすい傾向にあり、吐き気や下痢は共通した注意点です。ただし、副作用の頻度や程度には個人差があります。
代表的な副作用は吐き気・便秘・下痢
GLP-1受容体作動薬に共通する副作用として、吐き気、嘔吐、便秘、下痢などの消化器症状が挙げられます。これらの症状は投与開始から用量を段階的に上げていく「漸増期間」に出やすく、体が薬に慣れてくると軽減されることが多いと報告されています。
SURMOUNT-5試験(ゼップバウンドとウゴービの直接比較試験)では、消化器系の副作用による投与中止率はゼップバウンド群で2.7%、ウゴービ群で5.6%でした。ゼップバウンドのほうが消化器症状での脱落がやや少ない傾向が示されています。
重篤な副作用が報告されるケースはまれ
臨床試験全体を通じて、重篤な副作用の発生率は低い水準に留まっています。急性膵炎や胆のう関連の症状がごくまれに報告されていますが、因果関係が明確でないものも含まれます。
とはいえ、膵炎の既往がある方や甲状腺髄様がんの家族歴がある方には使用が推奨されないため、事前に主治医へ伝えてください。
投与中止後のリバウンドは3つの薬に共通する課題
いずれの薬でも、投与を中止すると減った体重の40〜60%が戻るという報告があります。SURMOUNT-4試験では、チルゼパチドの投与をやめた群は1年間で約14%の体重が戻ったのに対し、継続群はさらに5.5%の追加減量を達成しました。
肥満症は高血圧や糖尿病と同様に長期的な管理が求められる慢性疾患です。薬をやめればすべて解決、という性質のものではないことを覚えておきましょう。
3剤の副作用プロファイル
| 項目 | ゼップバウンド | ウゴービ |
|---|---|---|
| 主な副作用 | 吐き気・便秘・下痢 | 吐き気・便秘・下痢 |
| 消化器系での中止率 | 2.7% | 5.6% |
| 投与中止後のリバウンド | あり | あり |
肥満症治療薬の適応条件と処方までに越えなければならない壁
ゼップバウンドもウゴービも、誰でも気軽に処方してもらえる薬ではありません。BMIや合併症の基準に加え、施設要件や事前の生活指導期間など、複数のハードルを乗り越える必要があります。
BMIと合併症による対象者の線引き
ゼップバウンドとウゴービに共通する適応条件は、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法で十分な効果が得られないことです。さらに、BMI 27以上で肥満関連の健康障害が2つ以上あるか、BMI 35以上であることも求められます。
6か月以上の生活指導を経て初めて薬物治療が検討される
薬を処方する施設で食事療法や運動療法の指導を6か月以上受け、それでも減量目標を達成できない場合に、ようやく薬物療法の検討が始まります。「薬さえ飲めば痩せられる」という考え方ではなく、生活習慣の改善と薬のはたらきを組み合わせる姿勢が欠かせません。
- 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを治療中であること
- BMI 27以上かつ肥満関連の健康障害が2つ以上、またはBMI 35以上
- 処方施設で6か月以上の食事・運動指導を受けても効果が十分でないこと
- 専門医が常勤する教育研修施設であること
専門医のいる施設でなければ処方を受けられない
繰り返しになりますが、ゼップバウンドもウゴービも、肥満症治療に関連する学会の専門医が常勤する教育研修施設に限って処方が認められています。お住まいの地域によっては、通院可能な範囲に該当施設がないこともあるでしょう。
まずはかかりつけ医に相談し、紹介状を書いてもらうところからスタートしてみてください。
食事療法と運動療法の併用が肥満治療薬の効果を大きく左右する
どの薬を使うにせよ、食事療法と運動療法を並行して続けることが減量効果を高め、リバウンドを防ぐ土台になります。薬だけに頼る治療では、期待する成果は得られにくいでしょう。
摂取カロリーの見直しが減量の出発点になる
肥満症治療のガイドラインでは、1日の摂取カロリーを理想体重×25kcal以下に設定することが推奨されています。たとえば身長160cmの方であれば、理想体重は約56kgとなり、1日の目標カロリーはおよそ1400kcalです。
極端な糖質制限よりも、バランスのよい食事で総カロリーを抑えるほうがリバウンドしにくいと考えられています。
週150分以上の運動習慣が体重維持の鍵を握る
中強度の有酸素運動を週150分以上行うことが、多くのガイドラインで推奨されています。通勤時にひと駅分歩いたり、休日に30分のウォーキングを取り入れたりするだけでも、日常に運動を組み込むことは可能です。
薬と生活改善の「二人三脚」で成果を積み上げる
臨床試験では、食事療法・運動療法に薬を上乗せすることで、生活指導だけの場合より大きな体重減少が得られることが繰り返し示されています。SURMOUNT-3試験では、12週間の集中的な生活改善プログラムの後にチルゼパチドを追加投与したところ、さらなる減量が達成されました。
薬は生活改善の「パートナー」であって、「代役」ではありません。両方を続けることで、無理なく健康的な体重に近づけます。
- 1日の摂取カロリーを理想体重×25kcal以下に設定する
- 週150分以上の中強度の有酸素運動を心がける
- 薬の効果を引き出すために生活習慣の改善を並行して続ける
ゼップバウンドの代替薬を検討するなら主治医との対話がすべての始まり
自分に合った治療薬を見つけるには、インターネットの情報だけでなく、主治医と直接対話しながら判断を進めることが何よりも大切です。
合併症や体質によって「合う薬」は一人ひとり違う
たとえば2型糖尿病を合併している方にはマンジャロが有力な選択肢になり得ますし、心血管疾患のリスクが高い方にはウゴービが適しているかもしれません。BMI、年齢、既往歴、現在服用中の薬など、多くの要素を総合的に判断する必要があるため、一概に「この薬がベスト」とは言い切れません。
治療薬の選択で考慮すべきポイント
| 状況 | 検討候補 | 根拠 |
|---|---|---|
| 糖尿病あり | マンジャロ | 糖尿病治療薬として承認済み |
| 心血管リスク高 | ウゴービ | SELECT試験でリスク低減を実証 |
| 減量効果を重視 | ゼップバウンド | SURMOUNT-5試験で優越性を確認 |
セカンドオピニオンも積極的に活用する
肥満症治療は長期にわたるものです。もし現在の主治医の方針に疑問を感じたら、別の専門医にセカンドオピニオンを求めることもひとつの手段です。日本肥満学会が認定する肥満症専門医は全国に在籍していますので、お住まいの地域で探してみてください。
焦らず、自分のペースで治療を続けることが結果につながる
体重管理は短期間で完了するものではなく、長い目で見て取り組む慢性疾患の治療です。薬の切り替えや追加にはタイミングの見極めも必要ですから、主治医と定期的に話し合いながら、無理のないペースで治療を進めていきましょう。
情報を集めることは大切ですが、それを自分の状況に当てはめて判断する場面では、信頼できる医療者の力を借りるのが最善の方法です。
よくある質問
ゼップバウンドとウゴービはどちらのほうが体重減少効果が高いですか?
ゼップバウンドとウゴービを直接比較したSURMOUNT-5試験では、72週時点の体重減少率はゼップバウンド群が20.2%、ウゴービ群が13.7%でした。統計的にもゼップバウンドが優越性を示しています。
ただし、体重減少率には個人差がありますし、心血管保護のエビデンスなど体重以外の効果も含めて総合的に判断することが大切です。どちらが自分に合っているかは、合併症の有無や生活環境をふまえて主治医と相談してください。
マンジャロを肥満症の治療目的で使用することはできますか?
マンジャロの承認適応症は「2型糖尿病」であり、肥満症の治療薬としては承認されていません。ゼップバウンドと同じチルゼパチドを有効成分としていますが、適応外での使用となるため、原則として肥満目的の処方は行われません。
2型糖尿病を合併している肥満患者の場合は、糖尿病治療の一環としてマンジャロが処方される可能性があり、結果として体重減少の恩恵を受けられるケースがあります。
ゼップバウンドやウゴービの副作用で多いのはどのような症状ですか?
ゼップバウンドとウゴービに共通して報告される副作用は、吐き気、便秘、下痢などの消化器症状です。これらは薬の用量を段階的に増やしていく初期の漸増期間に出やすく、体が慣れるにつれて軽くなることが多いと報告されています。
重篤な副作用はまれですが、急性膵炎や胆のう障害がごく少数報告されています。体調に異変を感じた場合は、すぐに主治医へ連絡することをおすすめします。
ゼップバウンドの投与を中止した場合、体重はリバウンドしますか?
SURMOUNT-4試験の結果では、36週間のチルゼパチド投与で約20.9%減量した後、薬をプラセボに切り替えた群は52週間で約14%の体重が戻りました。一方、投与を継続した群はさらに5.5%の追加減量を達成しています。
肥満症は長期的に管理が必要な慢性疾患であり、投与中止後のリバウンドは多くの肥満治療薬に共通する課題です。薬をいつまで続けるかは、主治医と相談しながら決めていくことになります。
ゼップバウンドは日本人の肥満症患者にも効果が確認されていますか?
日本人を対象としたSURMOUNT-J試験では、チルゼパチド10mgで約18.8%、15mgで約22.1%の体重減少が72週時点で報告されています。約95%の参加者が5%以上の減量を達成しており、日本人の肥満症患者にも有効性が確認された結果となっています。
副作用のプロファイルも海外の試験と大きな違いはなく、消化器症状が中心でした。投与中止に至るような重い副作用の頻度は低く抑えられています。
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