
「ゼップバウンドを使ってみたいけれど、自分は対象になるのだろうか」「処方前にどんな準備が必要なの?」と気になっている方は多いのではないでしょうか。
ゼップバウンドはBMI27以上で肥満に関連する健康障害を2つ以上お持ちの方、もしくはBMI35以上の方が対象となる肥満症治療薬です。処方前には血液検査や生活習慣の確認など、いくつかの準備があります。
この記事では、処方対象の基準から事前検査の内容、医療機関の選び方まで、ゼップバウンドの治療をスムーズに始めるために知っておきたい情報をわかりやすくまとめました。
ゼップバウンドの処方対象となるBMI基準は2パターンに分かれる
ゼップバウンドの処方対象は、BMI27以上とBMI35以上の2つの基準で判断されます。どちらに該当するかによって、満たすべき条件が異なるため、まずご自身のBMIを把握することが大切です。
BMI27以上35未満の方は肥満関連の健康障害が2つ以上必要
BMIが27以上35未満の方がゼップバウンドの処方対象になるには、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有していることに加え、肥満に関連する健康障害を2つ以上合併している必要があります。たとえば、耐糖能異常と脂質異常症を同時にお持ちの場合などが該当します。
なお、肥満に関連する健康障害には耐糖能障害や脂質異常症だけでなく、非アルコール性脂肪性肝疾患や閉塞性睡眠時無呼吸症候群なども含まれます。ご自身では気づいていない合併症が見つかるケースもあるため、専門の医療機関で総合的に評価してもらうとよいでしょう。
BMI35以上の高度肥満に該当する方の処方条件
BMIが35以上の場合は、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有していれば処方対象となります。BMI27以上35未満の方と比べると条件が緩和されていますが、それでも「単なる肥満」だけでは対象になりません。
高度肥満症は心血管疾患や呼吸器疾患などのリスクが高いため、医学的に減量が急がれる状態といえます。そのぶん、薬物療法の効果も大きく期待できるでしょう。
BMI別の処方条件まとめ
| BMI区分 | 必要な併存疾患 | 健康障害の数 |
|---|---|---|
| 27以上35未満 | 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれか | 2つ以上 |
| 35以上 | 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれか | 条件なし |
「肥満」と「肥満症」は別の概念であることを忘れないで
日本肥満学会の定義では、BMI25以上は「肥満」とされますが、肥満に起因する健康障害がなければ「肥満症」とは診断されません。ゼップバウンドの適応はあくまで「肥満症」と診断された方に限られるため、BMIの数値だけで処方の可否は決まらないという点は覚えておいてください。
「太っている=対象になる」というわけではなく、健康障害の有無を含めた医師の総合的な判断が求められます。
ゼップバウンドの処方前に行う血液検査と健康診断の具体的な中身
ゼップバウンドの処方にあたっては、事前に血液検査や身体計測を行い、現在の健康状態を正確に把握する必要があります。これらの検査結果は処方の可否を判断する材料になるだけでなく、治療開始後の効果測定にも活用されます。
HbA1cや空腹時血糖で耐糖能の状態を確認する
まず確認されるのが血糖に関する指標です。HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は過去1〜2か月間の平均的な血糖値を反映する数値で、糖尿病や耐糖能異常の有無を判断するうえで欠かせません。
空腹時血糖値が110〜125mg/dLの範囲にある場合、耐糖能異常と評価されることがあります。また、75g経口ブドウ糖負荷試験で2時間後の血糖値が140〜199mg/dLの場合も同様です。ゼップバウンドの臨床試験でも、こうした基準が採用されていました。
脂質プロファイルと肝機能もチェック対象になる
空腹時の中性脂肪(トリグリセリド)が150mg/dL以上の場合は、高トリグリセリド血症として肥満関連の健康障害に数えられます。あわせて総コレステロールやLDL・HDLコレステロールも測定し、脂質異常症の有無を総合的に評価します。
さらに、非アルコール性脂肪性肝疾患の有無を確認するために肝臓の脂肪含有率や肝機能の数値(AST・ALT・γ-GTP)も調べます。肝臓脂肪含有率が5%以上の場合、非アルコール性脂肪性肝疾患に該当する可能性があります。
体重・腹囲・血圧の基本的な身体計測も行われる
血液検査に加えて、身体計測も処方前の評価に含まれます。体重とBMIの算出はもちろん、腹囲(ウエスト周囲径)も測定されます。内臓脂肪の蓄積度合いを推定するために腹囲は有用な指標です。
血圧測定も行われ、収縮期血圧(上の血圧)が高い場合は高血圧として処方条件のひとつに該当します。これらの身体計測データは治療開始後の経過観察でも継続的に記録されるため、比較のベースラインとなる初回測定は特に丁寧に行われるでしょう。
処方前に行われる検査項目一覧
| 検査カテゴリ | 主な項目 | 評価の目的 |
|---|---|---|
| 血糖関連 | HbA1c、空腹時血糖、75gOGTT | 耐糖能異常・糖尿病の判定 |
| 脂質関連 | 中性脂肪、LDL、HDL | 脂質異常症の評価 |
| 肝機能 | AST、ALT、γ-GTP | 脂肪肝の有無 |
| 身体計測 | 体重、腹囲、血圧 | 肥満度と循環器リスク |
食事・運動療法で十分な効果が出なかった方がゼップバウンドに進める
ゼップバウンドは、食事療法・運動療法を十分に行ったうえで減量効果が不十分だった場合にのみ処方が認められています。「まだ生活習慣の改善を試していない」という段階では、すぐに薬物療法を始めることはできません。
少なくとも6か月間の生活習慣指導が前提になる
日本の肥満症診療ガイドラインでは、薬物療法の検討に入る前に栄養指導と運動指導を含む生活習慣改善に取り組むことが求められています。目安は概ね6か月程度で、この期間に管理栄養士や医師から食事内容の見直しや適度な運動習慣の定着について指導を受けます。
「6か月間頑張ったけれど3%の減量にも届かなかった」という方は、薬物療法の対象として検討される段階に入ったといえるでしょう。
食事療法のカロリー制限と運動療法の具体的な推奨量
ゼップバウンドの臨床試験でも、参加者全員が食事のカロリー制限と身体活動の増加を並行して行っていました。日本人を対象としたSURMOUNT-J試験では、試験期間中にすべての参加者が管理栄養士による食事・運動カウンセリングを受けています。
- カロリー制限による食事管理(医師・管理栄養士の指導のもとで実施)
- 週150分以上の中等度の有酸素運動(速歩やサイクリングなど)
- 行動変容のカウンセリング(食事記録や目標設定のサポート)
「努力が足りなかったのでは」と自分を責める必要はない
肥満症は遺伝的要因やホルモンバランスなど、個人の意志だけではコントロールしきれない要因が複雑に関わる慢性疾患です。食事制限や運動を懸命に続けても体重が減りにくい体質の方がいることは、医学的に認められている事実です。
生活習慣の改善で十分な結果が得られなかったとしても、それは「怠けていた」ということではありません。薬物療法は、努力を補い、身体の仕組みにはたらきかけるひとつの選択肢だと考えてください。
内視鏡治療や減量手術の予定がある場合は対象外になる
ゼップバウンドの臨床試験では、肥満に対する内視鏡治療や外科的手術を受けた方、もしくは手術を予定している方は除外基準に含まれていました。同様に、過去90日以内に体重が5kg以上変動している場合や、ほかの減量目的の薬を使用中の場合も処方対象から外れます。
こうした除外基準があるのは、薬の効果を正確に評価するためだけでなく、安全性を確保するうえでも大切な条件です。
ゼップバウンドを処方できる医療機関は限られている
ゼップバウンドは一般的なクリニックで気軽に処方してもらえる薬ではありません。厚生労働省の定める「使用推進ガイドライン」に基づき、処方が可能な施設には厳しい要件が課されています。
学会認定の教育研修施設でなければ処方できない
ゼップバウンドを処方するには、日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本循環器学会のいずれかから教育研修施設として認定されていることが求められます。そのため、処方が可能な施設は主に大学病院や総合病院などの大規模医療機関に限定されるでしょう。
かかりつけ医がこうした施設の要件を満たしていない場合は、専門施設への紹介状を書いてもらう流れになることが一般的です。
専門医と管理栄養士が常勤していることも条件に含まれる
処方施設の要件として、肥満症診療に精通した専門医の常勤が必要です。加えて、管理栄養士による栄養指導を実施できる体制が整っていることも条件に挙げられています。
これは、万が一の副作用に迅速に対応するためであると同時に、薬物療法を安全かつ効果的に進めるために、多職種の連携が必要だからです。
受診前に処方可能な医療機関をリサーチしておこう
「せっかく受診したのに、ゼップバウンドは扱っていないと言われた」という事態を防ぐために、受診前に医療機関の公式サイトを確認したり、電話で問い合わせたりしておくのが賢明です。
一部の医療機関ではウゴービ(セマグルチド)は処方できるがゼップバウンドは取り扱っていないというケースもあります。取り扱い薬剤は施設ごとに異なるため、事前の情報収集が欠かせないでしょう。
処方施設の主な要件
| 要件カテゴリ | 具体的な条件 |
|---|---|
| 学会認定 | 日本内分泌学会・糖尿病学会・循環器学会のいずれかの教育研修施設 |
| 人員体制 | 肥満症診療の専門医が常勤していること |
| 栄養指導 | 管理栄養士による指導体制が整備されていること |
| 緊急対応 | 重篤な副作用発生時に迅速に対応できる体制 |
ゼップバウンドの投与スケジュールと用量の増やし方を事前に確認しよう
ゼップバウンドは週1回の皮下注射で投与し、段階的に用量を増やしていく薬です。治療を始める前に投与スケジュールの全体像を把握しておくと、安心して治療に臨めます。
開始用量は2.5mgで4週間ごとに2.5mgずつ段階的に増量する
ゼップバウンドの投与は週1回2.5mgからスタートします。身体が薬に慣れるのを待ちながら、4週間ごとに2.5mgずつ用量を上げていき、維持用量である10mgを目指すのが標準的な流れです。
患者さんの状態に応じて5mgまで減らしたり、15mgまで増やしたりすることも可能です。2.5mg・5mg・7.5mg・10mg・12.5mg・15mgの6段階が用意されているため、きめ細かな調整ができます。
投与を忘れてしまったときの対処法
もし投与を忘れてしまった場合、次回の投与予定日まで3日以上あれば気づいた時点で注射してください。3日未満しか空いていない場合はスキップし、次のあらかじめ決めた曜日に投与する形になります。
ゼップバウンドの用量と投与スケジュール
| 投与期間 | 用量 | 備考 |
|---|---|---|
| 1〜4週目 | 2.5mg | 開始用量 |
| 5〜8週目 | 5.0mg | 第1回増量 |
| 9〜12週目 | 7.5mg | 第2回増量 |
| 13週目以降 | 10mg | 標準維持用量 |
| 必要に応じて | 12.5〜15mg | 4週間以上の間隔で増量可 |
新薬のため処方日数に制限がある点に注意
ゼップバウンドは2025年4月に発売された新薬です。新薬は発売から約1年間、処方日数が原則14日分に制限されます。そのため、2週間ごとに通院して処方を受ける必要がある点は事前に知っておきましょう。
通院頻度が高くなる分、医師や管理栄養士と定期的に状態を共有できるメリットもあります。治療の初期段階は副作用の有無を確認する期間でもあるため、こまめなフォローアップは安全面でもプラスになるでしょう。
ゼップバウンドの副作用に備えて事前に押さえておきたい注意点
ゼップバウンドの副作用は主に消化器系の症状で、多くは軽度から中等度にとどまります。あらかじめ起こりうる症状を知っておくと、過度に不安にならず冷静に対処できるはずです。
吐き気・下痢・嘔吐は増量期に起こりやすい
臨床試験で報告された副作用のなかで多かったのは、吐き気・下痢・嘔吐などの消化器症状でした。SURMOUNT-1試験のデータによると、これらの症状は投与開始から用量を段階的に上げていく最初の20週間に集中する傾向がみられました。
つまり、身体が薬に順応していく過程で一時的に生じるケースが大半です。多くの方は投与を続けるうちに症状が落ち着いていくと報告されています。
副作用が原因で投与を中止した割合は少ない
SURMOUNT-1試験では、副作用を理由に投与を中止した参加者の割合は5mg群で4.3%、10mg群で7.1%、15mg群で6.2%でした。プラセボ群(偽薬)の中止率2.6%と比較しても、大きくかけ離れた数値ではありません。
もちろん、副作用の感じ方には個人差がありますので、体調に異変を感じた場合は自己判断で投与を中止せず、速やかに主治医に相談してください。
甲状腺疾患や膵炎の既往歴がある場合は必ず医師に伝える
GIP/GLP-1受容体作動薬に共通する注意事項として、甲状腺髄様がんの家族歴がある方や、膵炎の既往歴がある方は慎重に使用する必要があります。処方前の問診で聞かれますが、ご自身からも積極的に医師へ伝えるようにしてください。
- 甲状腺疾患(とくに甲状腺髄様がん)の本人または家族の既往歴
- 急性膵炎や慢性膵炎の既往歴
- 重度の胃腸障害(胃不全麻痺など)
- 腎機能障害や肝機能障害の有無
ゼップバウンド開始前に整えておきたい日常生活の準備と心構え
薬による治療効果を引き出すには、日常生活の土台をしっかり整えておくことが大切です。処方が決まってからではなく、受診を検討している段階から少しずつ準備を始めると、治療がスムーズに進みます。
食事記録と体重記録の習慣を今日から始めよう
毎日の食事内容や体重を記録する習慣は、治療の効果を客観的に把握するための基盤になります。スマートフォンのアプリを使えば手軽に続けられるでしょう。
治療開始前に揃えておきたいもの
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 体重計 | 小数点以下まで計測できるデジタル体重計が望ましい |
| 記録ツール | 食事記録アプリや手帳など続けやすい方法を選ぶ |
| 腹囲計測 | メジャー(巻き尺)を用意し自宅でも計測できるようにする |
週1回の注射に対する不安を減らすために知っておくべきこと
ゼップバウンドは使い切りのペン型注射器で、お腹や太ももの皮下に自分で注射します。初めて自己注射を行う方にとっては大きなハードルに感じるかもしれませんが、初回は医療者が丁寧に手技を指導してくれます。
針は非常に細く、痛みはほとんど感じないという方が多いようです。ペン型注射器は操作が簡単に設計されているため、慣れてしまえば数分で完了します。
治療は長期戦だからこそ、無理のないペースで臨む
ゼップバウンドの臨床試験は72週間にわたる長期間の投与で評価が行われました。肥満症は慢性疾患であり、短期間で劇的に改善するものではありません。数か月単位で焦らず取り組む姿勢が求められます。
投与を中止するとリバウンドが起こる可能性も臨床試験で示されています。SURMOUNT-4試験では、投与を中止した群で14%の体重増加がみられた一方、継続した群ではさらに5.5%の減量が進んだと報告されました。医師と相談しながら、無理なく治療を継続する計画を立てていきましょう。
よくある質問
ゼップバウンドはどのくらいの期間で効果が実感できますか?
ゼップバウンドの臨床試験(SURMOUNT-1試験)では、投与開始から72週間で15mg群が平均約20.9%の体重減少を達成しました。多くの参加者は投与開始後3〜6か月ごろから体重の減少を実感し始めています。
ただし、効果の出方には個人差があり、食事療法・運動療法の取り組み状況によっても変わります。焦らず、医師と定期的に経過を確認しながら治療を続けることが大切です。
ゼップバウンドとウゴービの違いは何ですか?
ゼップバウンドはGIP受容体とGLP-1受容体の両方にはたらきかける薬(チルゼパチド)であるのに対し、ウゴービはGLP-1受容体のみに作用する薬(セマグルチド)です。2つの受容体に同時にアプローチする点がゼップバウンドの特徴です。
臨床試験の結果を比較すると、ゼップバウンドのほうがより大きな体重減少効果を示しています。どちらの薬が自分に適しているかは、主治医と相談のうえで判断してもらうのがよいでしょう。
ゼップバウンドの投与を中止するとリバウンドしますか?
SURMOUNT-4試験では、36週間のゼップバウンド投与後にプラセボ(偽薬)に切り替えた群で、52週間のうちに体重が約14%増加したことが報告されています。一方、投与を継続した群ではさらに約5.5%の減量が進みました。
肥満症は高血圧や糖尿病と同じく慢性的な管理が求められる疾患です。投与中止後のリバウンドリスクも踏まえ、治療期間や中止のタイミングについては医師としっかり相談してください。
ゼップバウンドは糖尿病の方にも処方されますか?
ゼップバウンドの成分であるチルゼパチドは、糖尿病治療薬「マンジャロ」と同一成分です。ただし、ゼップバウンドは肥満症の治療を目的として承認された製剤であり、マンジャロは2型糖尿病の治療を目的とした製剤です。
2型糖尿病を合併している肥満症患者さんにもゼップバウンドは処方される場合がありますが、適応は医師の判断によります。糖尿病治療としてマンジャロを使用中の方は、主治医と治療方針を改めて確認してみてください。
ゼップバウンドの日本人を対象とした臨床試験の結果はどうでしたか?
日本人を対象としたSURMOUNT-J試験では、ゼップバウンド10mg群で94%、15mg群で96%の方が5%以上の体重減少を達成しました。プラセボ群では20%にとどまっており、明確な差が確認されています。
日本人の参加者においても、世界規模の試験と同様に良好な有効性と安全性が示されました。副作用は消化器症状が中心で、投与中止に至った割合は低かったと報告されています。
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