AGAってなんとなくおじさんのイメージだけど、サークルの先輩の髪の毛は既に怪しい感じ。

予防のためにも治療は早いうちが肝心っていうけれど、何歳からできるのかな、学生でもできるのかな。

そういえば叔父さんもAGA治療しようかなって言ってたけど、何歳までできるのだろう。

叔父さん、もう結構脱毛進んでるけどどうなんだろう…ああなる前に治療したい!“

ojisan おじさん AGA 脱毛

この記事のポイント

  • AGAの治療薬そのものに年齢制限はない
  • 年齢とともに現れる持病や社会的な問題が制限を決める
  • AGAを発症したからといって必ず治療する必要があるというわけではない
  • 予防したいのなら発症してからなるべく早めに薬を始めましょう
  • 発症の兆しを見逃さないよう、頭髪に気を配りましょう

この記事を書いた医師

大木皮ふ科クリニック院長大木沙織

名前:大木 沙織
大木皮ふ科クリニック 副院長
皮膚科医/内科専門医/公認心理師
略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。

本文中の上付き数字1)2)3)は論文引用箇所で文末に論文名を記載しています

AGA治療薬の年齢制限は?治療効果は適正な年齢で

電車の広告、街の看板、テレビのCMからネットまでAGA、AGA、AGA…でも、ターゲットの年齢層は何歳なのでしょう。

さすがに子供向け番組のCMまでは進出していないようなので少なくとも子供の年齢ではないと思いますが、それ以外の人々には幅広く響く言葉「AGA治療」。

響くといっても、どんな治療でも適切な年齢というものがあるはず、AGA治療の場合はどうでしょうか。

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年齢制限はクリニックごとに個別に設定されているものの、何歳からというのはだいたい同じで20歳以上が条件です。

AGAの治療薬として代表的な成分「デュタステリド」そのものの治験は18歳以上から行われていて、安全性も担保されています1)

20歳という年齢制限は薬自体による制限というよりは社会的に設けられた制限ではあるものの、効果から考えても20歳という年齢は妥当でしょう。一方何歳までというのは意見が分かれるもの。

こちらも薬としては何歳まで飲み続けても大丈夫なものではあるからです。「デュタステリド」はもともと「アボルブ」という「前立腺肥大症」(ぜんりつせんひだいしょう)の治療薬2)

おしっこの通り道である尿道(にょうどう)を取り囲む前立腺が大きくなってしまうことでおしっこが出にくくなってしまう病気で、高齢になるほど発症する人が多い傾向にあります。

そのためアボルブは副作用の問題がない限りは高齢になってからもずっと飲み続けられる薬です。

ということはAGA治療薬としてのデュタステリドも同じで、何歳までという薬の問題としての年齢制限はありません

とはいえ実際の効果を考えると、いくら薬として問題ない年齢だからといってもAGA治療として続けることには限界があることも。

どんなに見積もっても80歳までが限度でしょうし、その年くらいまでを年齢制限としているクリニックも多いようです。

脱毛は何歳から始まる?気になる年齢別発症率

AGA治療はほぼ全ての年齢層が受けられるということが判明したことで、次に気になることが「実際のところ、何歳から脱毛が気になりだしてAGA治療を検討し始めるの?」。気になる年齢別発症率はこちら。

年代発症率
20代20%
30代30%
40代40%
50代50%
60代以上60%

イメージに違わずAGAは年齢が上がるにつれて発症率が上がりますが、次に気になるのがその理由。ここでAGAを発症する原因を再確認しましょう。

直接的には男性ホルモンのひとつ「ジヒドロテストステロン」が額とつむじの脱毛を促すからですが3-5)、ここで注目するのが何かと便利なことば、ホルモンです。

何かと話題になるホルモン。何かと原因にされがちなホルモンバランス。AGAに関してはダイレクトにホルモンが影響している分、よりホルモンバランスが問題になりがちです。

AGAが発症しやすいホルモンバランスになってしまう理由6,7)は、

  • 遺伝
  • 生活習慣
  • ストレス

そしてこれらは年齢とともに積み重なりがち。こうしてAGAの年齢別発症率は歳とともに増加していくのです。

sutoresu ストレス 積み重ね つみかさね

AGA治療の年齢層は何歳から何歳まで?

年齢とともにAGAの発症率は増加するとしても、肝心のAGA治療を受けるかどうかは別の話。実際にAGA治療を受けている年齢層はこちら。

年代治療率
20代15%
30代30%
40代25%
50代20%
60代以上10%

こちらも想像通り3、40代が多く、これらの人だけで実に半分以上です。先ほどの年齢別発症率とは少しちがう答えが出ましたね。

治療そのものは何歳までという年齢制限はないものの、実際には高齢をすぎるとAGA治療に結びつくことが少ない。

20代から治療を始められるといってもAGAを意識することもまた少ないということでしょう(金銭的な問題もあるかもしれません)。

具体的な年齢層別の治療方針としては以下の通りです8-10)

<20代>

AGAの初期症状が出る段階で治療を意識する人がほとんど。今後のAGA進行を抑えるために早期からの予防的治療を行う。

<30代>

脱毛の進行が明らかになる。これ以上のAGA進行を予防するほか、薄くなった毛を少しでも戻そうという試みも。

<40代>

目に見えて脱毛が明らかになる。現状を維持する段階。

<50代以上>

持病を持つ人も多くなり、AGA治療との兼ね合いを考慮する必要がある。

とはいえこれらはあくまで一般論なので、その人に合った目標を立てて検討しましょう。

AGA治療は何歳からが効果的?発症時期を考える

耳にタコな話ですが取返しがつかなくなる大切な話なので、鼓膜が破れるまで言います。AGAは早期発見と早期治療がとても大切です。

何歳からが効果的かという答えももちろん「AGAを発症し次第なるべく早く」ということ。もう発症して久しい人も思い立ったが吉日、これ以上の進行を抑えるためには後回しにする理由はありません。

実際のところ脱毛が何歳から始まるかは人それぞれ、程度も人それぞれです。発症してからどのように脱毛が進行しているかが効果的な治療の目安になります。

<発症したての時期>

血の繋がった家族がAGAを発症しているとAGAに敏感になると思います。あれ?と思った段階で可能な限り早く治療して若々しい髪の毛の維持を試みましょう。

<抜け毛が目立ち始める時期>

周りからも指摘される可能性がある段階。脱毛進行の予防と、発症してしまった薄毛の治療をしましょう。

<薄毛が明らかな時期>

これ以上の進行を抑える段階。持病も含めて治療開始するか考えましょう。

これらの時期を何歳から迎えるかによって治療に効果的な年齢が決まるでしょう。

予防は何歳から?年齢制限解禁からの開始の是非

予防に関しても治療と同様、早いうちがいいという結論に。本当に完璧にAGAを防ぐには、年齢制限のギリギリである20歳から始めることももちろん考慮できます。

そうは言っても、仮に家系的にAGAのリスクがあるとしても実際自分がAGAを発症するかは別の話です。

そう安くはないAGA治療をまだ症状がそこまででもない間に決断するのは難しい問題。兆しが見えてから予防を行うという方がほとんどでしょう。

そういう意味では一番の予防は「いかにして脱毛の兆候に気が付けるか」であり、その兆候に気が付いた時が予防にいい年齢ということかもしれません。定期的に頭髪の写真を撮って比べることをおすすめします。

そして実際のところ、予防という観点からは薬以外にもできることも。重ねて言いますがAGAはホルモンの問題なので、生活習慣を見直すことも予防に繋がると言われています。

特に発症の初期段階にある20代,30代の男性は生活スタイルが乱れがちです。意識して改善するだけでもそれなりのAGA予防効果が見込めるうえに、ほかのさまざまな困ったことも一緒に解決できますよ。

まとめ

 AGA治療自体は若い年代から高齢者まで幅広く行うことが可能ですが、効果的な治療となると20代から50代の年齢層が望ましいでしょう。

なるべく若いうちからAGA治療を始めることによってより大きな効果が期待できる一方、年齢を重ねて脱毛が進んでしまうほど治療の限界が生じやすいとされます。

年齢だけでなくさまざまな要因を元に、その人にとって一番いい治療の選択を医師とともに決めてください。

患者さんからの口コミ

家族がAGA家系なので、自分もそうなるのではないかと昔から心配でした。ここの皮膚科ではAGA治療をしているとのことで何歳から始めたほうがいいか、ニキビ治療のついでに先生に相談しました。

まずは発症の兆しが見えてから考えたほうがいいと言われて、頭髪の様子を写真で確認することを勧められました。ニキビ治療で通うので、毎月先生に写真を確認してもらっています。

(20代男性)

AGAは気になるけれど、薬を飲み始めたら一生飲み続けなければならないのが嫌で悩んでいました。大体の方は何歳まで飲んでいるのか聞いたところ、気が済むまでという身も蓋もない答えでした。

いつまでも若々しくありたい人は60代になってからも飲んでいるとのことですが、一方で遅くから始めた人は思ったように髪の毛が生えてこなくて早々にやめてしまうという話も聞きました。

その話を聞くと、なるべく早めに始めてから何歳まで続けるか考えるか、そもそもやらないときっぱり決めるかの2択かなと思いました。

(30代男性)

参考文献

1) Eun, Hee Chul, Oh Sang Kwon, Je Ho Yeon, Hyo Seung Shin, Byung Yoon Kim, Byung In Ro, Han Kyong Cho et al. “Efficacy, safety, and tolerability of dutasteride 0.5 mg once daily in male patients with male pattern hair loss: a randomized, double-blind, placebo-controlled, phase III study.” Journal of the American Academy of Dermatology 63, no. 2 (2010): 252-258.
2) Pohlman, Garrett D., Emily A. Pohlman, and E. David Crawford. “Dutasteride: a review of its use in the management of prostate disorders.” Clinical Medicine Insights: Therapeutics 3 (2011): CMT-S1956.
3) Katzer, Tatiele, Ademir Leite Junior, Ruy Beck, and Cristiane da Silva. “Physiopathology and current treatments of androgenetic alopecia: Going beyond androgens and anti‐androgens.” Dermatologic therapy 32, no. 5 (2019): e13059.
4) Blumeyer, Anja, Antonella Tosti, Andrew Messenger, Pascal Reygagne, Veronique Del Marmol, Phyllis I. Spuls, Myrto Trakatelli et al. “Evidence‐based (S3) guideline for the treatment of androgenetic alopecia in women and in men.” JDDG: Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft 9 (2011): S1-S57.
5) Rousso, Daniel E., and Sang W. Kim. “A review of medical and surgical treatment options for androgenetic alopecia.” JAMA Facial Plastic Surgery (2014).
6) Rathnayake, Deepani, and Rodney Sinclair. “Male androgenetic alopecia.” Expert opinion on pharmacotherapy 11, no. 8 (2010): 1295-1304.
7) Kaufman, Keith D., Elise A. Olsen, David Whiting, Ronald Savin, Richard DeVillez, Wilma Bergfeld, Vera H. Price et al. “Finasteride in the treatment of men with androgenetic alopecia.” Journal of the American Academy of Dermatology 39, no. 4 (1998): 578-589.
8) Kanti, Varvara, Andrew Messenger, Gabor Dobos, Pascal Reygagne, Andreas Finner, Anja Blumeyer, Myrto Trakatelli et al. “Evidence‐based (S3) guideline for the treatment of androgenetic alopecia in women and in men–short version.” Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology 32, no. 1 (2018): 11-22.
9) McElwee, Kevin J., and J. S. Shapiro. “Promising therapies for treating and/or preventing androgenic alopecia.” Skin therapy letter 17, no. 6 (2012): 1-4.
10) Khandpur, Sujay, Mansi Suman, and Belum Sivanagi Reddy. “Comparative efficacy of various treatment regimens for androgenetic alopecia in men.” The Journal of dermatology 29, no. 8 (2002): 489-498.

Q&A(質疑応答集)

Q
AGA治療の年齢制限はありますか?
Q
AGA治療は何歳頃から始めるのが望ましいですか?
Q
若いときからAGAを治療することにリスクはありますか?
Q
若い頃からAGA治療を始めるメリットはありますか?
Q
高齢でもAGA治療は開始できますか?
Q
AGAの症状が出た場合、若くても治療を開始すべきですか?
Q
高齢でAGA治療を始めることのデメリットはありますか?
Q
年齢によってAGA治療の内容は違いますか?
Q
若い年齢からAGA治療を受けると、再発しやすくなりますか?
Q
AGA治療は何歳まで続けるべきですか?
Q
AGAの発症年齢が若いと重症化しやすいですか?