家族を見ればM字ハゲ、O字ハゲ、いわゆるハゲ家系。でも昔と違ってAGAは治療できるはず、広告がそう言っている。

自分の髪は自分で守る!と40代の兄は治療を続けている。ずっと続けている。長い気がするけど、いつの間にか髪型が父親から遠ざかっていた。

最初は効果ないと思っていたのに。効果が出るまでっていつからなのかな。どこくらいの期間、治療し続けるんだろう。

AGA治療

この記事のポイント

  • AGA治療は長い
  • 効果がわかるまでも長い
  • 治療期間も長い
  • 人生も長い
  • 説明は長くない(当院比)

この記事を書いた医師

大木皮ふ科クリニック院長大木沙織

名前:大木 沙織
大木皮ふ科クリニック 副院長
皮膚科医/内科専門医/公認心理師
略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。

本文中の上付き数字1)2)3)は論文引用箇所で文末に論文名を記載しています

AGA治療はいつから効果がわかる?半年の経過が肝心

AGA治療は長いものと言う話を聞いたことがある人は多いと思います。効果が出るまでも長ければ、飲む期間も長い。

しかも、効果が出る前に初期脱毛という、名前からしてすごく嫌な経過をたどる人もいます(出ない人もい)。

結論から言うと、効果が出るおおよその見積もりは半年1-4)!(人によって異なります)それまで初期脱毛が続く方もいることを考えると、なかなか根気がいりますね。

この期間を耐える方法は「効果が出るまで半年くらいの期間は必要!人それぞれだから、他人と比較しない!」と治療を始める前から覚悟すること。いやもうそれしかないのだから仕方ないです。

どんなに頑張っても遺伝子を変えることができないように、どう頑張ってもいい経過を辿っている人のように半年と経たず初期脱毛すらもない人になる方法もありません。

一般的な治療開始後の期間と影響を並べます。

治療開始からの期間身体に出る影響
開始直後なにもなし(副作用は出る可能性あり)
1~4か月初期脱毛または治療効果出現
5~7か月毛が増え始める・抜けなくなる
8か月~効果が見た目から明らかになる
12か月~4,5)見た目が変化しなくなる(効果が続く)

特に額の生え際に関しては治療の限界があり、「再び毛が生えてくる」より「これ以上の脱毛を食い止める」ことがメイン。

そのため生え際への効果はつむじより分かりにくく、効果が出ていてもまだ出ていないと感じる方も多いです。

よく分かる方法としては、治療を検討した段階から毎月写真を撮ってみて、治療開始後の経過と比較すること。「生え際の後退が減った」という効果がわかるかも(初期脱毛にげんなりしないでください)。

AGAは治るもの?人により異なる治療期間

治療の効果が出るまでの期間はわかったから、いつまで続けるかの期間も知りたい!という方へ。この答えも人によりさまざまです。

といってもこちらの意味とは「効果が続くまでの期間がさまざま」というわけではありません。

「もう治療は限界!今まで良くがんばった自分と髪の毛、あとは毛が抜けてもいいからゆっくり余生を過ごそう」と思うまでの期間がさまざなということ。

そう、悲しいことにAGA体質は治療できないので、一旦治療の効果が出てもやめたら再び脱毛が進みます。その限界は40代かもしれないし、50代かもしれない。

もしかしたら死ぬまで治療を続ける人も(その年齢なら、AGAより年齢的な脱毛が気になる場合が多い気もします。流石に若返りは現代医学の限界)。

逆に、うまいことカノジョをゲットして結婚した!子供がほしいから治療をやめる!という若い年齢の方も。

これは決して釣った魚に餌はやらない、結婚したからもう見た目はどうでもいいという意味ではありません。

治療薬のフィナステリド(プロペシア)やデュタステリド(ザガーロ)には性欲の低下や精子が減るといった男性機能に問題が出る副作用が起こることがあるので、妊活する方はやめることも多いということ。

家庭内別居や不倫、離婚が当たり前の現代においては結婚したあともそれなりに見た目は気をつけたほうがいいかと思いますが…結婚前にAGAを話すかどうかは個々にお任せします。

こちらも治療する前から、人生のプランを考えてから覚悟するほうが気持ち的にはいいですね。

AGA治療

治療の方法とは 皮膚科医学の限界

初期脱毛やら効果が出るまで半年くらいの期間があるとか結局治療は限界があるとか生え際は戻らないとか、げんなりすることばかり。なんでこんな事になってしまうのでしょうか。

ずばりネガティブなことばかり先に書いてしまったからです。治療効果の比較写真を見たかったのに!と怒った方、ごめんなさい。

上げて落とすより先にネガティブなこと言ってからポジティブなことを言う方が印象がいいというのが人の心理、あえて逆張りをすることはしません。

というわけでポジティブになれる写真を見る前に、そもそもAGAの治療方法ってどんなものなのかの話が先ですね。ブログを見るといろんな薬があるみたいだし、皮膚科以外でやっているところもあるし。

一般的にAGA治療で行われている方法は以下の通り6-7)

  • AGAが起こる原因を抑える薬を飲む
  • 生えてくる髪の毛を強くする薬を飲む・塗る
  • 物理的に毛を植える8)
  • その他研究中の最先端治療

AGAが起こる原因を抑える薬を飲む

そもそもAGAは男性型脱毛症の略、原因は男性ホルモンの一つ「ジヒドロテストステロン」(DHTと略されることも)。

この困った男性ホルモンが身体の中で作られるのを抑える、というのが現在皮膚科で行われている主な治療になります。

薬の名前は「フィナステリド」(先発品 プロペシア)と「デュタステリド」(先発品 ザガーロ)の二つ、いずれも「5αリダクターゼ阻害薬」(5α-還元酵素阻害薬)。

急に謎の言葉が登場してきましたのですが、もっと謎な言葉を増やします。化学が得意だった方は読んで、苦手だった方はかっとばして!

化学式 化学 黒板 勉強 かがく ジヒドロテストステロン

男性ホルモン、別名アンドロゲン。いろいろな男性っぽいホルモンを集めた言葉です。一番有名な男性ホルモンは「テストステロン」、ステロイドのドーピングでよく使われるあれ。

そのイメージ通り、声や筋肉はじめ体つきを男性っぽくするホルモンです。さっき出てきた悪いヤツ、ジヒドロテストステロンに名前が似てますね。

「ジヒドロ」とは「ジ=ふたつの」「ヒドロ=水素、英語で言うハイドロ。カメックスのハイドロポンプのハイドロ。」

つまり「ジヒドロテストステロン」は「二つの水素付きテストステロン」という意味になります。テストステロンの強化版、名前も強くなった感じ。

そんなテストステロンに水素を二つもつける悪いヤツが「5αリダクターゼ」(5α-還元酵素)。

意味はテストステロンの5αという部分をリデュース(reduce、引く。セールのとき〇%リデュースって言いますね)する酵素(化学物質に何かつけるやつ。~ァーゼという名前。)ということ。

化学では水素がくっつくことを「還元」というので、セールのときの「〇%還元」って感じで「還元酵素」という日本語名が付いてます。

化学苦手な方お帰りなさい、要約すると「テストステロンに5αリダクターゼというやつが付くとジヒドロテストステロンという、AGAの原因となるホルモンになる。」でした。

最初からこういえばいいのにカメックスのハイドロポンプ言いたいだけやろ!と思う方、exactly(その通り)。

なのでAGAの原因になるジヒドロテストステロンを減らすために、材料の5αリダクターゼ酵素を阻害する薬「5αリダクターゼ阻害薬」が根本的な原因を断つ方法となります。

詳しくはこちらhttps://oki.or.jp/finasteride-dutasteride/

ジヒドロテストステロン ハイドロポンプ

生えてくる髪の毛を強くする薬を飲む・塗る

こっちは比較的単純そうなのでいいですね。へろへろになってる毛を強くすることで薄毛を濃毛にするという方法。ここで大切なのが、そういういわゆる「育毛剤」が世の中に乱立してること。

ネットの広告でひとたび抜け毛について調べるだけで、ついて回る育毛剤の広告。どこぞの会社が考案とか自然成分とか新開発とか言うよくわからないやつのオンパレードで、飲む薬塗り薬に注射まで。

ちゃんと研究しているんでしょうか。皮膚科学的に「これは効果あり!」となるものは実はそんな多くなくて、世の中によく流通しているのは「ミノキシジル」くらいです。

薄毛治療で検索すると、一番出てくるワードの一つじゃないでしょうか。ドラッグストアでもミノキシジル配合!ってビデオがやたら流れてますね。リアップとかリアップとかリアップとか。

ミノキシジルとは頭皮の血流を良くして、髪の毛を作る細胞に栄養を届けることで作られる髪の毛を強くするという効果のある薬です。

飲み薬と塗り薬がありますが、飲み薬は副作用が過激なので今のところどの国でも未承認

一方塗り薬はリアップという商品名であちこち出回っています。特許が切れた今はリアップ以外の塗るミノキシジルも増えました。

詳しくはこちらhttps://oki.or.jp/minoxidil-side-effects/

物理的に毛を植える

一番単純な方法が来ましたね、力業。単純だけど大変、毛が生えてる部分を毛が生えていない場所に移植するという大がかりなことです。

これについては期間も効果も経過も言うまでもないし、医者によってさまざまなのでノーコメント。代わりに名家から移植されたあしかがフラワーパークの藤の花の写真を載せます。綺麗ですね。

あしかがフラワーパーク 藤の花 植毛 移植

その他最先端治療

一般的ではないものの、レーザー9)、PRP(多血小板血漿、たけっしょうばんけっしょう10,11)、マイクロニードル12)、ラタノプロストといった新たな治療に関して研究・実践している施設もあります。

しっかりしたデータはこれから出ることでしょう。

顔 注射 頭 注射 ちゅうしゃ AGA治療

40代の治療効果を写真で比較、50代の現在も

散々引っ張っていい加減怒っている方すみません。ここまで辿り着くまえに帰っちゃった人が何人いたでしょうか。お待ちかねの写真です。

40代からデュタステリドを飲み始めて、今は50代。写真で経過を比較してください。

<治療前(40代)>

AGA 男性型脱毛症 写真 治療前 AGA写真 だつもう しゃしん

<デュタステリド内服4か月後>

AGA治療 AGA治療経過 治療写真 経過写真 しゃしん だつもう

<デュタステリド内服半年後>

AGA治療 半年後 6か月後 写真 しゃしん 治療写真

<デュタステリド内服8か月後>

AGA治療 8か月後 治療経過 写真 ちりょう しゃしん

<現在(50代)>

AGA治療 経過写真 写真 50代 しゃしん うすげちりょうしゃしん

デュタステリドだけでもこのような効果が出ています。

日本皮膚科学会では副作用の観点からミノキシジルの内服はお勧めしていないため、当院にはミノキシジルを飲んだ方の写真はありません

先ほどお話しした内容としては、フィナステリドまたはデュタステリドのみで治療することも理にかなっているはず。

もちろんこの方はいい経過を辿っていますし、額の生え際はもともとノーダメージです(飲んでいなかったら後退していた可能性はあります)。

いつから治療を始めるべきかは人によります(この方はご縁があったときが始め時でした)ので、思い立ったら皮膚科に相談してください。


まとめ

AGA治療の効果はいつから出るかは人によって違うものの、半年は見積もってほしいところ。

治療期間も人によって異なりますが、こちらは「もうAGA治療をやめて、脱毛が再び進行してもいい」という時までの期間。

現代医学の限界として根本的にAGA体質や遺伝子を変えることができないので、植毛という物理的な方法を講じない限りは治療をやめるとAGAも再発します。

効果が出るまでの期間も治療する期間も、事前に見積もりと覚悟を決めてから治療に臨みましょう。

当院の口コミ(当院ではフィナステリドとデュタステリドのみ扱っています)

若いうちからAGA治療を始めたほうがいいという話を聞いて受診しました。効果が出るまでの期間がそれなりにあることや治療の限界を聞くことができて、いつから治療をしようか考えようという結論になりました。安くはない治療ですが、いかに効率よく付き合っていけるか考えます。(20代男性)

子供の受診に付き添ったとき、AGA治療のチラシを目にしました。40代になって髪の毛が薄くなっていくことが気になりだしたので、治療について話を聞くいいきっかけになりました。気持ちは早いですが子供の結婚式に向けて、50代になる前に治療を始めようと思います。(40代男性)

「効果が出るまでは半年見積もってください」と言われた時は長いなと思いましたが、ブログで実際の経過を撮った写真をみることでモチベーションが上がりました。半年後の自分に期待です。(40代男性)

参考文献

1)Kaufman, Keith D., Elise A. Olsen, David Whiting, Ronald Savin, Richard DeVillez, Wilma Bergfeld, Vera H. Price et al. “Finasteride in the treatment of men with androgenetic alopecia.” Journal of the American Academy of Dermatology 39, no. 4 (1998): 578-589.
2)Blumeyer, Anja, Antonella Tosti, Andrew Messenger, Pascal Reygagne, Veronique Del Marmol, Phyllis I. Spuls, Myrto Trakatelli et al. “Evidence‐based (S3) guideline for the treatment of androgenetic alopecia in women and in men.” JDDG: Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft 9 (2011): S1-S57.
3) Kanti, Varvara, Andrew Messenger, Gabor Dobos, Pascal Reygagne, Andreas Finner, Anja Blumeyer, Myrto Trakatelli et al. “Evidence‐based (S3) guideline for the treatment of androgenetic alopecia in women and in men–short version.” Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology 32, no. 1 (2018): 11-22.
4)McElwee, Kevin J., and J. S. Shapiro. “Promising therapies for treating and/or preventing androgenic alopecia.” Skin therapy letter 17, no. 6 (2012): 1-4.
5)Rathnayake, Deepani, and Rodney Sinclair. “Male androgenetic alopecia.” Expert opinion on pharmacotherapy 11, no. 8 (2010): 1295-1304.
6) Katzer, Tatiele, Ademir Leite Junior, Ruy Beck, and Cristiane da Silva. “Physiopathology and current treatments of androgenetic alopecia: Going beyond androgens and anti‐androgens.” Dermatologic therapy 32, no. 5 (2019): e13059.
7) Khandpur, Sujay, Mansi Suman, and Belum Sivanagi Reddy. “Comparative efficacy of various treatment regimens for androgenetic alopecia in men.” The Journal of dermatology 29, no. 8 (2002): 489-498.
8) Rousso, Daniel E., and Sang W. Kim. “A review of medical and surgical treatment options for androgenetic alopecia.” JAMA Facial Plastic Surgery (2014).
9)Darwin, Evan, Alexandra Heyes, Penelope A. Hirt, Tongyu Cao Wikramanayake, and Joaquin J. Jimenez. “Low-level laser therapy for the treatment of androgenic alopecia: a review.” Lasers in medical science 33 (2018): 425-434.
10)Khatu, Swapna S., Yuvraj E. More, Neeta R. Gokhale, Dipali C. Chavhan, and Nitin Bendsure. “Platelet-rich plasma in androgenic alopecia: myth or an effective tool.” Journal of cutaneous and aesthetic surgery 7, no. 2 (2014): 107.
11)Gkini, Maria-Angeliki, Alexandros-Efstratios Kouskoukis, Gregory Tripsianis, Dimitris Rigopoulos, and Konstantinos Kouskoukis. “Study of platelet-rich plasma injections in the treatment of androgenetic alopecia through an one-year period.” Journal of cutaneous and aesthetic surgery 7, no. 4 (2014): 213.12) Dhurat, Rachita, and Sukesh Mathapati. “Response to microneedling treatment in men with androgenetic alopecia who failed to respond to conventional therapy.” Indian journal of dermatology 60, no. 3 (2015): 260.

Q&A(質疑応答集)

Q
GA治療を始めたらすぐ髪の毛が生えますか?
Q
AGA治療の効果はどんな形でわかりますか?
Q
額の生え際の薄毛(M字ハゲ)とつむじの薄毛(O字ハゲ)を比較すると、治療の効果に差はありますか?
Q
薄毛治療の限界はありますか?
Q
治療効果が出るまでの期間に個人差はありますか?
Q
治療の効果が出るまでの期間はどう過ごせばいいですか?
Q
通院が限界と思った時、治療はやめられますか?
Q
治療方法に塗り薬と飲み薬がありますが、注射はありますか?
Q
効果が出るまでに治療をやめてしまいました。再開することは可能でしょうか?