すそわきがの原因や症状を知って、早めの対処を

初めて彼氏ができた。ルンルンなのだけど、一つ気になることがあって。

彼、わたしのアソコの臭いが気になるみたい。ほかの人の臭いなんか嗅いだことはないからわからないけど、自分で触ってみるとたしかにわきがみたいな臭いがする…

これってもしかして、すそわきが？彼のためにも、すそわきがのことを知らなきゃ！

この記事のポイント

• すそわきがはアポクリン腺から出る汗が原因。わきがも同じです。
• 本来は異性を惹きつけるフェロモン。細菌と混じることで悪臭になる。
• アポクリン腺治療は大がかり。自分で出来る対策も効果的。

この記事を書いた医師

すそわきが（すそが）とは？

医学的には外陰部臭症と言います。

すそ、とはいわゆるデリケートゾーンのこと。そしてわきが、は「わき」の「下」（が）が臭うという症状のことを言います。

わきなのかすそなのかわかりませんね。

どちらも同じ臭いと原因があるのですが、わきがの方が皆さん気が付きやすいので「わきが」という言葉がメジャーになったうえで、すそ版わきが「すそわきが」という言葉が生まれたのでしょう。

デリケートゾーンが臭う原因はいろいろありますが、お話ししたようにわきがとすそわきがは同じ理由で起こっているもの。わたしのアソコ、何が起こっているの？

すそわきがの原因は？汗の成分や菌との関係性

特殊な汗を出す袋、アポクリン腺

わきがもすそわきがも「アポクリン腺」という特殊な汗を出す袋が存在することで起こります。

普通の汗を出す袋は「エクリン腺」と言い、ほとんどが水でできたさらさらした汗。一方アポクリン腺の汗はタンパク質や脂質を多く含んだ、べたべた汗が特徴です。

アポクリン腺の汗とは？異性を惹きつける媚薬、フェロモン

アポクリン腺はなぜ存在するのでしょう。もともとアポクリン腺から出る汗とは、異性を惹きつける天然の香水「フェロモン」でした。

脇に香水をつける人も多いと思いますが、同じ要領でわきのアポクリン腺からフェロモンが出るのです。デリケートゾーンからも出る理由はご察しください。

またおっぱいにもアポクリン腺があり、その臭いは「ちちが」と言われています。

フェロモンで有名なものといえば「ジャコウ」でしょう。英語ではムスク、伝説の香水「シャネルNo.5」の原料です。

世界三大美女の一人であるクレオパトラが身体に付けて異性を魅了させたり、中国では高級な漢方として使われていたほど、古代から重宝されていた香料。

ちなみに同じく三大美女かつ中国にいた楊貴妃はわきがとムスクの香りで皇帝を魅了していました。人種的にクレオパトラもやはりわきがであったと思われます。

ジャコウは漢字で「麝香」と書き、「鹿の香りが矢を射るように遠くまで香る」ということが名前の由来。鹿といっても奈良の鹿ではありません。

「ジャコウジカ」という麝香腺（じゃこうせん）を持ち、そこから麝香を出す特別な鹿がいるのです。

ほかにも「ジャコウネコ」の雄の肛門近くからも麝香が出ます。いずれも、雄が雌を魅了させるためのフェロモンです。

そのためジャコウジカやジャコウネコの乱獲が進み絶滅寸前に。現在は動物由来のムスクは禁止され、化学合成されたムスクのみ世界に出回っています。

ちなみにジャコウネコは「コピ・ルアク」という世界一高級なコーヒー豆を作る動物としても有名です。その作り方は…

コーヒーの実を食べさせて腸の中で発酵させ、うんちの中から残ったコーヒー豆をいただく、というとても手間とお金と勇気がいるものです。

臭いって複雑　同じものでもいい香りになったり悪臭になったり

そんな魅力的なムスク、どんな臭いがするのでしょう。答えはアンモニア（おしっこの臭い）と獣の臭いを混ぜて強くしたような悪臭。でも、これをすごくすごく薄めると、とても官能的な香りになるのです。

名前の由来は「矢を射るほど遠くまで香る」でしたね。それほど遠くまで臭いが薄まらないといい香りにならないのでしょう。

同様な物質に「スカトール」があります。感づいた方もいるでしょうか。名前の由来はギリシャ語の「skato」、うんちという意味です（さっきからおしっこうんちばかりですね）。

ご察しの通り、うんちの臭いの元。でもこれも薄めると不思議なことに、かぐわしい花の香りがします。実際、ジャスミンやオレンジの花にも香料として含まれているのです。

これらの香りが好きだからと言って、うんちの香りが好きというわけではないので安心してください。ちなみにわたしはジャスミンもオレンジの花も大好きですが、うんちの臭いは嫌いです。

まあ、スカトールの香りが好きということにはなってしまいますが。

人間のフェロモンも同じ　巡り合わせが悪くて悪臭に

アポクリン腺の話に戻ります。人間のフェロモンである「アポクリン腺の汗」も同様に、本来は異性を魅了させる香りです。ではなぜ悪臭と言われてしまうのでしょうか。

原因は皮膚に普段から住んでいる菌、「常在菌」。常在菌がアポクリン腺の汗を分解すると、ヒトにとって悪臭になってしまいます。

すそわきがの症状は人それぞれ？

わきがと同じ臭いです

名前のとおり、デリケートゾーンから「わきが」と同じ臭いがするのがすそわきが。

わきがの臭いは鉛筆の芯、ネギ、雑巾や納豆、クミンのようなカレーのスパイス、硫黄といったさまざまな呼ばれ方があります。いずれもつーんと鼻につくような臭いが特徴。いい呼ばれ方はしませんね。

わきがではない臭いはすそわきがではありません

デリケートゾーンがくさい気がする自分はすそわきが！？わきがじゃないのに！

と慌てる方も多いと思います。しかしデリケートゾーンはただでさえ蒸れやすく、乳酸桿菌やカンジダなどいろんな菌が繁殖しやすいところ。すそわきが以外にも臭う原因はたくさん。

あくまでアポクリン腺のせいで臭うものを「すそわきが」と言います。

すそわきがの診断方法を知ろう　自宅でもできる簡単なチェック方法をご紹介

診断そのものは臭いで判断するしかありません。しかし、アポクリン腺が多い人の特徴はいくつかあるので、それを加味して診断に至ります。自分でも判断できますのでご活用ください。

すそわきが持ちの特徴

• 耳垢が湿っていて黄色い
• 耳毛が多い
• 服のわきが黄ばむ

これらはアポクリン腺が多い人の特徴です。理由は、耳や脇のアポクリン腺がこのような特徴を生み出すから。

親もわきが？　わきが家系とは

では、アポクリン腺の多さはどういう理由で決まるのでしょう。

それは遺伝子。親がわきが持ちだった場合、子供も高確率でわきが持ちになります。

遺伝子は染色体として父親と母親から一つずつもらい、二つの染色体を持って生を受けます。

この二つ貰った遺伝子には大きく分けて「顕性遺伝」（かつての優性遺伝）と「潜性遺伝」（かつての劣性遺伝）が。

二つそろわないと出現しないのが潜性遺伝に対し、顕性遺伝はひとつでも存在すると身体に影響が出ます。アポクリン腺の量はまさに顕性遺伝です。

両親のうち片方がわきがだとすると、子供もわきがである可能性が高くなります。

もっとも、必ずというわけではないので仮にわきがが遺伝しなくてもびっくりしないでください。

親御さんの遺伝子のうち片方がわきが遺伝子だったとしても、もう片方がそうでない場合、そっちを受け継いだらわきが遺伝子は途絶えます。

とはいえ、片方の親がわきがだった場合の遺伝確率は50％、両親の場合は80％の確率で遺伝。

そういうわけで、両親のエピソードを聞くこともすそわきがの診断に繋がります。

すそわきがの治療法とは？　病院での治療をご紹介

アポクリン腺対策

すそわきがの原因はアポクリン腺。ですから、アポクリン腺を除去することが治療に繋がります。

除去する方法としては

• 手術で直接取る
• マイクロ波の熱（商品名ミラドライ）で破壊する

があります。

手術とは皮膚を切って裏返し、物理的にアポクリン腺を切り取るということ。唯一の保険適応がされる治療です。

一方マイクロ波とは電子レンジに使われるもので、電子の波をぶつけた相手に熱を持たせる作用が。この熱でアポクリン腺を破壊するという理論です。

ほかにもいろいろな治療法はありますが、おおむねこの二つを覚えておけば大丈夫です。保険診療で行うなら手術しかありませんし、自由診療でやるならダントツにミラドライが良いですから。

エクリン腺対策

すそわきがとは一見関係なさそうな普通の汗を出すエクリン腺。でも、関係あるのです。すそわきがはアポクリン腺の汗が皮膚の常在菌と混じってできる臭い。

その常在菌が繁殖する理由はエクリン腺の汗でデリケートゾーンが蒸れていること。ですから、エクリン腺対策をすることもすそわきが治療に繋がります。

医療機関でできることはボツリヌストキシン（商品名　ボトックス）を打つこと。

ボツリヌストキシンとは、ボツリヌス菌の毒という意味（トキシン＝毒）。ボツリヌス菌の毒は自然界では地球最強の毒で、その強さは1gあればおよそ100万人の人が死ぬレベルです。

幸いにもボツリヌス菌は酸素が苦手（偏性嫌気性菌）ですから、酸素があると毒素を出せません。しかし酸素のない環境だと増殖してボツリヌストキシンを出すように。

普段は酸素のない土の中にいるボツリヌス菌ですが、ソーセージや真空パックの中に入り込むとここぞとばかりに毒を生み出すのです。

その結果、ボツリヌスによる食中毒が発生します。

有名な例だと1984年、からしれんこんの真空パックにボツリヌス菌が混入してしまい、ボツリヌスの毒素でおよそ40名の被害者、うち9人もの死者が出ることになりました。

そんな恐ろしいボツリヌストキシンは、神経に作用して麻痺させてしまうことで毒としての威力を発揮します。これを利用して、汗を出すよう命令する神経を麻痺させるのがボツリヌストキシンによる治療です。

同様にしわを作る筋肉を麻痺させることもできるため、美容にも。

すそわきがの治療にはデメリットも？　手術や薬のリスクを知ろう

手術の場合

皮膚を切ってしまうので、傷口が閉じるまで時間がかかります。傷の具合を見るために頻繁に通院する必要がありますし、陰部からはしばらく血が流れ続けることに。

また、傷口からばい菌が入って感染症を起こす可能性も（そうならないように通院してもらい、対策をすることに）。そして当然ですが、傷跡が残ります。

マイクロ波（商品名ミラドライ）の場合

電子レンジの波をぶつけるわけですから、熱いとやけどをしてしまいます。そうならないように出力を調整しますが、どうしても起こってしまう可能性のある合併症です。

更に手術と違い保険が効かないので、高額になります。

ボツリヌストキシン（商品名ボトックス）の場合

人間の免疫は毒に対抗しようとするもの。数か月で効果が切れるため、何度も注射をする必要があります。

また、あまりにも頻繁に使ったりずっと使っていると人間の免疫が強くなり（抗体を生み出す）効かなくなることも。

すそわきがの治療法に悩む人必見！　自宅でできる対処法

アポクリン腺対策はとても大がかりでお金もかかることがわかりました。自分でなんとかできないでしょうか。

ヒントは常在菌が繁殖する元の汗を出すエクリン腺対策。まずはここから試しましょう。すそわきが以外の臭いのケアにも繋がります。

デリケートゾーンの毛をそる

デリケートゾーンの常在菌が増える原因はエクリン腺から出る汗。

毛をそることで、デリケートゾーンが蒸れにくくなり結果としてすそわきがの臭いを減らせます。また衛生面でも良く、すそわきが以外の臭いの原因を抑えることにも。

最近はハイジーナ（衛生）脱毛としてVIO（陰部）の脱毛が流行っているのもこれが理由。医療脱毛（レーザー脱毛）が難しい場合、自分で剃ってしまうのも手です。

制汗剤を使う

アルム石（ミョウバン）には汗を抑える効果が。刺激的な制汗剤はデリケートゾーンにはよくありませんが、アルム石なら大丈夫。わきがにも効果的なこの対策、すそわきがにもやはり効果があります。

こまめに拭く

アポクリン腺の汗が原因ですから、汗をこまめに拭くことも対策に。

といっても、場所が場所なので拭きにくいですよね…

まとめ

• すそわきがもわきがもアポクリン腺から出る汗が原因。
• 本来は異性を惹きつけるフェロモン。これが細菌と混じることで悪臭になる。
• アポクリン腺の量は遺伝で決まる。
• アポクリン腺に直接対策するのは大変。細菌が増える原因のエクリン腺対策をしよう。