背中のどうしようもない痒みや、白い粉を吹くような乾燥に悩まされていませんか。特に空気の乾燥する季節や、加齢とともに皮膚の水分保持能力が低下することで起こる「老人性乾皮症」は、多くの人にとって深刻な問題です。
手が届かない部位であるがゆえに適切なケアが難しく、痒みの悪循環に陥りやすいのが特徴です。
本記事では、背中の痒みの原因を見極め、適切な薬の選び方や、一人でも確実に薬を塗布するための具体的な道具の活用法、そして日常生活で実践すべき予防策までを網羅的に解説します。今日からできる対策で、安眠できる夜を取り戻しましょう。
冬になると背中が猛烈に痒くなる原因と老人性乾皮症の正体
冬の到来とともに背中がムズムズし始め、気がつけば血がにじむほど掻きむしってしまう。このような経験を持つ人は少なくありません。
この痒みの正体は、単なる一時的な乾燥ではなく、皮膚のバリア機能が構造的に低下していることが主な原因です。
ここでは、加齢に伴う皮膚の変化と環境要因がどのように絡み合って強い痒みを引き起こすのかを解説します。
加齢による皮脂欠乏がバリア機能の崩壊を招く
私たちの皮膚は、表面にある角層が水分を保持し、外部の刺激から体を守るバリアの役割を果たしています。レンガのように積み重なった角質細胞と、その間を埋めるモルタルのような脂質が強固な壁を作っているのです。
しかし、年齢を重ねるとともに、このバリア機能を支える「皮脂」「天然保湿因子」「角質細胞間脂質」という3つの物質の分泌量が減少します。
特に背中は、手足と同様に皮脂腺が比較的少ない部位であるため、加齢による影響をダイレクトに受けやすい傾向があります。
皮脂膜が薄くなると、皮膚内部の水分が蒸発しやすくなり、角層がめくれ上がって隙間ができます。
この隙間からアレルゲンや衣類の繊維などの刺激物質が侵入し、知覚神経を刺激することで強い痒みが発生します。これを老人性乾皮症と呼びますが、決して高齢者だけの問題ではなく、40代以降から徐々にリスクが高まります。
他の皮膚疾患との違いを見極めるポイント
背中の痒みは乾燥だけが原因とは限りません。単なる乾燥肌だと思って保湿ケアを続けていても改善しない場合、別の皮膚疾患が隠れている可能性があります。
例えば、湿疹、接触皮膚炎、あるいはカビの一種であるマラセチア菌による毛包炎などが考えられます。
乾燥肌による痒み(皮脂欠乏性湿疹)の特徴と、他の疾患の特徴を比較し、自分の症状がどちらに近いかを確認することが大切です。
自己判断が難しい場合は、早めに専門医の診断を仰ぐことが解決への近道です。
乾燥肌と他の皮膚トラブルの特徴比較
| 症状の特徴 | 皮脂欠乏性湿疹(乾燥肌) | その他の皮膚炎(カビ等) |
|---|---|---|
| 皮膚の状態 | カサカサして粉を吹く、亀裂がある | 赤いブツブツ、膿を持った発疹 |
| 痒みの性質 | 体が温まると強くなる、広範囲 | 局所的、痛みや熱感を伴うことも |
| 発生時期 | 秋から冬にかけて悪化する | 汗をかく夏場や通年 |
| 保湿剤の効果 | 一時的に和らぐことが多い | 効果がない、または悪化する |
掻くことで痒みが増幅する「イッチ・スクラッチ・サイクル」の恐怖
痒みを感じて背中を掻くと、一時的には気持ちよく感じるかもしれません。しかし、これは非常に危険な行為です。
皮膚を爪で掻くと、ただでさえ弱っている角層のバリア機能がさらに破壊されます。すると、皮膚の内部では炎症を鎮めようとする反応とともに、痒みを伝える神経線維が表皮の近くまで伸びてきます。
その結果、わずかな刺激でも敏感に痒みを感じるようになり、さらに掻いてしまうという悪循環に陥ります。
これを「イッチ・スクラッチ・サイクル」と呼びます。このサイクルを断ち切るためには、まずは「掻かない」ことが重要ですが、意思の力だけで我慢するのは困難です。
だからこそ、物理的な刺激を避ける衣類の選択や、適切な薬物療法で痒みを強制的に止めることが必要になります。
ドラッグストアで買える背中の痒み止め薬の選び方と成分の違い
背中の痒みを抑えるためには、症状の段階に合わせて適切な成分を選ぶことが重要です。市販薬には多種多様な製品がありますが、大きく分けて「保湿」「抗炎症」「痒み止め」の3つの作用を持つ成分が配合されています。
自分の背中の状態が、単に乾燥しているだけなのか、すでに炎症を起こして赤くなっているのかによって、選ぶべき薬は異なります。
ここでは、具体的な成分と症状のマッチングについて詳しく解説します。
症状レベル別・推奨成分一覧
| 症状のレベル | 推奨される主な成分 | 期待される作用 |
|---|---|---|
| 軽度(カサつき・粉吹き) | ヘパリン類似物質、セラミド、ワセリン | 水分保持、皮膚保護 |
| 中度(硬い角質・強い乾燥) | 尿素(10%〜20%) | 角質軟化、強力な保湿 |
| 重度(赤み・ブツブツ・強い痒み) | ステロイド(ウィーク〜ミディアム)、ジフェンヒドラミン | 抗炎症、痒み伝達の遮断 |
ガサガサした厚い角質には尿素配合のクリームを使う
背中の皮膚が硬く、ガサガサとして象の皮膚のようになっている場合、角質が肥厚している可能性があります。
このような状態には、尿素を配合したクリームが効果を発揮します。尿素には、体内の水分を取り込んで逃さないようにする高い保湿効果に加えて、硬くなった古い角質を溶かして柔らかくする作用があります。
そうすることで、保湿成分が皮膚の奥まで浸透しやすくなります。
ただし、尿素は刺激を感じることがあるため、掻き傷がある場合や、皮膚が薄くなってヒリヒリしている場合には使用を避けるか、低濃度のものを選ぶ配慮が必要です。
血行促進と保湿を同時に叶えるヘパリン類似物質の有効性
近年、乾燥肌治療のスタンダードとして定着しつつあるのが「ヘパリン類似物質」です。この成分は、高い保湿力を持つだけでなく、血行を促進する作用や、抗炎症作用も併せ持っています。
皮膚の深部にある基底層まで浸透し、細胞の生まれ変わりを助けることで、肌のバリア機能を根本から立て直す効果が期待できます。
ステロイド成分は入っていないため、長期的な使用も比較的安心です。背中の乾燥が慢性化しており、肌質そのものを改善したいと考える場合に適した選択肢と言えます。
クリームタイプはカバー力が高く、ローションタイプは広範囲に伸ばしやすいという特徴があるので、使い心地の好みで選ぶと継続しやすくなります。
我慢できない痒みと赤みにはステロイドと抗ヒスタミン成分
すでに掻き壊してしまい、皮膚が赤く腫れ上がっている、あるいは痒みが強すぎて夜も眠れないという場合は、保湿だけでは不十分です。
炎症を強力に抑える「ステロイド成分」や、痒みの発生指令をブロックする「抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミンなど)」や「局所麻酔成分(リドカインなど)」が配合された医薬品を使用する必要があります。
ステロイドは副作用が怖いというイメージがあるかもしれませんが、用法用量を守って短期間使用する分には、炎症を素早く鎮めるための非常に有効な手段です。
炎症が治まったら、速やかに非ステロイドの保湿剤に切り替えるという使い分けが大切です。
手が届かない背中の中心部に薬を塗るための道具とテクニック
背中のケアにおける最大の障壁は、「物理的に手が届かない」という点に尽きます。体が硬い人や高齢者にとって、肩甲骨の間や背骨沿いに薬を塗ることは至難の業です。
しかし、塗り残しがあるとそこから痒みがぶり返してしまいます。
ここでは、誰の手も借りずに、背中全体に均一に薬を塗布するための道具と具体的なテクニックを紹介します。
専用の塗布補助具を活用してムラなく広げる
薬局やオンラインショップでは、背中に薬を塗るための専用グッズ(軟こうぬりちゃん、背中塗り棒など)が販売されています。これらは、孫の手のような長い柄の先に、薬を乗せるためのパッドやヘッドが付いている形状をしています。
使用する際は、ヘッド部分にクリームやローションを適量乗せ、背中の中心から外側に向かって優しく滑らせるように塗ります。
ポイントは、ゴシゴシと擦り込まないことです。擦ると皮膚への刺激となり、痒みを誘発してしまいます。表面に薬の膜を作るようなイメージで、優しく延ばすことが大切です。
使用後はヘッド部分を洗って清潔に保つことが、細菌の繁殖を防ぐために重要です。
背中ケアに役立つアイテムリスト
- ロングハンドル軟膏塗り具: ヘッドの角度調整ができるものが使いやすく、患部に正確にアプローチできます。
- シリコン製キッチンヘラ: 衛生的で洗いやすく、肌当たりが柔らかいため摩擦刺激を抑えられます。
- 食品用ラップフィルム: 薬を広げて背中に貼り付けるように使用し、手の届かない範囲をカバーします。
- 逆さ噴射可能なスプレー製剤: 物理的な接触を避けつつ、広範囲に保湿成分を届けることができます。
身近な日用品をカスタマイズして代用する方法
専用の道具が手元にない場合でも、家にあるものを工夫することで代用が可能です。
例えば、料理用のシリコンスパチュラ(ヘラ)は、適度な弾力があり、クリームを無駄なく肌に密着させるのに適しています。柄が短い場合は、長い棒に固定するなどの工夫が必要です。
ラップを使った方法も有効です。食品用ラップを長く切り、その中央に薬を広げます。ラップの両端を持って背中に回し、タオルで背中を洗うような動作で薬を患部に押し当てます。
この方法は、広範囲に一気に薬を行き渡らせることができるため、乾燥が背中全体に及んでいる場合に特に便利です。
スプレータイプやミストタイプの製剤を選ぶメリット
道具を使うのが面倒だという場合は、薬の形状(剤形)を見直すのも一つの手です。最近では、逆さにしても噴射できるスプレータイプや、ミストタイプの乾燥肌治療薬が増えています。
これらは手の届かない背中にも、ワンプッシュで広範囲に薬剤を届けることができます。液体状のローションスプレーは浸透が早く、べたつきが少ないのが特徴です。
一方で、パウダーを含んだスプレーは乾燥を助長する場合があるため、保湿成分がリッチに含まれたしっとりタイプを選ぶことが重要です。
お風呂上がりの体が温まっているうちに、シューッと吹きかけるだけでケアが完了するため、継続しやすいという大きなメリットがあります。
入浴習慣を見直すだけで背中の乾燥と痒みは劇的に改善する
日本人は熱いお風呂を好む傾向にありますが、実はその入浴習慣こそが、背中の痒みと乾燥肌を悪化させている最大の要因かもしれません。
入浴は皮膚を清潔にし、リラックス効果をもたらす一方で、入り方を間違えれば皮膚のバリア機能を根こそぎ奪い去る行為にもなり得ます。
毎日のことだからこそ、少しの意識改革で肌の状態は大きく変わります。
熱すぎるお湯は必要な皮脂まで溶かし出してしまう
寒い冬には42度以上の熱いお湯に浸かりたくなるものですが、乾燥肌にとってこれは厳禁です。
高温のお湯は、皮膚表面を守っている皮脂膜や、角層内部のセラミドなどの保湿成分を過剰に溶かし出してしまいます。
入浴直後は体が温まって痒みが和らいだように感じるかもしれませんが、お風呂から上がって水分が蒸発する際に、過乾燥を引き起こし、後から猛烈な痒みが襲ってきます。
背中の乾燥を防ぐための理想的な湯温は、38度から40度のぬるめのお湯です。長湯も避け、10分から15分程度で切り上げるのが肌への負担を最小限に抑えるコツです。
ナイロンタオルでのゴシゴシ洗いは今すぐやめる
「背中が痒いから」といって、硬いナイロンタオルやブラシでゴシゴシと洗っていませんか。その行為は、皮膚にとって「攻撃」以外の何物でもありません。
強く擦ることで、目に見えない微細な傷が無数につき、そこから水分が逃げ出し、外部刺激にさらに弱くなります。背中の汚れは、お湯に浸かるだけでも大部分が落ちます。
洗浄料を使う場合でも、たっぷりと泡立てた泡をクッションにして、手で優しく撫でるように洗う「手洗い」が基本です。
さらに、石鹸やボディソープのすすぎ残しも痒みの原因となるため、洗う時間よりもすすぐ時間を長く取るよう意識することが大切です。
肌を守る入浴のポイントまとめ
- 湯温設定は40度以下に: ぬるめのお湯で、皮脂の流出を防ぎます。
- 手洗いの徹底: 摩擦係数の高いナイロンタオルは捨て、たっぷりの泡と手のひらで洗います。
- 洗浄料の成分確認: 脱脂力の強いラウリル硫酸Naなどを避け、アミノ酸系などのマイルドな洗浄成分を選びます。
- 保湿のタイムリミット: 浴室を出てから塗るのではなく、浴室内で保湿を済ませるか、出てから5分以内に塗ります。
浴室から出る前の「プレ保湿」が水分蒸発を防ぐ
お風呂から上がってタオルで体を拭き、パジャマを着てから保湿剤を塗る。これでは遅い場合があります。
皮膚の水分量は、入浴後10分以内に急激に低下し、入浴前よりも乾燥した状態になる「過乾燥」のリスクがあります。
これを防ぐためには、浴室の中にいるうちに保湿ケアを始める「インバスケア」が有効です。
体が濡れた状態で使えるボディオイルや、濡れた肌用の乳液を浴室内に常備し、タオルで拭く前に塗布します。
そうすると、水分と油分が乳化して肌になじみやすく、衣類を着るまでの間の乾燥を強力に防ぐことができます。
身につける衣類の素材選びが背中の不快感を左右する
背中は24時間、常に衣類と接触している部位です。そのため、肌着の素材選びは、塗り薬と同じくらい、あるいはそれ以上に重要です。
特に乾燥して敏感になった肌は、繊維のチクチクした刺激や、静電気のパチパチとした刺激に対して過敏に反応します。
化学繊維の高機能インナーが冬の定番となっていますが、背中の痒みに悩む人は、一度素材を見直してみる必要があります。
化学繊維が引き起こす静電気と乾燥のリスク
アクリルやポリエステルなどの化学繊維で作られた吸湿発熱インナーは、薄くて暖かいという利点がありますが、乾燥肌の人にとっては諸刃の剣です。
これらの繊維は吸水性が低いため、汗を吸い取らずに蒸れてしまったり、逆に肌の水分を奪いすぎてしまったりすることがあります。
また、化学繊維は帯電しやすく、脱ぎ着する際や動いて擦れた際に静電気が発生します。この静電気が皮膚への微弱な電気刺激となり、痒みのスイッチを入れてしまうのです。
もし、これらのインナーを着ていて背中が痒くなる場合は、肌に直接触れるのを避けることが賢明です。
肌着の素材別メリット・デメリット比較
| 素材 | メリット | デメリット(乾燥肌視点) |
|---|---|---|
| 綿(コットン) | 肌触りが優しく、静電気が起きにくい。吸汗性が高い。 | 汗をかくと乾きにくく、冷えにつながることがある。 |
| 絹(シルク) | 肌成分に近く保湿性が高い。なめらかな肌触り。 | 価格が高く、洗濯などの手入れに手間がかかる。 |
| 合成繊維(アクリル等) | 速乾性があり、保温性が高い製品が多い。安価。 | 静電気が起きやすく、油分を奪い乾燥を助長する。 |
天然繊維である綿やシルクが肌に優しい理由
乾燥肌や老人性乾皮症の人に最も推奨されるのは、綿(コットン)や絹(シルク)といった天然繊維の肌着です。
綿は繊維の先端が丸く柔らかいため、肌への物理的な刺激が非常に少ないのが特徴です。また、適度な吸湿性と放湿性を持ち合わせているため、肌の水分環境を快適に保ちます。
シルクは人の肌に近いタンパク質で構成されており、保湿性が高く、肌への馴染みが抜群です。
どうしても化学繊維の暖かさが必要な場合は、まず綿100%の薄手のシャツを着て、その上から発熱インナーを重ね着することで、肌への直接的な刺激を回避することができます。
洗剤や柔軟剤の成分が刺激になっている可能性も
衣類そのものだけでなく、それを洗うための洗剤や柔軟剤も盲点となりがちです。
香りを長持ちさせるための成分や、白く見せるための蛍光増白剤などは、繊維に残存しやすく、敏感な背中の皮膚には刺激となることがあります。
痒みがひどい時期は、柔軟剤の使用を控えたり、敏感肌用の無添加洗剤に切り替えたりしてみるのも一つの手段です。
すすぎの回数を通常より1回多く設定するだけでも、残留成分を減らす効果が期待できます。
室内環境と内側からの水分補給が皮膚のバリア機能を支える
外側からのスキンケアや衣類の工夫に加え、私たちが過ごす環境や体内の水分状態も皮膚のコンディションに大きく影響します。
特に冬場の室内は、暖房器具の使用によって砂漠のように乾燥しています。どれほど良い薬を塗っても、環境が過酷であれば効果は半減してしまいます。
生活空間の湿度管理と、内側からのケアを組み合わせることで、乾燥に負けない強い肌を作ることができます。
加湿器を活用して湿度50%から60%をキープする
皮膚の水分は、周囲の空気が乾燥しているとどんどん奪われていきます。特にエアコンや電気ストーブを使用している部屋では、湿度が20%〜30%台まで下がっていることも珍しくありません。
背中の乾燥を防ぐためには、加湿器を活用して室内の湿度を常に50%〜60%に保つことが理想的です。
加湿器がない場合は、濡れたタオルを部屋に干したり、お湯を沸かしたやかんを置いたりするだけでも効果があります。
特に就寝中の寝室の湿度は重要です。朝起きたときに喉がカラカラになっているなら、背中の皮膚も同様に乾燥のダメージを受けていると考え、加湿対策を強化する必要があります。
喉が渇いていなくても水分を意識的に摂取する
冬は夏に比べて汗をかかないため、喉の渇きを感じにくく、知らず知らずのうちに水分不足(隠れ脱水)に陥りやすい季節です。
体内の水分が不足すると、血液の循環が悪くなり、皮膚の末端まで栄養や水分が行き渡らなくなります。結果として、肌の乾燥が進み、老人性乾皮症を悪化させる要因となります。
お茶やコーヒーなどの利尿作用がある飲み物だけでなく、常温の水や白湯をこまめに飲む習慣をつけましょう。
1日に1.5リットルから2リットルを目安に、コップ1杯の水を起床時や入浴前後などに分けて摂取することが大切です。
皮膚を作る栄養素を食事に取り入れる
健康な皮膚を作る材料となるのは、日々の食事です。即効性はありませんが、長期的な視点で肌質を改善するためには栄養バランスが欠かせません。
特に意識して摂取したいのが、皮膚の粘膜を正常に保つ「ビタミンA」、コラーゲンの生成を助ける「ビタミンC」、血行を良くする「ビタミンE」、そして皮膚の材料となる「タンパク質」です。
また、必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸(青魚やえごま油などに含まれる)は、細胞膜の柔軟性を保ち、抗炎症作用も期待できるため、背中の痒みに悩む人には積極的に摂ってほしい栄養素です。
皮膚の健康をサポートする栄養素と食材
| 栄養素 | 主な働き | 多く含まれる食材 |
|---|---|---|
| ビタミンA | 皮膚や粘膜の潤いを保ち、ターンオーバーを整える。 | レバー、うなぎ、人参、ほうれん草、カボチャ |
| ビタミンB群 | 皮脂のバランスを調整し、代謝を助ける。 | 豚肉、納豆、卵、バナナ、マグロ |
| セラミド | 角質層の水分をつなぎとめ、バリア機能を高める。 | こんにゃく、黒豆、ひじき、わかめ、ごぼう |
市販薬で改善しない場合は迷わず皮膚科を受診すべきサイン
ここまで紹介したセルフケアを実践しても症状が改善しない、あるいは悪化していく場合は、専門的な治療が必要です。
「たかが痒み」と侮って放置すると、睡眠障害による生活の質の低下や、感染症の併発、さらには背後に潜む重大な病気を見逃すことにつながりかねません。
受診のタイミングを逃さないための判断基準を知っておくことが、自分の身を守ることにつながります。
痒みが強すぎて眠れない・日常生活に支障がある
痒みによって夜中に何度も目が覚めてしまう、仕事や家事に集中できないといった状態は、すでに治療が必要なレベルです。
睡眠不足はストレスを増大させ、そのストレスがさらに痒みを強くするという負の連鎖を生みます。
皮膚科では、市販薬よりも強力なステロイド外用薬や、内服の抗ヒスタミン薬、場合によっては漢方薬などを処方してもらうことができます。
医師の指導のもとで適切な強さの薬を使い、短期間で一気に炎症を抑え込むことが、結果として薬の使用期間を短くし、早期回復につながります。
内臓疾患のサインとして現れる痒みの可能性
稀なケースではありますが、治りにくい背中の痒みが内臓疾患のサインであることがあります。これを「皮膚そう痒症」と呼び、皮膚に目立った発疹がないにもかかわらず、強い痒みだけがあるのが特徴です。
糖尿病、肝臓病(肝硬変など)、腎臓病(腎不全による透析患者など)、甲状腺機能異常、あるいは血液の病気などが原因となることがあります。
保湿剤を塗っても全く効果がない、全身に痒みが広がっている、体がだるい、体重が急に減ったなどの症状を伴う場合は注意が必要です。
単なる乾燥肌ではない可能性を疑い、内科や総合病院で検査を受けることを強く推奨します。
医師に相談すべき危険信号リスト
- 睡眠への影響: 痒みで夜中に目が覚める、寝付けない日が続いている。
- 皮膚の変化: ジュクジュクとした浸出液が出ている、出血が止まらない、急激に範囲が広がった。
- 全身症状の有無: 発熱、倦怠感、体重減少、喉の渇きなどを伴っている。
- 薬の効果: 市販薬を2週間使用しても改善が見られない、あるいは塗った直後に激しい刺激を感じる。
自己判断での長期連用は副作用のリスクを招く
市販のステロイド薬などを自己判断で漫然と使い続けることは避けるべきです。
長期間使用することで、皮膚が薄くなったり、血管が浮き出て見えたり、逆に酒さ様皮膚炎のような症状を引き起こしたりするリスクがあります。
また、痒みの原因がカビ(真菌)であった場合、ステロイドを塗ることで菌の増殖を助け、症状を劇的に悪化させてしまうこともあります。
1週間から2週間程度セルフケアを続けても変化がない場合は、薬が合っていないか、診断が間違っている可能性があります。
プロの目で原因を特定してもらうことが、遠回りのようで最も確実な解決策です。
よくある質問
- Q老人性乾皮症の薬は毎日塗る必要がありますか?
- A
症状が落ち着いているときでも、毎日継続して塗ることが大切です。
老人性乾皮症は皮膚のバリア機能自体が低下している状態なので、入浴後などの清潔な肌に毎日保湿剤を塗ることで、再発を防ぎ、健康な肌状態を維持することができます。
- Q尿素配合のクリームは顔にも使えますか?
- A
顔への使用は慎重に行う必要があります。
尿素は角質を溶かす作用(ピーリング作用)があるため、皮膚が薄い顔や、目の周りなどに使用すると刺激が強すぎることがあります。
顔の乾燥には、尿素を含まないセラミド配合の乳液や、ヘパリン類似物質配合の顔用ローションなどの使用をお勧めします。
- Q抗ヒスタミン薬の飲み薬は背中の痒みに効きますか?
- A
非常に有効な手段の一つです。
塗り薬は皮膚の表面から働きかけますが、抗ヒスタミン薬の内服薬は、体の中からヒスタミンの働きをブロックし、痒みを感じる神経の興奮を鎮めます。
特に、夜間の痒みで眠れない場合や、広範囲に痒みがある場合は、塗り薬と飲み薬を併用することで、より高い効果が期待できます。
- Q孫の手で背中を掻くのは絶対にダメですか?
- A
可能な限り避けるべきです。
孫の手、特に竹製や木製の硬い素材のものは、加減が難しく、容易に皮膚を傷つけてしまいます。その傷が新たな炎症を生み、さらに強い痒みを引き起こします。
どうしても痒い場合は、保冷剤をタオルで包んで患部を冷やすか、手のひらで優しく叩く・圧迫するといった方法で紛らわせるようにしてください。
- Qヒートテックなどの吸湿発熱インナーは着ない方がいいですか?
- A
乾燥肌が深刻な場合は、直に着用するのは控えた方が無難です。
吸湿発熱素材は、皮膚の水分を吸って熱に変えるため、肌の乾燥を助長する可能性があります。
どうしても着用したい場合は、肌側に綿100%の薄い下着を着て、その上から重ね着をすることで、皮膚への直接的な影響を避けることができます。
