ビクトーザの処方数が多い理由は?長年の実績と信頼性の背景を調べる

ビクトーザの処方数が多い理由は?長年の実績と信頼性の背景を調べる

ビクトーザは有効成分にリラグルチドを含む1日1回の注射薬で、日本では2型糖尿病の治療薬として承認され、発売から15年以上が経過しています。

処方数の多さが語られる背景には、発売から積み上がった使用経験と、大規模な心血管アウトカム試験が報告されているという事情があります。

一方で処方の多さは有効性を証明する数字ではなく、費用の負担や患者の背景、発売の時期といった薬効以外の要因でも動きます。

日本と海外の調査データを出典つきで並べながら、処方数という数字から読み取れる範囲と、そこからは読み取れない範囲を分けて整理していきます。

目次 Outline

ビクトーザの処方数を読む前に押さえる日本での承認の範囲

ビクトーザが承認されているのは2型糖尿病の治療

ビクトーザはリラグルチドを有効成分とする皮下注射薬で、日本では2型糖尿病の効能で承認されており、1日あたりの上限量は1.8mgと定められています。

承認された効能に肥満症やダイエットは含まれておらず、体重を減らす目的で使う場合は適応外使用にあたります。処方の統計として公表される数字も、その多くは糖尿病診療の枠組みで集計されたものです。

そのため処方数という数字を読むときには、どの目的で使われた分が数えられているのかを最初に確かめておきたいところです。

リラグルチド3.0mgのサクセンダは日本では未承認

同じリラグルチドでも、1日最大3.0mgまで増量するサクセンダ(リラグルチド3.0mg)は日本で承認されておらず、当院を含め自由診療として扱われています。

成分が共通していても、用量の設計と想定される対象、そして承認の有無が別々に決まっています。2つを同じ枠に入れて数えてしまうと、処方数という数字の意味は簡単にずれてしまうでしょう。

ビクトーザをダイエット目的で使う場合は自費診療

体重を減らす目的でビクトーザを使う場合、公的医療保険は使えず、薬剤費も診察料も全額が自己負担になります。

糖尿病の治療として処方される場合と、自費で肥満に対して使う場合とでは、そもそも集計に載る統計が別々です。処方数の多さを自分の状況に重ねる前に、どちらの話をしているのかを切り分けておく必要があります。

呼び名有効成分と1日の上限量日本での扱い
ビクトーザリラグルチド 1.8mg2型糖尿病の効能で承認
サクセンダリラグルチド 3.0mg未承認・自由診療での取り扱い
ビクトーザのダイエット目的の使用リラグルチド 1.8mg適応外使用・全額自己負担

ビクトーザの処方数が積み上がるまでに流れた年月

発売からの年数は何を表しているのか?

ビクトーザは日本で2010年に発売されており、GLP-1受容体作動薬のなかでは早い時期から診療で使われてきた薬です。

年数そのものが効き目の強さを表すわけではありませんが、その間に投与を受けた人数と、報告された副作用の件数は確実に積み上がっていきます。市場にある期間が長いほど、頻度の低い出来事まで観察される機会が増えるからです。

1日1回という投与設計が診療に広まった時期

発売当時のGLP-1受容体作動薬は注射薬が中心で、1日1回または1日2回の投与が主流でした。ビクトーザは1日1回の皮下注射という設計で、注射の回数を1日1回に収める薬として使われ始めています。

少量から始めて段階的に増やしていく進め方も、この時期に医療現場へ定着しました。後から登場した薬の使い方にも、そのときの経験が引き継がれています。

長く使われた薬にだけ集まる情報の種類

臨床試験は参加者を条件で選んで行うため、高齢の人や腎機能の低下した人など、実際の診療で出会う幅をすべては覆えません。市販後に長く使われた薬では、試験の外側にいた人の使用経験も報告として集まってきます。

デンマークの研究者らが2025年にまとめた総説は、実臨床での体重の減り方が臨床試験より小さくなる傾向にあり、試験で評価された量より低い用量で使われている実情も指摘しました。

同じ総説は、GLP-1受容体作動薬を始めた人の20%から50%が最初の1年以内に中止していると整理しています。処方が出た数と、実際に続いた数は別物だと分かります。

もっとも、こうした積み重ねとは別に、供給そのものについての発表が出ています。製造販売元であるノボ ノルディスク ファーマは2025年10月20日、ビクトーザ皮下注18mgを2026年後半に販売終了とすると公表しました。

発表の時点では通常どおりの出荷が続いており、同社は2026年以降に順次変更していくよう呼びかけています。

販売が終わっても、15年以上のあいだに積み上がった使用経験や報告された数値が消えるわけではありません。この記事で取り上げた試験の結果や調査の数字は、発表の後も同じ資料として残ります。

発表を理由に自己判断で量や間隔を変える必要はありません。今後も同じ薬を続けるのか、別の選択に移るのかは、処方を受けている医療機関で個別に決まります。次の受診の機会に相談してみてください。

ビクトーザの処方数を支えてきた心血管アウトカム試験

LEADER試験に参加したのはどんな人たちか

リラグルチドの実績として最もよく引かれるのが、2016年に報告された多国籍のLEADER試験です。2型糖尿病があり心血管リスクの高い9340人を、リラグルチド群とプラセボ群へ無作為に割り付けた二重盲検の試験でした。

追跡期間の中央値は3.8年で、リラグルチド群は4668人、プラセボ群は4672人という内訳です。主要複合評価項目には、心血管が原因の死亡、非致死性の心筋梗塞、非致死性の脳卒中が置かれました。

主要評価項目と死亡について報告された数値

主要複合評価項目が起きたのはリラグルチド群で608人(13.0%)、プラセボ群で694人(14.9%)でした。ハザード比は0.87、95%信頼区間は0.78から0.97で、非劣性の検定はP値0.001未満、優越性の検定はP値0.01と報告されています。

心血管が原因の死亡はリラグルチド群219人(4.7%)、プラセボ群278人(6.0%)で、ハザード比0.78、95%信頼区間0.66から0.93、P値0.007でした。

全死因死亡はリラグルチド群381人(8.2%)、プラセボ群447人(9.6%)、ハザード比0.85、95%信頼区間0.74から0.97、P値0.02です。中止に至った副作用として最も多かったのは消化器症状でした。

評価項目リラグルチド群と対照群の発生割合ハザード比(95%信頼区間)
主要複合評価項目13.0%(608人)と14.9%(694人)0.87(0.78-0.97)
心血管が原因の死亡4.7%(219人)と6.0%(278人)0.78(0.66-0.93)
全死因死亡8.2%(381人)と9.6%(447人)0.85(0.74-0.97)

1本の試験から言える範囲と言えない範囲

この試験の参加者は2型糖尿病があり心血管リスクの高い人に限られており、用量も糖尿病治療の範囲で設定されていました。健康な人が減量目的で使った場合の結果を示したものではありません。

GLP-1受容体作動薬7試験の計56004人を統合した2019年のメタ解析では、主要心血管イベントのハザード比が0.88、95%信頼区間0.82から0.94、P値0.0001未満と報告されました。

この解析にはリラグルチドのほか、セマグルチドやデュラグルチドなど別の薬の試験も含まれています。クラス全体の傾向と、ビクトーザ単独の数値は区別して読む必要があります。

つまりビクトーザの実績は、特定の条件を満たす集団で得られた数値の積み重ねです。条件が変われば同じ数字が再現されるとは限りません。

ビクトーザの処方数が有効性の証明にならない理由

処方の多さは効き目の順位を表さない

処方数は、承認された時期、薬価、医療機関での採用状況、患者の通院しやすさなど、多くの要素が重なって決まる数字です。効き目の順位をそのまま映したものではありません。

早く承認された薬ほど使用経験が積み上がりやすく、後発の薬は同じ土俵に並ぶまでに時間がかかります。「多く出ている薬が優れている」という読み方は、この時間差を無視した見方になってしまいます。

自己負担の額が継続率を左右する

米国の保険データを用いた2023年の研究は、GLP-1受容体作動薬を処方された39149人のうち25557人(65.3%)が1年後に服薬日数の割合80%以上を保っていたと報告しました。

同じ研究で、1回の自己負担が中程度の人は調整オッズ比0.62、95%信頼区間0.58から0.67、高い人は調整オッズ比0.47、95%信頼区間0.44から0.51でした。いずれも自己負担の低い人と比べ、続けられていた割合が下がっています。

費用の重さが継続を左右するなら、処方数の増減にも同じ力が働くと考えられます。数字の背後には薬の性質だけでなく、支払いの仕組みが影を落としています。

患者の背景によって処方には偏りが出る

米国の6つの医療システムで2014年から2022年の記録を調べた研究は、2型糖尿病のある687165人を対象に、GLP-1受容体作動薬の調剤状況を人種と民族の別に比べました。

白人の患者を基準にしたオッズ比は、アジア系0.50(95%信頼区間0.48-0.53)、ヒスパニック系0.69(0.66-0.71)、黒人0.86(0.83-0.90)と、いずれも低い値でした。

薬が同じでも、届き方は集団によって均一ではありません。処方数は「誰に届いたか」の記録でもあり、薬の優劣を測る物差しとしては使えないわけです。

処方数から読み取れること処方数からは読み取れないこと
その薬が使われてきた年数と経験の量他の薬と比べたときの効き目の大小
医療制度や費用負担が処方に与える影響個々の患者にとっての向き不向き
集団ごとに生じている届き方の差副作用の起こりにくさや安全性の高さ

ビクトーザの処方数は近年どう動いているのか?

日本のデータが示すGLP-1受容体作動薬の割合

日本の大規模なレセプトデータベースを使い、2015年から2024年の処方傾向を調べた研究が2026年に報告されています。対象は2型糖尿病があり、糖尿病の薬を1剤以上受け取っていた成人です。

この研究でGLP-1受容体作動薬の処方割合は、2024年の時点でも8.0%(95%信頼区間7.9-8.1)にとどまっていました。同じ期間にSGLT2阻害薬は4.1%から38.9%へ大きく伸びています。

日本の糖尿病診療という枠で見る限り、GLP-1受容体作動薬は主流の位置にあるわけではありません。65歳未満や肥満のある人では増加傾向が観察され、経口セマグルチドが発売された2021年以降にその動きが目立ったとされます。

米国の肥満症治療薬で起きた構成の入れ替わり

米国では2017年7月から2024年2月までの調剤データを分析した研究が2025年に公表されました。この期間に肥満症治療薬として69213936件の処方が調剤されています。

2024年2月の月間処方は約150万件で、その月の全処方の0.41%を占めました。内訳はフェンテルミンが約74万件、セマグルチドのウゴービが42万件、チルゼパチドのゼップバウンドが25万件です。

研究者らは、この期間に週1回投与のセマグルチドとチルゼパチドへ処方が移ったと結論づけています。この集計が数えたのは肥満症の効能で承認された薬で、糖尿病治療薬であるビクトーザの処方数とは枠組みが違います。

日本と米国では承認されている薬も医療制度も違うため、この構成をそのまま国内へ当てはめられません。

投与回数の少ない薬が増えた時期

1日1回の注射が中心だった時代から、週1回の注射や1日1回の内服へと、GLP-1受容体作動薬の投与形態は広がりました。通院や自己注射の負担が変われば、選ばれる薬の顔ぶれも入れ替わります。

日本のデータでも、GLP-1受容体作動薬全体の伸びは経口薬の登場と重なる時期に観察されました。ビクトーザの処方数だけを取り出して増減を語ると、この背景の動きが見えなくなってしまいます。

投与回数が少ない薬へ移る流れがあるからといって、1日1回の薬が劣ると決まるわけではありません。どの製剤が向くかは、血糖の状態や併存疾患、生活の組み立て方によって変わってきます。

調査対象と期間報告された数値
日本のレセプトデータベース研究2型糖尿病の成人・2015年から2024年GLP-1受容体作動薬の処方割合は2024年で8.0%
米国の調剤データ分析肥満症治療薬の処方・2017年7月から2024年2月2024年2月の月間処方は約150万件
米国の保険データ研究2型糖尿病や心不全のある人・2014年から2020年1年後に服薬を保てた人は65.3%

ビクトーザの処方数の統計を読むときに確かめる条件

対象国と調査年で数字は入れ替わる

承認されている薬の種類、薬価の決まり方、保険の設計は国ごとに違うため、処方の構成も国境をまたぐと変わります。米国で伸びた薬が日本で同じ勢いを見せるとは限りません。

調査年も同じくらい重要です。GLP-1受容体作動薬の領域はこの数年で製剤が増えており、2020年の集計と2024年の集計では前提が違ってきます。

母集団の定義で分母が変わる

「処方数」という言葉には、処方箋の枚数を数えたものと、患者に占める割合を出したものが混ざっています。日本の研究で示された8.0%は後者で、糖尿病の薬を受け取っていた人を分母にした割合です。

米国の研究が示した約150万件は前者で、肥満症治療薬として調剤された処方の件数にあたります。数字の大小を並べる前に、何を分母に置いたのかを確かめないと比較になりません。

出典にたどり着くまでの手順

広告や記事で処方数が語られていたら、元になった調査を探すところから始めます。出典が示されていない数字は、そのまま受け取らずに保留しておくほうが安全です。

次の項目がそろっていれば、その数字がどこまでの範囲を語っているのかを判断できます。

  • 調査の対象国と、集計に使ったデータベースの名前
  • 集計した期間と、公表された年
  • 分母に置いた集団の定義(糖尿病の患者か、肥満症の治療を受けた人か)
  • 数えた単位(処方箋の枚数か、患者に占める割合か)
  • 製剤ごとの内訳が示されているかどうか

ビクトーザの処方が続く場面で共有される副作用と費用

消化器症状の出方と経過

LEADER試験で中止の理由として最も多かったのは消化器症状でした。吐き気、嘔吐、下痢、便秘といった症状は、増量した直後に強く出やすい傾向があります。

2026年に公表された総説も、GLP-1受容体作動薬の副作用のうち消化器症状の管理を中心に据えて整理しました。同じ総説は、若い世代や多様な集団へ処方が広がるほど、個別の安全性の検討が求められると述べています。

まれではあるものの、急性膵炎や胆道の病気などが報告される場合もあります。強い腹痛や嘔吐が続くときは自己判断で調整せず、処方を受けた医療機関へ連絡してください。

実臨床で報告されている中止の割合

先に触れた2025年の総説では、GLP-1受容体作動薬を始めた人の20%から50%が最初の1年以内に中止していました。中止の理由には副作用と費用の両方が挙げられています。

処方の件数が増えても、続けられた人の数が同じだけ増えるとは限りません。実績を語る数字としては、処方の多さより継続の状況のほうが実態に近いといえます。

自費で使う場合に確かめる費用の内訳

ダイエット目的でリラグルチドを使う場合、費用は全額が自己負担となり、薬剤費のほかに診察料や注射針の代金がかかります。金額は医療機関ごとに設定され、投与量が増えれば月あたりの負担も上がります。

自由診療では、健康被害が生じた際の医薬品副作用被害救済制度の対象にならない場合があります。始める前に次の点を医療機関へ確認しておくと、後から負担の見通しが崩れにくくなります。

  • 1か月あたりの薬剤費と、増量したときの金額の変化
  • 診察料、検査費、注射針の代金が別途かかるかどうか
  • 副作用が出て中断した場合の費用の扱い
  • 定期的に受ける検査の内容と間隔
確かめたい点確かめる相手
承認された効能と、今回の使い方が適応内か適応外か処方する医師
想定される副作用と、症状が出たときの連絡先処方する医師と受付
自己負担の総額と、中断したときの精算方法医療機関の窓口

よくある質問

ビクトーザの処方数が多いことは、効果が優れている証拠になりますか?

処方数は承認された時期や費用の負担、医療制度の違いなど、薬の効き目以外の要因でも動くため、優劣の証拠にはなりません。

効果を比べたいときは、同じ集団で薬とプラセボ、あるいは薬同士を比べた試験の結果を見ます。処方の多さと試験の数値は、別々の情報として扱ってください。

海外で報告された処方数の統計は、日本にもあてはまりますか?

承認されている薬の種類も、薬価の決め方も国ごとに違うため、そのままはあてはまりません。

米国の集計では肥満症治療薬の処方が2024年2月に月間約150万件に達した一方、日本の糖尿病診療ではGLP-1受容体作動薬の処方割合が2024年に8.0%と報告されています。数字を引くときは対象国と調査年を必ず添えて読み分けます。

長く使われてきた薬なら、副作用の心配は少ないと考えてよいですか?

年数の長さは安全性の保証ではなく、情報が集まりやすい状態を意味します。吐き気や下痢などの消化器症状は市販後も継続して報告されています。

頻度の低い副作用ほど、長い観察を経て見つかるものです。気になる症状が出たときは自己判断で量を変えず、処方を受けた医療機関へ相談してください。

処方数の統計を自分で確かめたいときは、何を見ればよいですか?

論文であれば、対象国、集計した期間、使ったデータベース、母集団の定義という4点を先に確認します。

同じ「処方数」という言葉でも、処方箋の枚数を数えたものと、患者に占める割合を出したものでは意味が変わってきます。出典が示されていない数字は保留にしておくと安全でしょう。

週1回の注射薬が増えると、1日1回のビクトーザは使われなくなるのですか?

米国の調剤データでは週1回の製剤へ処方が移った動きが確認されていますが、それは個々の患者にとっての適否を示す数字ではありません。

どの薬を選ぶかは、血糖の状態、併存疾患、通院の間隔、注射に対する感じ方などを踏まえて個別に決まります。実際の選択は診察のうえで医師と相談しながら決めていきます。

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この記事を書いた人 Wrote this article

大木 沙織 大木皮ふ科クリニック 副院長

皮膚科医/内科専門医/公認心理師 略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。 所属:日本内科学会