AGAの薬、プロペシアとザガーロ。どっちも高いですよね…
続けられなかったら意味がありません。そこで登場するのがもっと安いジェネリック薬品。
後発品と呼ばれるこれらの薬、先発品とどう違うのでしょうか。この記事をみれば後発品同士の違いや注意点、安全な使用方法やお得な選択肢がわかるはず。
この記事のポイント
- ジェネリックと先発品は主成分が同じ別の薬。品質はまちまち。
- 高い薬はそれなりのブランド、安い薬は訳ありかも。
- 結局飲み続けられることが大事。内部事情がオープンなクリニックを選ぼう。
この記事を書いた医師
名前:大木 沙織
大木皮ふ科クリニック 副院長
皮膚科医/内科専門医/公認心理師
略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。
本文中の上付き数字1)2)3)は論文引用箇所で文末に論文名を記載しています
AGAの治療薬、フィステリドとデュタステリド 高い・安いの基準は?
こちらの記事(https://oki.or.jp/finasteride-dutasteride/)でお話ししたように、AGA治療の基本は男性ホルモンをコントロールする「フィナステリド」と「デュタステリド」。
先発品はオルガノン社の「プロペシア」とグラクソスミスクライン社の「ザガーロ」ですが、高いのが難点です。
昨今はジェネリックという、有効成分が同じ廉価版の薬がよく出回っています。
プロペシアもザガーロも特許が切れているので、有効成分の「フィナステリド」「デュタステリド」という名前で出回っているのです。
ところが、クリニックごとに値段がまちまち(特に皮膚科での処方は高い傾向にある一方で、AGAに特化したクリニックは安い傾向にあります)。どういうことでしょうか。
ジェネリックとブランド薬の違いとは? 効果や安全性に差はあるの。
特許という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ある発明品を作った人が「これは自分のだから自分しか使えないよ」としたものが特許と言います。
逆に、「いいものだからみんな使って!」という場合はあえて特許を申請しないことも(曲がるストローとか)。
薬の場合はだいたい特許がありますね。そうでないとせっかくお金をかけて開発した薬の元がとれませんから…
しかし特許には期限があり、期限が切れた発明品は、みんながマネして使うことができます。薬の場合、それがジェネリック薬品です。
ここでポイントなのが、「あくまで発明品は主成分(この物質のおかげで効く)」に限った話であることが多いのです。同じ薬でも一緒に入っている成分が違うので、値段や効果、副作用が違うことがあります。
ジェネリック医薬品の品質に問題がある?知っておくべきこと。
採算が合わない
小林化工という製薬会社が製造した水虫の飲み薬「イトラコナゾール」に睡眠薬「リルマザホン」が混じっていたということは大きなニュースになりましたね。
その後日医工という大手ジェネリックの製薬会社などにも問題が起こって業務停止になった結果、日本中の薬が足りなくなってしまいました。
ジェネリックの問題点の一つは、薬の値段が安すぎること。薬に安かろう悪かろうがあるのは良くないですが、安すぎて採算が合わず火の車なジェネリック製薬会社が多いのも事実です。
品質が安定していない
もう一つの問題点は、品質が安定しないことです。飲み薬の場合は本来主成分とコーティング剤(形作りの成分)くらいなのですが、それでも味やアレルギーの起こりやすさなどのばらつきはあります。
ましてや塗り薬となると、主成分と同じくらい基材(薬を混ぜる先のクリームや軟膏など)も大事です。周知の事実として効き目や混ざり方、臭いが違うことを考慮して処方を選んでいる皮膚科医も多数あります。
当院もさまざまなジェネリックを試して一番適切な会社を選んでおり、先発品とは別物として扱っているので、あえて薬局でほかの先発品に変えると効き目や塗り心地が変わってしまうことも。
AGAも他人事ではない
AGAの薬も他人事ではありません。フィンペシアという世界的に有名なプロペシア(フィナステリド)のジェネリック薬があります。日本では発売されていないため、個人輸入でしか手に入りません。
そんなフィンペシアですが、「キノリンイエロー」という添加物が入っていました。これが発がん性物質であったことが問題となったのは、フィンペシアが販売されてから10年後の話。
実際に癌になった人がどれくらいいるかはわかりませんが、それからフィンペシアを飲む人は減りました。
ここ数年でキノリンイエローが入っていないフィンペシアが発売されましたが、申し上げたように安い薬というのは品質の問題が付いてきます。
国によっては検査もろくにされないまま販売されるジェネリック薬もあるため(安く売る代わりに採算を取るためですね)国が認可していないような個人輸入の薬は危ないものがあります。
個人輸入代行店もいろいろな薬を扱っていますが、フィンペシアのように身体に害のある成分が混じっている可能性も日本より高いです(だからこそ日本の混入問題がかなりのニュースになりました)。
ほかにもエフペシアやフィナロイドなど海外ではいろいろな名前でフィナステリドが処方されていますが、日本が認可していない薬は品質面で危険があることをご承知ください。
デュタステリドは2種類ある
デュタステリドには別の複雑な問題があります。同じ会社でも、安いデュタステリドと高いデュタステリドがあるのです。どういうことでしょうか?
こちらの記事(https://oki.or.jp/finasteride-dutasteride/)で書かれているように、デュタステリドはもともと前立腺肥大症の薬として開発されました。
そのため、「アボルブ」という名前で今でも前立腺肥大症の治療薬として使われています。どちらも特許が切れているためジェネリックが存在するのですが、どちらも有効成分は「デュタステリド」。
日本ではジェネリックは本来の有効成分名で売るようにとされているため、どちらも「デュタステリド」という名前で売られています。
紛らわしいのですが「デュタステリドAV(アボルブ)」と「デュタステリドZA(ザガーロ)」として区別されています。
成分は同じですが国が決めた適応症が異なり、アボルブの方は前立腺肥大症に対しザガーロはAGAです。
適応症に載っていない薬を使う(適応外使用)と、万が一問題が起こったときに国からの補償が受けられないため、堅実なクリニックは高くても「デュタステリドZA」を出すことが多いです。
ジェネリック薬品の価格比較!市場で最もコスパの良い選択肢は?
実際のところ、値段はいくら違うのでしょうか。ある卸会社での卸値が先発品(プロペシア、ザガーロ)に比べてどれくらいの割合かを記載します。
なお、実際には処方代や診察代、管理料も含まれるため、土台に何円かあった上で薬の値段が上乗せされると考えてください(単純にトータルの金額も何パーセント、とはいきません)。
フィナステリド 28日分
- プロペシア(オルガノン) 100%
- クラシエ 54%
- 日医工(武田)42%
- あすか 58%
- ヴィアトリス 66%
- 沢井 40%
ヴィアトリスが強気ですね。ヴィアトリスはファイザー社が開発した薬を販売している会社です(ちなみにファイザーはミノキシジルを開発した会社)。
ジェネリック専門ではなく大本は正規の薬を扱っていて、それなりの品質保証がされているので高めです。
一方沢井はずいぶん安いですね。沢井は国内のジェネリック会社としての流通量が多い(それだけ信頼されている)ので安めです。
デュタステリドZA 30日分
- ザガーロ(グラクソスミスクライン) 100%
- マイラン 47%
- 沢井 43%
- 富士 27%
- 日新 38%
- Meiji 28%
- アルフレッサ 41%
今度はマイランが強気です。マイランはメルク社が開発した薬を販売している会社(メルク社はプロペシアを開発した会社)。
こちらもジェネリック専門会社よりは品質が保証されているため高めの設定となります。
今度はフィナステリドでは登場しなかったずいぶん安い製薬会社が出てきました。現在はデュタステリドの方が主流なので、開発と価格競争が活発なのでしょう。
AGAに認可外の薬剤を使うリスク 注意点を抑えよう
その薬、どこで作られましたか?
さて、諸般の事情から「先発品に対して何割」という表記をさせていただきましたが、これは卸問屋が販売する、一般的に流通している薬の話です。
なので、保険診療をしているようなクリニックではこれらの薬が出されることがほとんど(どの会社を選ぶかはクリニック次第)で、会社名も明記されています。
一方AGA専門クリニックはどうでしょうか。大体の場合、会社名が書かれていないことが多いです。つまり、上記の製薬会社でない認可を受けていない薬の可能性が。
会社一覧はあくまである卸業者が提示したものなので、抜けている会社もあると思います。しかしそれでも会社名は提示されるはず。それがないということは、厚労省の認可を受けていない薬の可能性があります。
海外の製薬会社の薬を輸入している
最初にお話ししたように日本に比べて安く薬を製造している国はたくさんありますが、その代わり日本で行われている品質保証がされていないことに。
もちろん、その国の品質管理がどうかというのは別の問題です。日本並みか、厳しいか、緩いかはわかりません。
自分で調合している
主成分「フィナステリド」「デュタステリド」を仕入れて、自分のクリニックで調合しているケースも。
麻薬などど違って持ったり使ったりということは違法ではないので、厚労省の認可を受けていないということ以外は法的に問題ありません。
オリジナル化粧品を調合して美容皮膚科で販売するのと同じことが、AGAの薬でもできるということ。オリジナル治療薬ということです。
主成分は同じなので、量さえ同じなら製薬会社が作ったもののようにAGAへの効果はあると思われます。ただこれはあくまで理論的な話。実際にはクリニックが行わない限り誰も成分や効果を調べていないのです。
主成分の品質が安定しているか、量は適切か、一緒に混ぜている成分は問題がないか、体内でちゃんと薬として機能するか…調べない限り誰もわかりません。
厚労省が認可しているようなお墨付きの薬と比べると、効き目や副作用が異なる可能性があります。
AGA治療で重視すべきポイントとは?自分に合ったAGAクリニックの選び方
さて、実際にAGA治療を実践するのにはどこがいいのでしょうか。
AGA治療で一番大切なことは、ずっとフィナステリドやデュタステリドによる治療を続けること。やめてしまうと、脱毛がまた進行してしまいます。そのためには、十分な量の薬を毎日飲み続けることが肝心です。
そのために必要な条件は
- 品質が安定している薬を使うこと
- 払い続けられる値段であること
- 通院を続けやすい環境であること
となります。
品質が安定しているか
品質に関しては「どこの製薬会社ですか?」と聞いて、しっかり答えてくれるところが安心です。
お話ししたように先発品であるプロペシアやザガーロ、ジェネリックならヴィアトリスやマイランだととても堅実ですが、高いです。
それでも当院は皮膚科としてあえて先発品とマイランを使っています。
フィナステリドは流通量から沢井とヴィアトリスは同等と考えておりますが、当院の方針ではデュタステリドが主流なのでやはり高いマイランです。
よくわからない国の薬だったら安心ではないかもしれませんが、その辺はお国の雰囲気に任せざるを得ません。
払い続けられる値段か
当たり前ですが、高すぎるとお財布が枯渇してしまうので続けることが難しいです。先発品(プロペシアとザガーロ)ですと、相当な値段になってしまいます。
ブランドを求めるよりも、続けられることの方が大切。
そういう面では、ヴィアトリスやマイランを扱うような堅実すぎるクリニックは(誠実ではありますが)お財布にかなりのダメージがきてしまいますね。すみません、当院のことです。
通院を続けられる環境か
かつては不便なところでしかAGAの治療薬は手に入らなかったかもしれません。しかし現在は駅前だったり、オンラインで診療したりというクリニックが増えてきました。
特にオンラインの場合は待ち時間がなく、電波がある限りどこでも診療を受けられるので非常に通院しやすいと思います。
当院は駅前ではありますが、相模大野駅を使う人以外は通うのは大変ですし、働く皆さんが来られる時間には閉まっていることが多いです(申し訳ございません)。
具体的にはどこがいいか
ご察しの通り、オンライン診療推しの流れになってまいりました。私が知る限り一番これらを満たしているのは大手AGAのオンラインクリニックである、AGAスマクリが該当します。
肝であるデュタステリドは安心の国内生産品。フィナステリドも安心できる国からの配給です。
企業秘密かもしれないのでどちらの製薬会社かはここでは書きませんが、受診したときに聞けば教えてくれます。誠実ですね。
実店舗だとイースト駅前クリニックでしょうか。こちらも国内の正規品を扱っており、医者と対面して診察ができるクリニックが存在するため、オンラインに抵抗がある方にはおすすめです。
名前の通り駅前にありますし、オンライン診療もしているので通院しやすいと思います。ただ、実際の建物がある分コストがかかってしまい、オンライン専門クリニックよりは割高になってしまうのは否めません。
まとめ
- ジェネリックもいろいろ。値段の差には理由がある。
- 問題ないジェネリックならむしろ通いやすくなる値段ということに。
- オリジナル薬は要注意。
- 大切なことは飲み続けられること。